第76話

【特別編】 仙台笹カマ紀行



 今年のフルキャス宮城での対楽天戦は週末に行われるということで、 我々取材班(ヨウゾウ編集長、BULLY客員編集長、おーさわ名誉編集長)は清水の舞台から飛び降りた気で定期預金を解約、 一路仙台へと旅立ったのである!



第1章 戦士たちの朝は早い




 熱血取材班の朝は早い。
 朝 6:12東京発 の新幹線だが、誰ひとり「朝早すぎるよ!」「なんで各駅停車なんだ!」「パ・リーグの移動じゃないんだから」と文句を言う軟弱者はいなかった。
 何故なら、旅行会社のパックでこの便なら仙台までの往復交通費+ホテル代で12,900円だったからだ! (ちなみに通常料金なら新幹線往復21180円+ホテル代7,700円=28,800円になる)


  
  おばあちゃんが言っていた…。
文句を言うのは裕福な者だ。 貧者は、無いものに文句を言うのではなく、あるものに感謝する。
野球も旅行も同じことだ。
 
  
天道総司


 そして、仙台に着いた我々取材班3名は、 不思議な偶然で同じ新幹線になった関東の球場でよく見る中日ファン5名と一時の別れを告げ、 きびすを返し、名取市に向かった。
 なぜフルキャスではなく名取に!?

 それは、名取にはサッポロビール仙台工場があると聞いたからである!



第2章 戦士たち、朝から痛飲す!




サッポロビール仙台工場

↑サッポロビール仙台工場


 サッポロビール…。札幌といえば、日本ハムファイターズ!
 ここの工場を見学することは、必ずや今後の対日ハム戦の参考になるはずだッ!!!

 決して朝からビールをタダ飲みしたかったわけではない!
 交流戦対策のための偵察なのだ!!

 そして日ハム対策にいつか役立つサッポロビール工場見学を敢行、 見学後の試飲・生ビール20分飲み放題ですっかりいい気分になった我々は、 おーさわ名誉編集長が酔っ払って 中日ユニを着たままガイドのお姉さんに下ネタを連発 し苦笑いさせた以外は、 工場の人に中日ファンの好印象振りをアピールしつつ、フルキャス宮城に(千鳥足で)向かったのだった。

 ありがとう、そしてごめんなさい!工場の人!
 来年また来るときはおーさわ名誉編集長は連れて行きません!!


  
  おばあちゃんが言っていた…。
旅の恥はかき捨て。 対してロッテファンはゴミを捨てずに自宅に持って帰るそうだが、 重要なのは「捨てたか持って帰ったか」じゃない。「捨てどきと捨て場所」だ。
ゴミも、恥も。
 
  
天道総司



第3章 疑惑のドアラ



フルキャス宮城


 そして、フルキャス宮城に訪れた我々を待ち受けていたものは、おどろくべき光景だった!
 バックネット裏・正面入り口前のステージセットに、 信じられない2ショット を目撃したのである!!


クラッチ&ドアラ

クラッチに何か命令を受けてるドアラ↑


おいっ!そこのデカ耳!!
何そこで敵と親しげに話している!?

 まさかクラッチに 「朝倉が首を振ったら十中八九、フォークが来ますよ」 と内部情報でもリークしてるんじゃないだろうなッ!?


ショッカー&ドアラ

↑ショッカーにボコられるドアラ

 そこへショッカー軍団が乱入!
 ドアラはクラッチを助けようとして逆にボコボコにされる!
 クラッチはショッカーの仲間になり下がり、ドアラは逃げ出した。

     「まさか、ドアラ…」
 取材班の胸に 黒い疑惑 を残し、ドアラは消えた。


  
  おばあちゃんが言っていた…。
人を信じられなくなったら人間は終わりだ。 人は人であるために、人を信じるんだ。
だが、ドアラは人ではない。 だから、あまり信用しちゃダメだ。
 
  
天道総司



第4章 ドアラ、外野席に現る



 外野スタンドに入ると、今朝新幹線のホームで別れたはずの5人がいつの間にか9人に増殖し、 総勢12人になっていた。
 いつも神宮やハマスタで見る顔ぶれが、仙台みたいな田舎町で 偶然 出会う。
 人の出会いとは不思議なものだ。

