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タゴタの中、ストライキで中止になった二試合以外は順調にペナントは進み、 気がつけば中日は首位に立っていた。 そして、今も伝説として語り継がれるあの 「九・三〇神宮」。 マジック「1」で迎えた神宮球場の対ヤクルト戦。 思えば、前回の優勝、一九九九年のリーグ制覇もこの日・この場所だった。 あれから五年。同じ日、同じ球場で胴上げが見れようとは、きっと何かの縁なのだろう。 以後九月三十日は 「ドラゴンズ記念日」 として国民の祝日にしてもいいくだらいだ。 スポーツ新聞の予想によれば、今日の先発は二点台の防御率でタイトルを争う安定感バツグンの山本昌。 苦しいとき、辛いとき、ファンに元気を与えてくれた大ベテランだ。 今日は五年分の歓喜を我々に与えてくれるだろう。 天気は快晴。胴上げ日和。神宮球場入口には長蛇の列が並び、開門時間が二十分早まった。 関東周辺だけでなくナゴヤからも大勢のファンがはるばる神宮まで駆けつけていた。 スタンドのあちこちから名古屋弁が聞こえた。 「今日は昌だがや!」 「もらったがや!」 そして、息を呑む先発発表の瞬間。 水を打ったように静まりかえるスタンド。盛り上がりの準備は出来ている。 ウグイス嬢のアナウンスが、夕暮れの空に響き渡った。 「中日ドラゴンズ、先発ピッチャー・小笠原」 ざわ… ざわ…
そして仕切りなおしとなった十月一日(←九月三十日の小笠原の結果については書かない)、 対広島戦ナゴヤドーム。 同時進行の二位ヤクルトが先に敗れため試合中に中日の優勝が決まり、 勝って胴上げしようと粘りに粘って執念の延長十二回、 久本が広島・緒方に満塁マケコシ弾を浴びるという、何とも しょっぱいフィナーレ になった。 久本はこの一打がトラウマになり翌年以降スランプに悩まされるんだけど、 中日ファンは「九・三〇」がトラウマになり、 神宮で小笠原の名前がコールされると何ともせつない気持ちになるんだ。 |
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