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シュガー・ラッシュ


このところ『月光条例』(藤田和日郎)という漫画を単行本一巻から読み始めてるのですが!

これ週刊少年サンデーの連載開始が二〇〇八年なんで随分遅れて読んでるんですが (サンデーは読まないので)、 おとぎ話の登場人物が入り乱れてあれやこれやする話なんですね。
『鉢かづき姫』や『一寸帽子』のキャラクターが絵本の中から飛び出してきて、 『ブレーメンの音楽隊』と戦ったりするのです!

この漫画がすごい面白くて、たとえば『シンデレラ』ってお話がありますが、 あれって器量よしのシンデレラが王子さまに見初められて幸せになる、って話じゃないですか。

でもこの『月光条例』では、 シンデレラは「何も努力してない私が、運と偶然だけで幸せになっていいの?」と疑問に思い、 「私だけが幸せになっていいの?世の中には貧しい人たちがたくさんいるのに」というジレンマに苦しみ、 「大体ひと目見て好きになってプロポーズって、王子さまも適当過ぎる! 大事なことをそんな簡単に決めるなんて、ちょっと軽薄過ぎるんじゃないの?」 と、王子の人格までdisり始めるのです!

シンデレラや白雪姫の「ケッ、美人は何もしなくても幸せになれて、よござんすねえ」 というディズニー映画特有の「何もしないヒロイン」の問題は昔から指摘されていて、 ただ美人というだけで何の努力もせずに幸せを手にしたり、 素性も知らない女に簡単にプロポーズする王子のバカっぷり、 「しょせん美人とイケメン金持ちが結婚するのがディズニー的ハッピーエンドかよ! あーあ、世の中ブサイクには光が当たらないように出来てんなあ!」 と、世界人口の九割を占める「ブス・ブサイク側の人間」から多くの非難を浴びて来ました!

『月光条例』は、そんな「ディズニー型ハッピーエンド」に強烈なカウンターパンチを食らわせたのです!

おとぎ話の主人公が抱えるコンプレックス、「これでいいのか」という思い、 その不満が爆発して登場人物は絵本の中を飛び出し、 大暴れするのです! 何もかも壊してしまえ! デスト・デスト・デストロイ! ファック・ディズニー!

というのが『月光条例』なのですが(少し違うような気もしますが) (作者や愛読者から「違うよ!」と抗議されそうですが)、 それの「おとぎ話」を「ゲーム」に置き換えたのが『シュガー・ラッシュ』です(製作・ディズニー!)。

ゲームの中での自分の役割に疑問を覚え、コンプレックスに悩み、 「こんな仕事はもうイヤだ!」 とゲームの外に逃げ出すゲームキャラクター・ラルフ!
そして「シュガーラッシュ」という別のゲーム世界に入り込んだラルフは、 やはりコンプレックスを抱えながらも自ら道を切り拓こうとするヒロイン・ベネロペちゃんと出会うのです!

このベネロペちゃんが一所懸命で努力家でたくましくて気風がよくて、とっても応援したくなるのですよ! (シンデレラとか眠れる森の美女とかどう考えても応援できません!) (眠れる森の美女なんてただ寝ているだけだし!)

イヤなことがあっても正面から向き合い前に進むベネロペちゃんは、 この先どんなことがあっても強く生きて行くことでしょう。 対してシンデレラは、 イヤな事から逃げ出し、 男のところに転がりこんで、 自分ひとりだけ幸せになろうとしましたが、 スピード結婚とスピード離婚はセットです!

おそらくはシンデレラは結婚して間もなく飽きっぽい王子に早々と捨てられ (舞踏会でひと目見ただけで結婚を決意するようなクソバカ王子は、 別の舞踏会で別のいい女を見つけたら、そっちに走るに決まってます!)、 飛び出した家には帰るに帰れず、 道端で男を漁る売春婦となるしか道は残ってないのです!

(2014.01.21)


原題Wreck-It Ralph
邦題シュガー・ラッシュ
公開/製作2012年/アメリカ
出演
監督リッチ・ムーア

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