ユーダイ・オオノ という男は義理堅い男だ。

気の知れた友人だろうと、仲間だろうと、貸し借りは作らない。

借りたものは必ず返すし、逆もまた然りである。

今日は前回ひとりで９イニング投げた貸しを、きっちり回収した。




前回登板で頑張ったオオノは、今回は１回でマウンドを降りて中継ぎ陣に「借りを返す」 チャンスを与えたのだ。同僚相手に貸し借りは作らない、オオノらしい思いやりだ。




１イニングでマウンドを降りたオオノは、投手コーチのデニーさんに

「素晴らしいスピード降板だったぜ、オオノ。 そのおまえのスピードを見込んで極秘指令がある。今すぐここを出てナゴヤ球場に移動だ！」

と、ナイトゲームの試合中にも関わらず即ナゴヤへの移動を要請。 この日はゴールデンウィークの初日。新幹線もムーンライトながらも帰省客でいっぱいのはずだが、 オオノは

「御意！」

と頷き、光の速さでナゴヤへ移動したのだった。