「ジャパンにいたお前なら知ってるはずだ、ヘイ・ディンゴ!
あの背番号2の凄いキャッチャーは何ていうんだい?」
「ヤツの名はフミ。向こうでは
“ワールド・フミヒロ”
と呼ばれている、中日ドラゴンズの控えキャッチャーさ」
「何だって!?あのキャッチャーが控え捕手だってのかい?
おいおい、冗談は日本での打撃成績だけにしてくれよ、ディンゴ。
あのリードに打撃に冴え渡るスーパーキャッチャーが控え捕手だって!?
ソー・クレイジー!一体どうなってるのか、頭がスパゲッティだぜ!」
「ジャパンをナメるな。
何しろこのオレでさえポジションを獲れなかったところだぜ。
それどころかあの国には、
“ナカムラサン”というもっとグレートなキャッチャーだっているんだ」
「ブルブルッ!おそろしい国だな、ジャパンって国は!」
☆ ☆ ☆ ☆
1回裏、3番DHのディンゴの第1打席をいきなり三振に切ったことで
フミvsディンゴの宿命の対決は完全決着。
男の意地と意地のぶつかり合いに、勝利したのはフミヒロの方だった。(*1)
(*1)…第2打席に3ラン、第4打席に2ベースを打たれてしまっているものの、
フミに取ってはこのあとディンゴと一緒にメシを食いにいく際、
「何か話題作っとかないとな」といういわば「話題作り」、
ディンゴにとっては日本で学んだ(山崎直伝の)ダメ弾のお披露目みたいなものであり、
真剣勝負の決着は第1打席についていたのだ。
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☆ ☆ ☆ ☆
そして1−3とリードされた5回、反撃の口火を切ったのはやはり「世界のフミヒロ」だった。
先頭打者として鮮やかなライト前ヒットで塁に出たフミは、
次打者・滝原のときにすかさず二盗を決め
世界の俊足
を全世界に発信、さらに、滝原の高く上がった微妙な飛球に1/4ウェイでタッチアップの準備、
打球がライトの頭を抜けるを見るや、稲妻のように三塁を蹴り、疾風のようにホームベースを駆け抜けたのだった。
世界中の目がフミヒロの足に釘付けになる。オーストラリア側スタンドは一瞬静寂に包まれ、
ため息とともに誰かが呟いた。
「オー、…ジャパニーズ・忍者!」
ニン!ニン!
☆ ☆ ☆ ☆
その後田口のタイムリーで同点とし3−3で迎えた6回、
1死一三塁の一打勝ち越しの場面で打席に立ったのは、
もはや世界中でその名は知らない者はいない。そう。
「恐怖の9番」
鈴木フミヒロ。
前日のオランダ戦でも同点の場面から決勝タイムリーを放ったフミだけに、
会場のボルテージは最高潮に高まる。
チラリと三塁ベンチを見やるフミ。
「よし、重盗のサインは出ていない!」
カッキーーーーン!!!
快音をあげた打球は日本のファンを夢を乗せレフト前へ。オランダ戦に続き、
2試合連続の勝利打点
となる勝ち越しタイムリーを決め、いまやフミは「日本の主軸」、いや「世界の主軸」
として、またもやその名を世界中に轟かせたのだった。
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「ジャパンにいたお前なら知ってるはずだ、ヘイ・ディンゴ!
あの背番号2の凄いキャッチャーは何ていうんだい?」
「ヤツの名はフミ。向こうでは
“ワールド・フミヒロ”と呼ばれている、中日ドラゴンズの控えキャッチャーさ」
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