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A.I


『AIが止まらない』って漫画が昔ありましたが!(一九九四年から『少年ファックマガジン』 で連載されました)

うろ覚えですが、確かあれは現実世界で女の子とコミュニケーションの取れない童貞オタク少年が、 得意のプログラムで二次元の彼女を作り、 それが何かの間違いで現実世界にあらわれて本物の彼女になってくれる、 という二次元妄想非モテ男の考えそうな可哀想な可哀想なお話でしたが、 まさか巨匠・スピルバーグが日本のオタク漫画を映画化するなんて! (さすがオタクの神様・スピルバーグ!) (スピルバーグみたいなUFO&怪獣オタクと 日本の二次元恋人欲しいオタクは微妙に違う感じもしますが!)

で、二〇〇一年に公開されたのが映画『AI』なわけですが、 漫画版の『AIが止まらない』とずいぶん雰囲気が変わっててびっくりしましたね! 未成年の童貞マザコン少年が 人間とコンピュータとの異常な愛情に悩み苦しむという基本プロットは同じなんですが、 この主人公の少年は屋外に出て冒険をするという、 日本の引きこもりコンピューターオタクには考えられない行動的で活発な少年で、 さまざまな困難を乗り越えて夢をかなえるというファンタジー作品になってました! (日本のオタクは夢なんてかなえません!) (さまざまな困難も乗り越えません!)

映画評論家のマッチーこと町山智浩さんの解説によれば、 この作品はスピルバーグが敬愛してやまないスタンリー・キューブリックへのオマージュがいたるとことに散りばめられてるそうで、 キューブリックの『二〇〇一年宇宙の旅』の別エンディングであり、 スピルバーグが「若気のいたり」で作った『未知との遭遇』の作り直しであるとも言います。

『二〇〇一年宇宙の旅』といえば 人類を創造したのは神様ではなく宇宙人であるという設定で (あるいは「神様=宇宙人」であるという思想)、 夢も希望もないこの腐った世界を救ってくれるのは宇宙人である、というお話でしたが、 『AI』では「神様=コンピューター」です!

夢も希望も失いかけた少年を最後に救ってくれるのは未来世界のコンピューター、AIです (漫画の『AIが止まらない』でも彼女のいない童貞少年を救ってくれたのはコンピューターでしたね!)。

かなうはずのない夢を現実化してくれるのがコンピューター、 確かに現代でも彼女はパソコンを通じてゲットする時代だし(そうか?)、 友達のいないコミュニケーション能力の低い人でも(俺か!)(誰か俺をdisっているのか!) パソコンに向かってツイッターやミクシィで友達を作る時代です!(俺か!)(俺のことは放っといてくれ!)
人間関係でさえコンピュータに支配される時代! 僕たちはコンピューターがなければ何も出来ない! 友達さえ作れない! すべてを支配し統括するのがコンピューター! 「コンピューター=神様」という時代になってしまいました!

『AIが止まらない』でプログラムで作った彼女がパソコンから飛び出し現実化する、 という設定は、 引きこもりオタクが一日中パソコンに向かいネットでコミュニケーションに励み、 気が付けば彼氏・彼女が出来ているという現代社会を予言したものではないでしょうか!

現実世界では女友達の少ない僕でもネットでは女友達はいっぱいいます!(その半分はネカマですが!)
映画の『AI』のラストは自分の妄想をコンピューターの中で叶えるという、 ハッピーエンドなんだか 現実ではかなわない夢を二次元で叶えるオタクの悲しい人生劇場なのか よく分からない切ないエンディングでしたが (妄想世界で生きる僕らには涙が止まらないラストです!) (「僕ら」って言うな!)、 もういまや現実も非現実も境目なんかないですからね!

いまツイッターで親しげに会話している気の合う友達と思ってる君のフォロワだって、 実はAIかも知れない(その人が現実に存在する人間だと証明する手段はないのです)。 本当のことは誰も分からないし、何が本当で何が嘘かも分からない。

でも、それが現実か非現実かなんてことはどうでもいいのです。君が幸せであるならば。 だって、神様だって現実には存在しないけど、 その存在を信じることで人は救われ、幸せになれるわけだから!

(2012.11.15)

原題A.I. Artificial Intelligence
邦題A.I
公開/製作2001年/アメリカ
出演 ハーレイ・ジョエル・オスメント(デイビッド)、ジュード・ロウ(ジゴロ・ジョー)、フランセス・オコナー(モ二カ)
監督スティーヴン・スピルバーグ

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