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[名前]前田章宏
[出身]愛知県名古屋市
[誕生日]1983年6月19日
[ニックネーム]アキヒロ
[好きな食べ物]牛乳
[尊敬する人]両親
[好きなプロ野球選手]中村武志
城島に匹敵する素材
まだ見ぬ“世界のイチロー”を、師と仰ぐ。二十一世紀初のドラフト一巡目は、前田章だ。
「プロでやっていくためには、しっかりした体をつくっていかないと。そのために、鳥取に通っています。
そこで見せてもらったのが、イチローさんのビデオでした」
知る人ぞ知る、鳥取市にあるスポーツ施設「ワールドウイング」が、前田章の肉体改造道場だ。
中日でも山本昌、岩瀬らが門下生。イチローも心酔している。各界のアスリートが集うこの施設に、前田章は夏以降から通い始め、
イチロー式トレーニングの虜となった。
「ティー打撃とトレーニングを映したビデオなんですが、イチローさんはバランスを考えながら打っているんです。
簡単そうに見えても、マネするのも難しい。それに、そこでトレーニングをすると、関節が柔らかくなるんです。
たった一回やっただけでも。
ボクは捕手ですから、股関節が硬いとよくないですからね」
強化しつつ、筋肉の質そのものも改良する。ここで入団前の土台を作ってしまおうという方針だ。
「地元だからというだけじゃありません。城島に匹敵する素材。
打撃は当時の城島の方が上ですが、肩の強さとフットワークは前田君の方が勝っています」
寺原を外した時点で、前田章を繰り上げることは、スカウトの一致した意見だった。
中田チーフスカウトの評価も「城島クラス」。
いや、捕手としてならそれ以上というほれ込みようだ。
「中里さんの球を受けてみたい」という前田章。“ポスト中村”が順調に育てば、
中里とのスーパーバッテリーが誕生するのも、そう遠い日のことではなさそうだ。
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[名前]久本祐一
[出身]大阪府大東市
[誕生日]1979年3月14日
[趣味]映画鑑賞。最近見た映画の中で良かったのは宮崎駿監督のアニメ「千と千尋の神隠し」
[好きなアーティスト]ミスターチルドレン
[好きな女性のタイプ]持田香織(「EveryittleThing」ボーカル)
[モットー]自信を持って自分らしく
「ポスト前田幸」の声
ドラフト会議前日の浜松市営球場。中日とヤマハ・河合楽器との交流試合で、中日・仁村徹ヘッドコーチをして、
「うち(中日)の岩瀬に雰囲気が似ている」と言わしめた左腕が現れた。
中日入りを熱望し、翌日のドラフトでその中日から四巡目(三番目)の指名を受けた久本だ。
打者二人だけだったが、秋季キャンプで成長著しかった森野を内角の速球で三ゴロ、
強打の藤井はスライダーで追い込み、最後は速球で三球三振に仕留めた。
指名直後は希望通り指名を受け、ホッとした表情を見せていた久本。だが、落ち着きを取り戻すと
「一軍入りは当たり前。先発でもリリーフでもどちらでもいく。毎日でも登板したい」
と自信あふれる言葉を吐いた。その言葉を裏付けるような場面が、十一月二十四日のまたしても浜松であった。
所属する河合の休部前の最後の試合となったヤマハ戦。マックス百四十一キロを計測した速球とチェンジアップ、
スライダーで先発し二イニングをパーフェクトに抑え込んだ。
亜大時代は目立った存在ではなかったが、今年社会人になって急成長した。夏の都市対抗でチームの全国制覇に貢献。
新人賞に当たる若獅子賞を受賞した。本来なら今年はドラフト指名の対象外だったが、
チームの休部による特例措置で指名が認められた。
先発も中継ぎも出来る貴重な左腕・前田幸がFAで読売へ移籍したが、その穴を埋める存在として期待がかかる。
「前田幸さんの後がま? 自分にとってはチャンスですよね。一年目からガンガンやりますよ」と久本。
オフ、そして今春キャンプを通じて実践で使うことを想定しカーブを新しくマスターするつもりだ。
来季の竜投のカギを握るのはこのルーキーかもしれない。
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[名前]山井大介
