(57) おまんるいのピンチやよ
ずんどらごは伝統的に、
「無死満塁から点を取れない」
と言われている。
無死満塁。それはボテボテの内野ゴロでも1点、外野フライでも1点、
ヒットなら2点入るケース。
しかし、
内野ゴロも外野フライも、もちろんヒットも打てない。いや、打たない。
大和撫子のような慎ましさ
を持っているのが、ずんどらごナインなのだ。
無死満塁、向うのピッチャーは泣きそうな顏でマウンドに立っている。
敵スタンドのファンには泣き出すもの、汚い言葉を投げつける者、
現実逃避して翌日の安田記念の予想を始める者までいる。
そんな
心の弱った弱者
をここぞとばかりに叩くのは、
男として、武士としてどうなのだろう。
そんなとき、ずんどらごのバッターは、上杉謙信が武田信玄に塩を送るように、
そっと凡退するのだ。
能力名 『おまんるいのピンチやよ』
(フルベース・ノーラン)
【効果】 ピンチをチャンス、チャンスをピンチに変えるのがずんどらご。
無死満塁では点にならない形で1人がアウトになったあと、
次打者がゲッツーになるという安定した形が出来上がっている
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そんなずんどらごだが、この試合、
最大のピンチは序盤の2回にやって来た。
モリノ、ワダ、ヒラタが安打・エラー・四球で出塁、
ノーアウトでおまんるいのピンチ!
この場面で打席に立ったキョーヘイは、
「どうぞアウトにしてください」
と言わんばかりのピッチャー・ゴロ。ここまでは予定通りだ。ところが!
楽天のピッチャー・ミマはゴロを捕球すると、ホームに向かって
キレ味鋭いスライダー
を放りキャッチャー捕れず、
慌てて追いかけて拾いあげると、ホームベース上に
唸りを上げてホップするジャイロ・ボール
を投げ込みピッチャー捕れず、
さらにバックアップのサードの横も抜け、ボールは三遊間を抜ける勢いで転がっていった。
能力名 『江戸仕草』
(ハートフル・マインド)
【効果】 点を取ろうとしないずんどらごに、どうぞどうぞと点を差し出す楽天。
世界中の誰もがこんな譲り合いの精神を持っていれば、この世から戦争は無くなるだろう。
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「どうぞアウトにしてください」というずんどらごに対し、
「いえいえ、どうぞ点を取ってください」
と言ってくる楽天。
江戸しぐさのような譲り合いに、
誰もが心を打たれた。
楽天の譲り合いの精神に感激したずんどらごは、
お返しに
二塁ランナーがオーバーランで1アウト、
次打者ゲッツーで3アウトと、もらったチャンスを礼儀正しく返納した。
ずんどらご2回の攻撃
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無死 |
森野 |
左安 |
0−0 |
無死一塁 |
和田 |
三ゴ失 |
0−0
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無死一二塁 |
平田 |
四球 |
0−0 |
無死満塁 |
岩崎 |
投ゴ失 |
0−1 |
1死一二塁 |
武山 |
投バ併 |
0−1 |
↑ 目頭が熱くなる感動のスコア
(センイチがいなくてよかった)
6月7日(土)ナゴヤドーム
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
R |
楽天 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
0 |
|
|
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3 |
中日 |
0 |
1 |
2 |
3 |
0 |
0 |
0 |
0 |
x |
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6 |
【楽天】 美馬、松井裕、長谷部−嶋
【中日】 山井、高橋聡、又吉、岩瀬−武山
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なお、この日はモリノが4打数4安打と大活躍、
調子に乗ってお立ち台で
自分の本の宣伝
をしていた。