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強の白熱した争いは、 シーズン中に投手陣を酷使しすぎた阪神がまずギブ・アップ、 ペナントは中日と読売の二チームに絞られた。 終盤、明日などないかのようなスクランブル態勢で連日投手を酷使する読売。 しかし、落合監督は決して川上や岩瀬に無理をさせなかった。 なぜならこの年からルールが変わり、 日本シリーズに出るためにはリーグ優勝するだけではダメで、 「クライマックス・シリーズ」なる 敗者復活戦 を勝ち抜かなければいけなくなったからだ。 この三年で二度のリーグ優勝を果たしている落合ドラゴンズの目標は、もちろん日本一。 リーグ優勝なんかもうやり飽きた。 目標と呼ぶには中日にとっては志が低すぎるリーグ優勝なんかのために、 川上や岩瀬を潰すわけにはいかない。 クライマックスシリーズや日本シリーズだってあるんだ。 競馬でいえばまだ向こう正面出口、こんなところでムチを入れるジョッキーなんて田中勝春くらいだ。
選手の選手生命を終わらせない形で、来年以降も見据えた上で、 いかに日本シリーズに出場するか。 こうして、ドラゴンズはこの年のレギュラーシーズンを二位で終了した。 仮の優勝フラッグ を手にした読売は、自分の体がボロボロなのにも気付かず、 のん気に「奪還」とかいう寒いフレーズを流行語大賞にノミネートさせようと 系列新聞や系列テレビを使って必死の宣伝をしていたんだ。 これから、最終コーナーと最後の直線が待っているというのに。
一方、日本シリーズ制覇のためにペナントを読売に譲った落合監督は、 頭を丸め、気合を入れ直していた。 「ほんとの戦いは、こっからだべ」 |
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