(49) 代走は出さない
7回、1点を追いかけるずんどらごの攻撃、先頭のブーちゃんが2ベースで出塁すると、
次打者タニシゲは送りバントの構え。
タニシゲといえば、
カブレラに送りバントを教えたほどのバント名人
だが、
どんな天才にも調子の悪いときはある。
タニシゲのバントは三塁に転送されランナータッチアウト、
しかしタニシゲが
炎の激走で一塁はかろうじてセーフ、
チャンスの目を残した。
次打者のナオ・ドノウエが送りバントをきっちり決め、
場面は2死二塁。しかし、この場面でもタニシゲに代走は出ない。
まあ、タニシゲの足も決して遅いとは言わない。
小学校の低学年の女の子が相手だったら、ぶっちぎりで勝てるほどの俊足の持ち主だ。
盗塁だって去年、1回成功している。
(その前の盗塁成功は2005年だが)
それでも、
「シゲに代走出せよ!」
と心の中で思ったずんどらごファンは球場内だけでも3億人はいただろう。
さて、ここでタニシゲが今シーズン、先発出場して途中交代した試合をチェックしてみよう。
2014年 タニシゲの途中交代(先発スタメン時)
日付 |
交代要員 |
相手 |
4月22日 |
火 |
代打 |
小笠原 |
阪神 |
4月29日 |
火 |
代打 |
小笠原 |
横浜 |
5月 3日 |
土 |
捕手交代 |
松井雅 |
読売 |
5月 8日 |
木 |
代打 |
小笠原 |
阪神 |
5月10日 |
土 |
捕手交代 |
赤田 |
広島 |
5月17日 |
土 |
代打 |
野本 |
ヤクルト |
5月20日 |
火 |
代打 |
小笠原 |
北海道 |
代走での交代、ゼロ。
タニシゲは自分に対し、
代走を出さないのだ。
二塁ランナータニシゲという不安な状況の中、
次打者のオーシマは打球をセンター前に弾き返した!
タニシゲは三塁を回ったところでストップ、
本塁に帰れないばかりか足を痛めてしまい、
ここで今シーズン初めて、
代走・タケヤマに変わったのである。
全国10億5000万のずんどらごファンが
「さっき代わっとけよ」
と心の中で思ったが、口には出さなかった。
能力名 『放蕩息子』
(オン・ザ・ロード)
【効果】 都会に出てなかなか実家に帰って来ない放蕩息子のように、
塁に出たタニシゲはめったな事ではホームに帰って来ない
|
タニシゲは何故、自分に代走を出さないのか。
それは、
一年前の
ある出来事に起因する。
☆ ☆ ☆ ☆
2013年6月12日。折しも同じ交流戦、
西武戦にタニシゲは8番DHで出場していた。
先発はブラッドリー…え、
ブラッドリーって誰?
えーと…選手名鑑、選手名鑑、ブラッドリー…、あー、はいはい、思い出しました。
先発はブラッドリーで、
6回ずんどらごの攻撃、
ここまで1失点と好投しているブラッドリーに何とか援護点をあげたい場面だ。
1死からタニシゲがフォアボールで出塁し、
次打者のところで相手ピッチャーがワイルドピッチを放った。
タニシゲは、
「俊足の俺でも、流石にこれは走れないな」と進塁を自重。
それを見た監督ジョイナス(当時)は、
すぐさま
タニシゲに代走を出した
のである!
能力名 『懲罰交代』
(ジョイナス・フィーリング・チェンジ)
【効果】走らなかった選手、走らせなかったコーチを、
何も考えもなく交代させる
|
自分で「これは無理」との状況判断で走らなかったタニシゲだが、それがジョイナスに
「怠慢プレー」と取られて懲罰交代。
ベンチに戻されたタニシゲは、ポカーンと宙を見つめた。
能力名 『正捕手交代』
(ルーザーズ・ゲーム)
【効果】先発が好投してるとき正捕手を考えなく交代し、 試合をぶち壊す
|
そしてその裏、
ここまで好投していたブラッドリーはキャッチャーが代わると突然崩れ、
1イニングで5点を失い、
試合はボロ負けしたのである。
世に言う
『ジョイナスの攪乱』
だが、タニシゲの脳裏にはこのときの事件がトラウマとして深く刻み込まれていたのだ。
☆ ☆ ☆ ☆
話を戻して、この試合、先発のヤマイがここまで1失点と好投、
ここで正捕手を代えてしまうのはジョイナスと同じ
というトラウマが、タニシゲに代走を送ることにブレーキをかけていたのだ。
先発が好投しているときに捕手は代えてはいけない。
しかし、そんな思惑とは別に図らずもアクシデントでタニシゲに代走タケヤマが出る事になり、
アラキのタイムリーで同点に追いつき、
代役キャッチャー・タケヤマもヤマイ以降の投手陣を上手くリードし、
残りイニングを0点に抑えたのである!
長い間タニシゲの心に刺さっていた「ジョイナスの呪い」から、
ようやく解放された瞬間だった。
5月26日(月)ナゴヤドーム
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
R |
福岡 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
中日 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
【福岡】スタンリッジ、森福、五十嵐、岡島、サファテ、森、嘉弥真 −細川、鶴岡
【中日】山井、パヤノ、福谷、岩瀬、祖父江、高橋聡、朝倉 −谷繁、武山
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そして、この試合でもうひとつ「ジョイナスの呪い」が解ける。
なんと、去年一度も勝ち越しがなかったサードユニ着用試合(通称「燃竜デー」)において、
1勝1分と
史上初のカード勝ち越し
を決めたのだ!!
「燃竜デー」が実施されたカードの対戦成績 |
2013年 |
3/31 |
日 |
横浜 |
1勝2敗 |
負け越し |
4/30 |
火 |
読売 |
1勝2敗 |
負け越し |
5/04 |
土 |
横浜 |
1勝2敗 |
負け越し |
5/25 |
土 |
埼玉 |
1勝1敗 |
タイ |
7/05 |
金 |
ヤクルト |
1勝2敗 |
負け越し |
8/08 |
木 |
ヤクルト |
0勝3敗 |
負け越し |
8/23 |
金 |
阪神 |
0勝3敗 |
負け越し |
2013年 |
5/05 |
月 |
読売 |
1勝2敗 |
負け越し |
5/16 |
金 |
ヤクルト |
0勝3敗 |
負け越し |
5/26 |
月 |
福岡 |
1勝1分 |
勝ち越し |
勝てない勝てないと言われ、実はカード勝ち越しも一度もなかった呪われた燃竜デー、
その負の歴史に、ようやく終止符が打たれたのである。