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評論家ごっこ  僕は将棋評論家である。 囲碁やオセロゲームの勝敗は、 「最終的に多くの土地を持ってる方が勝ち」というバブル時代のマネーゲーム的な要素を持つが、 将棋は、どれだけ財産を奪われようが、数で圧倒されようが、 たった一人の「相手の王を殺せば勝ち」である。 僕は、読売の野球が“囲碁的”なのに対し、 中日の野球は実に“将棋的”だなあ、と思うのだ。
(2010.1.29)

 平田良介が愛されるのは、ひとえにその「おばかキャラ」にある。

 高校生ドラフト1巡目で中日に指名された平田は、 同期で読売に指名された何とかという人(名前は忘れた)と共に、 日本テレビ『ザ・サンデー』にゲスト出演した。
 ドラゴンズのルーキーで、いきなり全国ネットの番組出演というのは きわめて稀である。

 そして、ゴールデンルーキーがどんなものか見ようとテレビに釘付けになっていた 全国1億8000万のドラゴンズファンが、絶句した。
平田アンケート

 このフリップ・ボードだけ見たら とんでもないアホの子 のような平田だが、しかしよく見て欲しい。

クローズアップ

 趣味:将ぎ。
 特技:将ぎ。

 将棋を趣味にしているのは球界では元ヤクルトの古田敦也が有名で、 「将棋をたしなむ選手は頭脳派で、狡猾である」 というイメージがある。

 ということは、あの一見アホの子、何も考えてなさそうに見える平田も、 それはキャラとして演じてるだけで、本当は賢いんじゃないだろうか?
「アホは演技です!」

 何しろ将棋は囲碁や連珠と違い、駒ひとつひとつの動きが違い、 駒の動きを全て記憶しなくては出来ない競技である。 自分の名前も書けない選手が多いプロ野球界の中では、 卓越した記憶力が必要とされるのだ。

 放送終了後、中日ファンの間では「平田はアホか、賢いか」 の大激論バトルが各地で勃発した。


 ファンを二分したこの大論争は、春季キャンプ前に終止符が打たれた。

 年が明け、新人たちの昇竜館入寮の季節がやって来ると、 ルーキー達がそれぞれ自分のお気に入りのバット、グローブ、 落合監督の著書と、「野球関連グッズ」を寮に持ち込む中、 平田は 徹夜で厳選した200冊のマンガ本 を部屋に搬入したのである。

 「最近のお気に入りは、『涼風』です」

 と笑う平田に、 ファンは「アホの子」を確信した。
「アホはホンマでした!」

 そして2009年オフ、平田は高校の先輩のTSUTAYAこと西岡(ロ)、 後輩の中田翔(日)と合同自主トレのチームを組む。 チーム名は「好奇心」と名付けられた。

 名前の由来は、西岡が前年のオフに『クイズ・ヘキサゴン』に出演した際、珍回答連発で 西岡がアホだということが世間にバレて、 同番組のアホばかりで結成されたユニット「羞恥心」にちなんだそうである。
 取材に来たマスコミに、 最年少メンバーの中田翔は今季の目標として「開幕一軍」と色紙に書こうとしたが、 「開」の字が書けずに いきなりのアホっぷりを披露。このとき、

 「平田がアホの子というより、平田の学校がアホ校なのでは?」

 という説が急浮上したのである。

アホ校トリオ
 つまり平田はもともとアホだったのではない。 高校に行ってからアホ菌に感染し、アホになったのだ。

 なるほど、それなら全て合点がいく。平田は小さい頃は頭のいい子で、 将棋を得意とする頭脳明晰・スポーツ万能な少年だった。

 ところが、高校に進んで、「将棋」はいつしか「将ぎ」になり、 今の平田になったのだ。




はじめてのドラゴンズ Platinum