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四月三日(金)○中日―横浜● たに三年契約を結んだ落合監督の一年目(通算六年目)のシーズン、 課せられた課題は 「三年かけて最強チームを作る」。 だが、落合監督には一年目・二年目を捨てシーズンにするつもりは毛頭ない。 和田には頭の毛がない。 開幕スタメンが発表された瞬間、 ナゴヤドームは大歓声(と悲鳴)に包まれた。 オープン戦でも守備についたことがほとんど無く 今年は代打専門かと思われていた 真の主砲・井上一樹が「六番・ライト」 に名を連ねていたんだ。 この年の正月、一月二日には落合監督から井上の自宅に電話があり、 「開幕スタメンライトはお前だ。そのつもりで調整しておけ」 と伝えられた。多分。 本来なら開幕ライトをつとめるはずのレギュラー李炳圭は、 「予備軍で調整して出てくると妙に打ち出す」 というジンクスがあるためファームで温存、 ルーキーの野本には「まずは井上のプレーを見てプロの精神を学べ」 という意味で控えスタートにすることを、正月の時点で決めていたんだ。多分。 「なるほど…。ボールはよく見ろ、と…!」
四月三日、開幕のフィールドに立っていたのは井上一樹。 しかしこのゲームは、 井上が五回持たずにルーキー野本に交代。 それでもチーム一丸となってドラゴンズは開幕戦を勝利、 新生・落合ドラゴンズの第一歩が踏み出された。
落合監督は井上起用について、こう考えていた。多分。 「このチームを変えるには井上が必要だった。 三年間開幕スタメンを外れて苦しんできた男の背中を、 チームのみんなで押すということがな」 プロ野球選手にとって大事なのは、 チームのため、ファンのためなんてきれいごとじゃなく、 「今日はお立ち台に立って俺の面白いトークでみんなを盛り上げたい」、 それを達成するために悔いの残らないように全力を尽くすこと。 それでスベッたらしょうがないじゃないか。 そんな「井上の背中」を見せることで、 自分はどうあるべきか、 何をすべきかを、落合監督は選手に感じて欲しかったんじゃないかなあ。多分。
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浅尾拓也 (あさお・たくや) 森野将彦 (もりの・まさひこ) ブランコ 和田一浩 (わだ・かずひろ) 井上一樹 (いのうえ・かずき) |