圧巻は8回裏アメリカの攻撃、
2死一塁からフミヒロの強肩を知らない命知らずの一塁ランナーがニ盗を敢行、
そこでフミヒロは矢のような送球を
センターに
返し、自慢の鉄砲肩を世界にアピールした。
送球が外野を転々と転がる間にランナーは三塁へ。迎えるバッターは前の打席でスリーベースを打っているコットン。
中村さんならまず敬遠の場面だが、フミ&松坂の強気で鳴らすワールドコンビに“逃げ”の2文字はない。
力と力の勝負に行ったバッテリーは、
コットンをライトフライに抑え、見事にこのピンチを切り抜けたのだった。いいぞ!フミ!強気のリード!
松坂がフミのサインに首を振っていた
のはナイショだ。
☆ ☆ ☆ ☆
そして2−1と1点ビハインドで迎えた9回表、
日本はショボい内野安打と相手のエラ―などで2−2の同点に土壇場で追いつく。
さらに2死一三塁、一打勝ち越しの場面で“世界のフミ”に打順が回って来たのだ!
「お前のバットで決めてやれ!」
会場のボルテージが最高潮に高まる。
ナゴヤの、日本の、全世界の注目がフミのバットに集まる。(今日は誰のバットを使ってるんだろう)
だがしかし。ああ、だがしかし。
ベンチで両足を揃えて膝に手を置くおばあちゃん座りの大田垣監督は、
バッターボックスのフミを信用せず一塁・三塁両ランナーに何と重盗を指示。
そんな日本でも阪神くらいしか引っかからないトリックプレー
に本場・アメリカの選手が引っかかるはずもなく、重盗は気持ちよく失敗、
チャンスをペシャンコと潰してしまったのだった。
「普段は10回に1回くらいしか打たないが、ここぞという場面では5回に1回くらい打つ」
フミの部分的に勝負強いバッティングを知らなかった、大田垣監督のミスチョイスと言えよう。
☆ ☆ ☆ ☆
そして回は進み延長13回裏。ピッチャーは既に2番手・杉内に代わり無死ランナー一塁。
この場面で3番・ニールのファウルチップの打球がフミの右手親指を直撃!
フミはその場にうずくまり
「世界のファウルチップ」
を体験したのだった。
苦しみをこらえ起き上がるフミに日本・アメリカ両スタンドからは満場の拍手。
はからずも
「世界の拍手」
まで体験してしまったフミだったが、
「もうフミヒロさんしか見えない!」杉内は激しく動揺、
ワンバウンドの投球をディレードスチールでランナーを二塁に進めてしまうと、
フミの構える外角低めの要求に、真中高めへ渾身の棒球を放ってしまい、
ニールに軽々とライトスタンドへ運ばれてしまったのだった。
泣くな杉内、泣くなフミ。君たちのせいじゃない。
大田垣はちょっと反省しとけ。
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