第20話

逆襲のカズキ 〜甦るピンキー伝説〜




 その朝、世界中のスポーツ新聞がこの “衝撃ニュース” を1面トップで飾り、地球が驚いた!


井上、ピンクのリストバンド復活?


『井上、ピンクの
リストバンド復活
!?


 20世紀末、
     「なんだあのピンクは!?」
     「ピンク・サファイアか!?」
     「ピンク・レディーか!?」
     「ピンク・フラミンゴか!?」
     「いや!あれはピンキー井上だ!!」
 と世界中に衝撃を与え、“カズキ・ブーム”を巻き起こしたあのピンキー・リストバンドが、 「調子のいいとき」「日曜日限定」 で、2006年“ぶっちぎ竜元年” に華麗なる復活を遂げるというのだ!!


井上選手会長

「みなさんから、ピンクはどうしたんだと、言われるんで…」


 2004年、落合親分就任とともに禁止された「ピンク」。 その理由は「カッコより内容で目立て」というものだった。
 このとき、親分の“目”は井上の本質を見間違えていたといえる。

 井上は「打で目立たないからカッコで目立とう」としているのではない。 カッコで目立ち、周りの注目を浴びることで、いい気になって打ち始める のだ!


井上選手会長


↓ピンクグッズをつけてるときの井上の脳内

「やっぱりピンクが一番似合うのはこの俺やな」 「テレビに映ったとき目立つし」 「街のうわさでも『井上って誰?』『ほら、ピンクの人』で通じるし」 「俺の尊敬する山本カズさんとかは『山本カズって誰?』『ほら、あの顔の恐い人』やったもんな」 「カズさんと俺は同じ顔やけど、俺は顔のことは言われへん。『ピンクの人』や」 「そしていつかは『あの凄いバッティングの、ほら、ピンクの人』『ああ、中日の井上様ね☆』って ウワサされたるんや!女子高生に!」 「そのためにいっぱい打って、テレビに映ったるぞ!」


☆   ☆   ☆   ☆   ☆



井上選手会長 「というわけで、ピンクの使用許可をお願いします。」

落合親分 「何が“というわけ”なのか、分からんが…」

落合親分 「まあいいだ。オラはお前がそう言い出すのを待ってただ」

井上選手会長 「えっ…」

落合親分 「いつも言ってるべ。“自分で納得してねぇ事はしねくていい”。 練習方法、打撃フォーム、オラたちからアドバイスはする。 するども、それを採用するかどうかは自分の判断で決めろ、と」

井上選手会長 「お、親分…! 親分は僕らに自己判断力をつけさようと、わざと…」

落合親分 「っていうかピンクなんてカマくせぇもの、気ン持ち悪いから止めろって言ったのは事実だ。 ゴリラ顔してよ。
 でも最近は キモカワイイ って言葉もあるだし、オメェより変な格好したやつ、テレビでいっぺぇ見るべ。 今思えば、オメェが“キモカワ・ブーム”の先駆けだったのかも知んねぇな」

井上選手会長 「キモ……」


↓井上の脳内

「キモカワイイ、って俺の事やろか?」 「でも実際テレビで見る“キモカワイイ”タレントって可愛くないよな。キモいだけや」 「って事は、……俺がキモい?」 「いやいや、監督がそんなこと言うはずがない」 「きっと『肝吸い食いたい』と聞き間違えたんや」 「一緒にウナギの肝吸いを食いに行こう、そういう話か!」 「肝吸いといえば、やっぱりウナギやな。よっしゃ!」



井上選手会長 「熱田神宮の『蓬莱軒』はどうでしょう」

落合親分 「何が。」





熱田神宮
↑翌日、井上はみんなを集めて『蓬莱軒』で決起集会を開こうとするが、 監督欠席のため、お参りだけして帰る。

ぶっちぎ竜