むかしむかし、あるところに「幸せの王子」と呼ばれる銅像がありました。 銅像は、たくさんの白星に囲まれて、金色にひかり輝いてました。 王子の願いは、日本で一番になることと、球界の発展です。 そんな王子の指は今日も空に向かい、「日本一」を指し示しています。 ある晴れた昼下がり、王子の許に一羽のツバメが近づき、 囁きました。 「王子、王子。神戸に貧しいチームがいるよ。とても可哀相なチームだよ」 「何だって? …よしわかった。私の星を分けてあげましょう」 王子は自分の星をはぎとり、貧しいオリックスに分けてあげました。 その後もツバメは時々あらわれては、耳元で 「所沢に瀕死のライオンがいるよ」 「福岡に親に捨てられた可哀相な子がいるよ」 と囁き、そのたびに王子は自分の星を分け与え、 王子自身、どんどん貧しくなっていきました。 そして、交流戦5カードを消化しました。
「王子、こんなに星をやっては王子が…」 「交流戦は五分なら御の字だ。失った星はまた稼げばいい。オラはいいだ」 「そうですね。楽天から取り戻せばいい話ですね」 「バカこくでね!何言ってるだ、ツバメ君! 何のための交流戦だ? 貧しいパのチームを救うための交流戦だべ? 一番貧乏な楽天を救わなくて、何が交流戦だ、何がパリーグ救済だ。 オメらの『パリーグ救済』は口だけだか、ツバメ君」 「ほら、星三つだ。これを仙台まで持ってってケロ」 「お、王子…。あなたは何て素晴らしい人なんだ…!」
交流戦前、「11」あった王子の星は、交流戦前半が終わる頃、 たった一つになってました。 しかし、王子が自分の身を削ってパの球団に星を分け与えていても、 与えた先からその星をかすめ取っていく、 盗賊のような球団もいたのです。
持っている星のほとんどをパのチームに与え、 丸裸になった「しあわせの王子」の像。 それでも王子の指は今日も空に向かい、「日本一」を指し示しています。 |