第１４７話 中日、アホになる 　「ええかみんな！ 　俺たち、アホになるんや！」 　前日の試合前、緊急選手ミーティングで井上選手会長は、 選手全員に 「アホになれ！」 とゲキを飛ばした。 　最初は戸惑っていた選手たちだったが、カープとの２戦目で天才・前田の左中間抜けてサヨナラかという当たりを、 アホになった井上が見事なランニング・キャッチでチームを救うと、 「あのカズキさんが守備でチームを救うなんて…」 「よし、僕らもアホになるんだ！」 「カズキさんに負けないくらいアホになるんだ！」 と、心に誓うのだった。 ブラウン vs 落合 １７回戦 1 ４ 東出 2 ６ 梵 3 ９ 嶋 4 ５ 新井 5 ７ 前田 6 ８ 森笠 7 ３ 吉田 8 ２ 倉 9 １ 田中 1 ４ 荒木 2 ６ 井端 3 ９ 福留 4 ３ ウッズ 5 ５ 森野 6 ８ オチョア 7 ７ 井上 8 ２ 谷繁 9 １ 佐藤充 「バッター・井端。」 「カマーン！田中君！！」 「……」 ←プロ初先発・田中 　「さあ来い！」 「目の錯覚だろうか…井端さんの股間にヘビのようなものが…。 いや、まさか、選手会長まで勤めた井端さんがそんなアホな格好をするわけがない。 気のせいだ、気のせい」 　プロ初先発の広島・田中は、竜戦士たちのアホな行動に、明らかに動揺していた！ 井端、ホームラーン！！ ---「監督、抗議ニ行カナインデスカ？」 「私ハ、マスコミ相手に陰デコソコソ落合ノ悪口ヲ言ウ事ハアッテモ、 本人ヲ前二、面ト向カッテ文句ハ言ワナイ事ニ決メテイル！」 ソレガぶらうん流ダ！ 「バッター・井上。」 　「うぇへ、うぇへ、えへへへへ」 　「……！」 井上、ホームラーン！！ 荒木、ホームラーン！ 福留、ホームラーン！ 　アホになった中日打線は、井端・井上・荒木・福留のホームランで広島のプロ初先発・田中をＫＯ！！ 序盤２イニングで８得点を叩き出し、試合を決めたのである。 ☆　　　☆　　　☆　　　☆　　　☆ 　一方、中日の先発は３年目ルーキー・佐藤充。 　「……」 「勘弁してください！僕には出来ません！！」 　アホになり切れなかった佐藤充は２回でマウンドを降り、翌日、１軍登録を抹消された。 　 １ ２ ３ ４ ５ ６ ７ ８ ９ Ｒ 中日 ５ ３ ０ ０ ０ ２ ２ ０ ０ １２ 広島 ３ １ ０ ０ ０ ０ ０ ０ ０ ４ 「充…待ってるで…。 　アホになって帰ってくるのを…！」