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七月二十日(月)○中日―●広島 しく試合終盤に広島が勝ち越し、広島一点リードで迎えた八回裏、 マウンドはこの回からセットアッパーのシュルツが上がり、 キャッチャーは三年目の若い會澤に代わっていた。 會澤翼(あいざわ・つばさ)が一軍に上がったのは今シーズンが初めて。 先日の横浜戦では 佐伯にホームスチールを決められた ことで一躍全国区になった売り出し中の若手である。 ドラフト指名の記者会見に 短ランとボンタンで現れたり (水戸短大附属のヤンキーで、春田剛の一年後輩にあたる)、 ウエスタンのデビュー戦では プロ初打席・初死球・初救急車で初病院送り というハードボイルドなエピソード満載の楽しい選手だ。 (この試合でサーパス近藤は打者二十六人目まで完全試合だったが、 二十七人目の會澤への頭部死球で危険球退場) 捕球してから二塁送球までのタイムは一・八秒台と、プロの一線級捕手と比較して遜色ない。 ヤンキー出身らしく礼儀正しく、それでいて先輩にも言うべきことはきっちり言う。 ベンチにはベテラン捕手の倉が残っていたが、 ブラウンが大事な場面でこの若い捕手を起用したのは、 その“送球の速さ”と“物怖じしないクソ度胸” からなのだろう。 ☆ ☆ ☆ ☆
しかし、この日はシュルツが大乱調。 井端にヒット、森野に四球を与え二死一三塁とすると、和田に同点タイムリーを浴び、 さらに代打立浪に四球を与え、二死満塁の大ピンチを迎えた。 バッターは小池。 ここでシュルツは 會澤のサインに七回首を振り、 八回目にうなづいて投げた小池への初球が大暴投! 中日に痛恨の決勝点を許してしまったのだ!
最終的なサインが會澤とシュルツのどちらの主張が通ったのかは分からないが、 いずれにしても これだけ時間をかけて決めたボールを、 ワンバウンドとはいえ 堂々と後ろに逸らす會澤 には、何か親しみというか、愛情を感じてしまう。 この 「肩も強くて度胸もいいが、技術がない」 という若さあふれるキャッチャーの登場に、心ときめかずにはいられない。 この感覚、ああ、そうだ、 ヤクルトの米野に出会ったときと似た感じ だ。 ☆ ☆ ☆ ☆
これで広島カープは対中日戦九連敗を喫したが、収穫が何もなかったわけではない。 この試合は、 「會澤という面白キャッチャーを全国の中日ファンにお披露目した」 という、歴史の一ページとなったのだ。
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中田賢一 (なかた・けんいち 森野将彦 (もりの・まさひこ 和田一浩 (わだ・かずひろ) |