[出身]大阪府豊中市
[誕生日]1978年5月10日
[趣味]ドライブ「でも今はクルマは持っていません」
[好きな音楽]邦楽
[好きな女性のタイプ]内田恭子(フジテレビ・アナウンサー)「性格が良さそう。会えますかねえ」
[モットー]真っ向勝負
新人王もらいます
「目標は二ケタ勝利。もちろん新人王も頂きます」。
河合楽器の同僚・久本とともに熱望していた中日に六巡目(五番目)で指名を受けた山井が堂々と胸を張った。
来年のドラフトの自由枠候補と言われていた百四十八キロ右腕が、休部による特例措置で竜投に加わるのだ。
「先発ローテ入りを狙います。そしてどこまで飛ばされてもいいから、
読売のクリーンアップから三振を狙い、そして取りたいと思います」。
D党が泣いて喜ぶ言葉のオンパレードが続く。
奈良産大時代はシドニー五輪の日本代表にも選ばれた逸材。今年は春先に右肩痛に見舞われたが、
夏の都市対抗準決勝では先発し、強打の日産自動車を八回までわずか三安打、
無失点に封じるなどチームの日本一に貢献した。
ドラフト後の十一月二十四日に行われたヤマハとの休部前の最終試合では、
その速球派の片りんを見せつけた。約一ヶ月ぶりの実戦とあって、
指のかかりが今ひとつだったらしく一イニングで二安打を浴び一点を失ったが、
速球のマックスは百四十六キロを計測したのだ。
日本一から突然の休部へ。自らの進路も揺れ動く中、中日を事実上逆指名し、念願がかなった山井。
同じく中日入りする同僚の久本とともに、チームの他のメンバーの思いを携えプロ入りする。
ヤマハなど他の社会人チームに移籍するメンバーもいるが、
野球をあきらめそのまま会社に残るメンバーもいる。
「僕らが中日で活躍し、河合のチームメートに誇りにしてもらえるような選手になりたいんです」。
言葉に実感がこもった。
「目標とする投手はロッテの黒木さん。気合を前面に押し出し、打者を圧倒したい」。
ナゴヤドームで読売の松井、清原、高橋由から三振を奪い、ほえる山井の姿が目に浮かぶ。
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[名前]高橋聡文
[出身]福井県高浜町
[ニックネーム]アキフミ
[趣味]音楽鑑賞
[好きな食べ物]すし
[好きな言葉]真っ向勝負
[尊敬する人]両親
[好きなプロ野球選手]石井一(ヤクルト)
[好きなタレント]内山理名
潜在能力は近藤並み
今年のドラフトでは十二球団で八十七人(自由競争枠を含む)が指名された。
そのうち、七十五番目、中日では最下位の七人目に指名されたのが高橋だ。
しかし、それはプロに入ってからの“大きさ”を示すものではない。
「学校側には申し訳ないですが、甲子園に出てこなくて助かった。
出れば一つや二つは勝っていた。勝っていれば他球団のマークもきつくなる。
それだけのセンスの持ち主なんです」
担当の水谷スカウトが、胸をなでおろしていた。
二年のセンバツには他校の不祥事で繰上げ出場したが、
その時は外野手。
最後の夏は富山県大会の決勝で敗れた。
「ケガをしてしまったので…。プロに入ったら自己管理をしっかりしないと。
体も大きくしないと、通用しませんからね」
実は高橋は春先に打球を当てて、左足首を骨折。
ランニング、投球を開始したのは六月になってからだった。
逆にいえば万全にほど遠いコンディションで、決勝までチームを引っぱった。
中日スカウト陣がじっくり見たのもこの夏。
左腕には潜在能力がたっぷりありそうだ。
その予選、マウンド上の姿を見て、水谷スカウトは十五年前を思い出していた。
「ボクが担当した近藤と似ているなあと…。体は近藤より一回り小さいですが、
投げっぷりなんかソックリです」
甲子園で活躍した近藤真一(共栄高、現スカウト)はドラフト一位。
体格では近藤より劣るが、水谷スカウトは“二世”と命名。
それを八巡目で獲得できたのも、ひいては足首骨折のおかげかもしれない。
「真っすぐを早くして、それで勝負できる投手になりたいです」。
気の強そうな顔も、“元祖”そっくりだ。
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『月刊ドラゴンズ』(二〇〇二年一月号)より