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新しい歴史
埼玉を制圧!
五月十九日(火)●埼玉西武―中日○

ブランコ こ の日から交流戦が開幕だ。



 交流戦とは、今までリーグ戦で戦っていたライバルがバラバラになり、 何処の馬の骨とも分からない連中と適当に試合をして、 その結果が何故かペナントの成績に加算される(!)という、 「リーグ戦」の定義を根底から無視する摩訶不思議なシステムだ。

 いってみれば 「プロで通算百五十勝、あと近所の商店街チーム相手に五十勝してるから、通算二百勝!」 みたいな感じだ。

 これまで戦ってきたセリーグのライバル達とは、およそ一ヶ月半の別れとなる。

「交流戦で首位に立つも最下位に転がり落ちるも…」
「明日からはみんな自分の道を歩いていくんだ」
「しょせんプロ野球は孤独の闘いよ」
「どいつもこいつも死ぬんじゃねぇぞ」
「フッまかりまちがうようなことがあっても…」
「交流戦明けにまた会おう!!」(全員)


 この期間、セの各チームは北海道・宮城・千葉・埼玉・大阪・福岡といった各観光地を巡り、 うまいものを食ったついでに地元商店街チームと野球の試合をする。

 最初の相手は、埼玉ライオンズ商店街だ。

 埼玉。
  名物は草加せんべい。主な有名人はさいたまんぞう。
 それ以外は一切が謎に包まれた未開の地。

 川を渡り、山を越え、道なき道を行き、 道中は野生の猛獣や埼玉県民に襲われながら、たどり着いたのはコンパスも効かないような山奥で、 道標には「大宮」と書かれていた。

 「ここが…大宮球場…!」

 セリーグのチームが一軍公式戦でこの地に足を踏み入れるのは、  人類の歴史で初である。


 天空に届けとばかりにそびえ立つ異常に高い内野フェンス、 油断するとまっさかさまに地の底に転げ落ちそうな急傾斜の外野芝生席、 コンクリの壁がむきだしになったバックスクリーン、そして、 スコアボードに刻まれた謎の古代文字「ブラン」「デラロ」。


大宮球場


 そこはまるで異世界(アナザー・ワールド)。
 恐竜時代に時間旅行したのび太や、 太平洋戦争の真っ只中に放りだされたイージス艦『みらい』の乗組員たちは、 こんな思いだったのだろうか。

 そして、大宮球場で中日ナイン及び中日ファンたちは さらに信じられない光景を目撃するのだ。

 「見ろ!マウンドに野ザルがいるぞ!」
 「大宮ではサルが野球をするのか!? なんたる野生の王国!」

朝倉力投

 よく見たら朝倉だった。


 そして魔境・大宮での試合が始まった。
 そこで我々は、“もう一つの埼玉名物”を思い知ることになる。

 場面は八回表、一死一塁から荒木がライト前に飛球を放ったときだった。

 ライトのGG佐藤が打球へ猛然と突っ込む!
 ボールはGGの足元で小さくワンバウンド!
 すると、GGはすかさず ボールを蹴飛ばし、センター方向へドリブル しながら走って行ったのだ(!)。


GG佐藤


 球場にいた中日ファン全てが唖然としたが、 ハッと気付いたのだ。

  「そうか!埼玉といえばサッカーも有名だった!」

 GG佐藤が見せた光速ドリブル、あれは、 「埼玉ではサッカーも盛んですよ、 次回は是非、サッカーの試合を見に来てくださいね、 中日ファンの皆さん!」 という観光アピールだったのだ。

 このGGのドリブルをきっかけに中日は四点を取り逆転、 埼玉を制圧した。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9   R
中日  
埼玉西武  
【中日】 ○朝倉→浅尾→S岩瀬
【横浜】 岸→星野→●大沼→小野寺
【本塁打】 ブランコ九号(岸)、ブランコ十号(岸)、和田十一号(大沼)、 中村十六号(朝倉)、平尾四号(浅尾)


公示
5/18 抹消 46岩崎
56中村公
5/19 登録 8平田
36谷


今日のヒーロー

たいへんよくできました
ブランコ
ブランコ
 日本一埼玉西武のエース・岸から二打席連続の完璧なホームラン。

たいへんよくできました
森野将彦
森野将彦
(もりの・まさひこ)
 八回、二対四から追撃の犠牲フライでブランコに繋いだ。

たいへんよくできました
和田一浩
和田一浩
(わだ・かずひろ)
 八回、四対四の同点から勝ち越しのツーラン。

たいへんよくできました
朝倉健太
朝倉健太
(あさくら・けんた)
 初めての球場・中日苦手の地方球場・交流戦開幕カード、 多くの不安要素のある中で七回四失点で勝利投手は上々の仕事。 一イニングで二失点以上といったような大崩れはなく、 最少点差で踏ん張りゲームに緊張感を持たせた。



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