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コーチ・カーター


よく野球選手とかで(主に契約更改交渉のときに)(っていうか契約更改のときだけ) 「自分は命をかけてやってるんだ。そこを考えてほしい。 納得するまで絶対に判は押さない」って言う選手いるじゃないですか。 かっこいいですけど、「命をかけて」って本当ですかね?

僕が小学校の頃、週に一度、たしか水曜日の五時間目だと思いましたが、 その時間は「クラブ活動」の時間なんですね。 クラブってのは中学とか高校のいわゆる部活動ではなくて、 同じ学年でクラスはフラットにして、趣味の合う人たちで好きなことをする時間が一時間あるんです。 僕はそこでは「まんがクラブ」でした。
で、クラブ活動の成果としてみんなで四コマ漫画を描いて一冊の本にして、 学年ぜんぶに配るんですね。それで、同じクラスの斎藤さんって女の子が描いたのが野球四コマで、 こんな感じの漫画でした。

    (一) ピッチャー、マウンド上からバッターに向かって「オレはこのボールに命をかける!」
    (二) バッター「さあ来い!」
    (三) ピッチャー、ボールを投げる「うおおおおおお!」
    (四) せまりくるボールの真ん中にマジックで「命」と書いてある。バッターずっこける。

これが三年間のクラブ活動で一番面白かった漫画でしたね! (授業に「クラブ活動」があるのは小学校の四年〜六年まででした)

えっと、何の話だっけ。ああ、そうそう、 つまりそれくらい命をかける覚悟があるのか!って話ですよ!
オリックス時代の平野とか中村紀とか、契約更改のときにしきりに 「命をかけた」 「命をかけた」って言って球団からお金を引き出そうと懸命でしたが、 お前のボールやバットに「命」って書いてあるのか! 書いてあるなら見せてみろ! いいからパンツ脱げ!って話ですよ!(ああ!また話がそれていく!)(でもいいや!)

『コーチカーター』というのは実際にあった話で、 バージニア州のリッチモンドというギャングと麻薬の売人ばかりいる町の不良高校で、 サミュエル・L・ジャクソン演じるカーター・コーチが バスケットボール部員を更生させていくというお話です。

話だけ聞くと日本ではよくある「ヤンキーが部活で青春!青春!」する話みたいですが、 実際そうなんですが、リッチモンドは「青春」というにはあまりに劣悪な環境で、 子供がシャブ漬けになって死んだり、町のケンカで拳銃で撃たれて死ぬのが当たり前の世界なんですね。
だからカーター・コーチは言うんです。

「お前らのうち半分は若いうちに野垂れ死ぬ! バカだから学校卒業しても就職先なんかない! クスリで死ぬか撃たれて死ぬか、ここはそういう町だ! 死にたくなかったら勉強しろ! 死にたくなかったらバスケの練習をしろ! バスケでいい成績を残せば、スポーツ推薦で大学に行ける! でも大学に行けたからって勉強が出来ないと、ケガでもしてバスケが出来なくなればお払い箱だ! そうなったら元のスラム街に逆戻り、 刑務所に行くか撃たれて死ぬかのどっちかだ! 勉強も出来ない、スポーツも出来ないダメ人間は死ぬしかないんだからな! 死にたくなかったらバスケと勉強をやれ! でないとお前らマジで死ぬぞ!」

これ、本気ですからね。
大学に行けない人たち、就職のできない人たちは、ここではリアルな「死」が待ち受けているのです。
だからアメリカ人の貧民層はスポーツを命がけでやるのです。 命をかけるってのは、そういうことです。

「俺は命をかけてるんや」って言う日本のプロ野球選手は、 そこまで命をかけてるんですかね。 貧民街もない、銃もないこの国で、 プロ野球選手を辞めたからってスラム街で麻薬の売人になることもないこの土地で、 「命をかける」ことはまずないと思うのですが (これは日本の治安がいいことが理由なので、選手のせいじゃありません)。

それでも頭の中で想像することは出来ます。仮装世界で自分をスラム街において、 だらだら生きてるとこの町では死ぬしかないんだ、とイメージを作る。
ようし、俺も気合入ったぜ! 俺はこのホームページに命をかける!

「命」!(書いたった)

(2012.11.20)

原題Coach Carter
邦題コーチ・カーター
公開/製作2005年/アメリカ
出演 サミュエル・L・ジャクソン(カーター)、リック・ゴンザレス(クルーズ)、ロブ・ブラウン(ケニヨン)、ロバート・リチャード(ダミアン・カーター)
監督トーマス・カーター

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