 そしていよいよプレーボール!
 中日は6回までに5点を奪い、楽勝ムードだった。
 そんな場面、ふと我々は、中日の応援スタンドに奇妙な 耳のデカイ男 が座っているのに気づいたのである。

     「おい、見ろよあいつ。耳デカいな…」
     「本当だ、デカい!」
     「あんな耳のデカいやつは見たことがないぜ」
     「いや、俺は一度見たとことがあるぞ…」
     「本当かよ。いつの話だ?」
     「つい最近…たしか…ショッカーにやられていた…」

      「ド!!」

 後姿だけでは一見“ただの耳のデカい男”にしか見えないが、あれはきっとドアラだ!!


耳のデカい男

↑取材班は後姿だけで「ドアラだ!」と直感で感じ取った。



  
  おばあちゃんが言っていた…。
ドアラの耳をつけてる女の子を 「あ、あの娘かわいい〜☆」 とか言って、 自分もドアラの耳を買おうとする女子がいるが、 かわいいのは「あの娘」であって、「ドアラの耳」じゃない。
ドアラの耳は「つけると可愛くなる」魔法の耳じゃない。 そこのところを履き違えて迂闊にドアラの耳をつけると、とんでもない事になるぞ。
 
  
天道総司

     「しかし、何故ドアラがこんなところに?」
     「そうだ。あいつは東京エッグのフィールドシートとか、 高い席の客にはめっぽう愛想を振りまくが、 いつも外野の貧乏人には無愛想なはずだ!」
     「なぜ今日に限って外野に!?」
     「きっと何か裏があるはず。何しろあいつはクラッチの手先だからな」
     「待てよ…ということは…まさか…」
     「!!」

      「ス!?」

 まさか、過去に九州方面で話題になった 「外野スタンドからバッテリーやベンチのサインを盗み見し、打者に伝える」 という“学生スパイ大作戦”を、クラッチの命を受けてドアラが!!?
     「馬鹿な!まさかドアラが…」
 胸によぎった黒い不安を信じたくはない。我々は急いでドアラの正面に走った!


正面ドアラ

正面ドアラ


「何かサイン出してるーーー!!!」

 次の瞬間、楽天・リックのバットが好投・朝倉のボールを真芯で捕らえ、 山崎ですら楽にホーム生還させるタイムリーをライトに弾き返した。



第5章 笹カマ食って乾杯



 試合は、中日が6対2で快勝した。
 この素晴らしい好ゲームの内容を、文章で表現するのは難しい。
 100の言葉よりも1枚の写真。
 試合中に取材班が撮影した以下の画像が、それを雄弁に物語ってくれるだろう。


眠る球場スタッフ

↑試合中に眠る球場スタッフ

寝るな〜!!!

(仙台ならではの、ほのぼのした光景である)


 とにもかくにもこの日、勝利の『燃えドラ』大合唱は、 フルキャス宮城から遠く気仙沼の地まで響き渡ったのである。


 
中日
東北楽天


勝利の2次会

「♪仙台、仙台、いいところ!」
「♪笹カマ食って、乾杯だ!」

 そして、フルキャス宮城に詰め掛けた33万5000人の中日ファンは、 最後に全員で「今夜は笹カマ食って乾杯だ!」と熱い約束を交わし、 解散した。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


その夜。


仙台の居酒屋



 我々は仙台市内の居酒屋にいた。
 そして関東田中一家のみなさんが合流したところで、BULLY客員編集長が満を持して店員を呼んだ。

    「じゃあ全員揃ったところで…
     笹カマください!」
 そう!
 あのライトスタンドでの中日ファンの熱い誓いを、果たすときが今!!
 そしてこの“笹カマ・コール”に店員が即座に反応する!

    「あー、うち、笹カマ置いてないんですよ〜」










!?


  
  おばあちゃんが言っていた…。
笹カマを置いてない店で笹カマを注文するなど、 渡邊の打席で 「♪場外ホームラン、わったなべー」とコールするようなものだ、と。
…そういう意味では、仙台の試合で一番印象に残ったシーンを、 居酒屋への注文を通じて記憶をプレイバックしたわけだな。
 
  
天道総司



ぶっちぎ竜