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野ドラゴンズは就任一年目のシーズンをリーグ二位という上々の結果を出すんだけど、
星野監督は飽くなき補強に動く。
前年の谷沢戦力外に続き、
今度はレギュラーセンターで核弾頭の平野謙をトレードで放出し、
再び中日ファンの度肝を抜くんだ。
しかも交換要員は西武でこの年四勝の小野和幸投手で、
どうにも釣り合わない「大損トレードじゃないか」
とファンの間では言われた。
だけどこのトレードには、
戦力補強とは別の意図
があったんだ。
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星野仙一 『ハードプレイハード 勝利への道』 p.20より
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単純なミス、ボーンヘッドについては怒鳴るだけでいい。
しかし、チームメイトの士気を落とすような、
闘志や気力に欠けたプレイをする選手は許さない。
数年前、選手会長まで務めた外野手がいた。
スイッチヒッターだが、左バッターボックスに入ると、
三球三振をしても平気な顔で帰ってくる。
コーチが叱るのだが、本人は、
「ぼくの左打ちは後天的に作ったものだから、
そんなに粘れないんですよ」と平然たるものだ。
ある試合で、その選手がランナーで出ているときに、
タイムリーヒットが出た。
全力で走っていればホームに還れるタイミングだった。
ところが、彼は後ろを振り返りながら走ってタッチアウトになった。
選手会長という、選手の手本となるべき立場の中心選手にもかかわらずである。
私は、シーズン終了後に、その選手をチームから出した。
「ハード・プレイ・ハード」の精神こそが、劣勢をも互角に引き戻し、さらにチャンスを広げる。
この基本精神がチームの目標であり、私の不変の目標なのである。
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要するに、
星野監督のお気に召さなかったから
出されたんだ。
星野監督は、自分のキャラクターがそうであるように、
闘志を前面に出す選手が好きだからね。
だから、(本当に手を抜いてるかどうかは別にしても)
見た目に手抜きプレーに見える平野みたいな選手は
「イケイケの星野野球」
に合わなかったんだね。
若い彦野の台頭があったとはいえ、
賛否両論のトレードだ。
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しかし、このトレードは「星野監督の方針」を徹底させるって意味で、
効果的だった。
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チーム方針に沿わない選手は、
選手会長だろうと容赦なく放逐するぞと。
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「お前らも言うこと聞かないと、レギュラーだろうが関係なく出すからな」と。
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ちなみに平野はこの後、
移籍先の西武で六年連続のゴールデングラブ賞に輝く。
犠打数は“世界の川相昌弘”に抜かれるまでプロ野球歴代一位で、
黄金時代の西武の中心選手として活躍した。
しかし、だからといってこのトレードが大失敗だったかというと、
そうとも言えないんだ。
何しろ、代わりに来た小野和幸投手が翌年大活躍、
ドラゴンズのリーグ優勝に大きく貢献するんだから。
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CBCの解説で落合采配にイチャモンばかりつけるアンチ落合の代表格。
関東ローカルでTBSの解説をやるときは、
快舌読売ファンに変貌する。
十一歳のときにご両親を亡くし、
お姉さんの内藤洋子さん(エッセイスト)と共に
平野金物店を経営しながらプロ野球選手になったとても立派な人。
豊田誠佑
(とよだ・せいすけ、1979-1988)
練馬区平和台にある中華料理『来来軒』は豊田の実家。
「ドラゴンズそば」は最高に美味しいとの評判だ。
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