第120話
よみがえる魔球オズマ
「ドラゴンズ史上、最強の助っ人外国人選手は?」
少し年季の入った中日ファンなら、10人が10人、こう答えるだろう。
「そりゃあもちろん、
オズマ
だよ。 あいつの“見えないスイング”は本当に見えなかった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アームストロング・オズマ
(カージナルス→中日→カージナルス)
…大リーグのセントルイス・カージナルスが15年がかりで育成した、 通称“野球ロボット”。 日米野球で大リーグボール1号を打った打力を星一徹に見出され、 一徹とともにドラゴンズに入団する。 そのスイング・スピードは“見えないスイング”と呼ばれ、 公式記録こそ残ってないが、年間打率.900以上、ホームランは100本くらい打っていると思われる。 中日での背番号は「13」。
「オレ、オズマ。」
オズマは性格もよく、身体能力・打撃においても素晴らしい選手だったが、
ちょっと頭が弱かった。
場面は、大リーグボール2号の攻略方法に頭を悩ます星一徹コーチに対し、 オズマが
「俺は大リーグボール2号の正体が分かったゼ!」
と言葉を弾ませ言ってきたシーンである。
「ヘイ、ボス!俺は大リーグボール2号の正体が分かったゼ!」
「なに、大リーグボール2号の正体が分かっただと? フム、言ってみろ!」
「大リーグボール2号の正体は、
ワンバウンド
だ!!」
「……」
「大リーグボール2号は、ホームベース手前でワンバウンドする落ちるボールだ。 そして、そのときに舞い上がった砂煙でボールが隠れる! そしてバッターにはボールが消えたように見えるのさ!」
「……!!」
ワシは、とんでもないバカチンを連れてきてしまったかも知れない…
一徹はもちろん、テレビの前の小学生全員が突っ込んだ。
「見逃せばボールじゃねえか!」
「ワンバウンドしたら跡が残るだろーが!」
オズマは、さすが“野球ロボット”と呼ばれているだけあり、 運動能力の部分においては完璧だったが、 今イチ野球のルールを把握してなかったり、 常識的な部分で欠けてるところがあった。
☆
☆
☆
しかし、このときオズマが論理立てた幻の大リーグボール2号・
“魔球オズマ”
が、 数十年の時を経てよみがえることになろうとは、 誰が予測しただろうか!?
ヤクルト vs 中日
10回戦
1
8
青木
2
3
リグス
3
5
岩村
4
7
ラミレス
5
4
ラロッカ
6
9
宮出
7
6
田中浩
8
2
米野
9
1
ゴンザレス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
R
中日
3
0
2
0
0
0
0
5
ヤクルト
0
2
0
0
1
0
3
1
4
荒木
2
6
井端
3
8
福留
4
3
ウッズ
5
5
森野
6
7
オチョ
7
9
井上
8
2
谷繁
9
1
マル
中日2点リードで迎えた7回裏ヤクルトの攻撃、 1死二塁でバッターは2番・リグスからクリンナップ。ここでマウンドを任されたのは、
大リーグボール2号(オズマ版)を継ぐ男・岡本
だった!!
三振バッターアウト!!
「な…なるほど!
たとえワンバウンドでも、振らなきゃボールでも…
振ればストライク…振ればストライクなのだ!!
数十年のときを経て、あのときオズマが言ってた
オズマ版・大リーグボール2号
が、今ここに完成したのだッ!!」
大リーグボール2号
“魔球オズマ”
を継ぐ者・岡本は、1死二塁からリグスをワンバウンドで三振 (1球ワイルドピッチ)、2死三塁から岩村をワンバウンドで空振り三振に取り、 ピンチを切り抜けたのだった!
1
2
3
4
5
6
7
8
9
R
中日
3
0
2
0
0
0
0
0
0
5
ヤクルト
0
2
0
0
1
0
0
0
1
4
×ヤ4−5中○