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ああ、ああ、私のドラゴンズ

聖地巡礼(6)

98.8.4〜8.6
シャオ会ナゴヤ遠征リポート


1.秘境カレー

 ナゴヤの朝は名古屋コーチンの鳴き声で始まる。聖地巡礼2日目の朝。
 昨夜途中から抜け出し、 夜のネオンに消えていったBULLYさん(*1) と合流し、中日ビルに「秘境カレー」 を食いに行く。

 ここは昨日、昼メシ屋を探索しているときに発見した怪店で、 Naoさんと
 「秘境カレー…?気になりますな」
 「なにやら神秘的な匂いが。もはや食って確かめるしかっ!」
 「いざ、秘境!!」
 と入ろうとしたところ他のメンバー全員に冷たく却下され、 涙ながらに通りすぎてしまったところだ。
 ああ、まる一日越しの思い。
 カレーよ、お前は俺たちに一体どんなめくるめく秘境を見せてくれるのか。


めくるめく秘境


 「俺、ビール!」
 店(秘境)に入って2秒で元気よくビールを注文したのはやはりBULLYさんだ。 人間の体の80%は水分だというが、BULLYさんの体の80%はビールだ。
 つられて、次々にビールが注文される。 朝っぱらからカレー屋に入ってビールを注文する集団、 燃える漢(おとこ)の生き様はいつだって小原庄助さん(*2)だ。

 そして、カレーが来ると飢えた餓鬼畜生のように貪(むさぼ)るメンバー。 誰もなにひとつ口を聞かず、ただただカレーを食いまくる。 おそらく、みんなの気持ちは同じだ。

 「今イチっすね、ここのカレー」

 言えやしない、言えやしない。期待が大きかっただけに言えやしない。
 一同は無言で店をあとにし、ホテルへ戻った。


2.通じない言葉

 その後は出発時間の14時30分まで休憩という事で、 私は単独でらうま&名古屋麦酒探しの旅 に出た。
 ホテルから気が遠くなるほど歩いてやっと見つけた酒屋で、 ビールを頼む。
 「地方発送なんですけど、いいですか?」
 「あー、はい?」
 「地方発送、やってますか?」
 「何ですか?」
 「えーと…ビールを送りたいんですけど」
 「あー、いいですよ」

 …どうも昨日から薄々感じていた事なのだが、このナゴヤの地では、 一部の日本語が通じてない ような気がする。 そう言えば昨日、味噌カツ屋に行ったときも、
 「中ナマ下さい」
 「あー、はい?」
 「えーと、中ナマ」
 「何ですか?」
 「えーと…生ビールの中ジョッキ」
 「あー、中ジョッキね、はい」

 といった会話が展開されていた。
 何かがおかしい。私のつたないナゴヤに対する知識では、 ナゴヤ人はみなニコちゃん大王 のような言葉で話すはずなのだが、実際にはニコちゃん大王はおろか、 アミリャート持って歩いているおばさん すら見かけない。
 平静を装う街。通じない言葉。 この地こそが秘境。
 私は酒屋の怪しい店主と何とか意思の疎通を成功させ、「名古屋麦酒」を1ケース注文、 「でらうま」を1缶購入してホテルに戻った。

 ホテルに戻ると時間は14時20分。戦士たちは目を爛々と輝かせ、出発の刻を待っていた。
 「では、行きますか」
 「応!」


3.裏切りのシャトルバス

 「それにしても、大曽根駅から遠いですな、ナゴヤドームは」
 「いやいや、全く」
 「今日はシャトルバスで行きますか」

 誰が言い出したのか知らないが(*3)、 今日は気分をかえてナゴヤドーム直行のシャトルバスを利用することに決定。 一行は、バス停のある千種へ向かった。
 このときの時間、15時ちょっと過ぎ。 ナゴヤドームの開門は16時20分だ。

 「むう、完璧な時間配分ですな」
 「ほぼ開場の1時間前に到着といったところですか」
 「まさに、世界は俺たちのために」
 「ワッハッハッハ」
 「おや、どうしたんですか。そんなに慌てふためいて?」
 「バスの始発、15時50分って書いてあるんですけど」
 「………………」
 「……50分待ちですか…」
 「……電車で行こっか」

 このまま地下鉄に戻るのも何だかシャクなので、いかにも 乗り換えのためにここで降りたような顔 をしてJRで大曽根駅に。 駅から気がふれるほど歩いてようやくナゴヤドームに到着した。

 ナゴヤドームのライト側は今日も まとめて北朝鮮にでも連れて行きたい 元気なお子さん達が破裂したカマキリの卵のように群生していた。 ここで 大阪ドームから直で来たという 山王丸さんと合流。 山王丸さんは、 朝ラジオ体操の現場から直で来たようなガキよりさらに前のポジションを陣取っていた。 泊りがけで来たくせに朝からビール飲んで 球場に来る途中もコンビニでビール買って飲んでた連中 に見習わせたい気合いの入り方だ。

 ドーム内に入ると、 BULLYさんとelfさんが今日も応援団のおばちゃんから声をかけられた。
 「あ!昨日のお兄ちゃん!座るとこなかったらこっち来な!」
 でも今日は山王丸さんのおかげでナイスポジションをばっちりキープ出来ている。
 「ええい!誰がお前たち悪名高き応援団の世話になどなるものか! 座れなくて困っているファンの事を考えたときがあるのか!」
 なんて事は昨日すっかりお世話になってしまった応援団の皆さんに言えるはずもなく、
 「あー、すいませんね。またの機会に」
 とさわやかな笑顔で答えるのだった。

 この日から二人は、ナゴヤドームの おばちゃんキラー と呼ばれるようになる。



(*1)夜のネオンに消えていったBULLYさん…ご本人は「し、知り合いの家に行ったんだよ。ホ、ホントだってば」 と言い張ってました。
(*2)小原庄助さん…朝寝朝酒で身代をつぶした男の中の男。
(*3)誰が言い出したのか知らないが…私です。

>>> TO BE CONTINUED!!


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