第139話

もうグローブで汗は拭かない





 川上がKOされた前回登板の試合(8/24)のあと、ロッカールームではこんな会話がなされていた。 (参考『憲伸日記』8/25付け記事)



川上 「このグローブはゲンが悪いフサ! 次の登板からはグローブを新しいのに代えるフサ!」

井上選手会長 「ケンシン。それは違うで」

川上 「カズキさん…」

井上選手会長 「そのグローブは、お前のいいときも悪いときも一緒に過ごしたグローブやろ? ちょっとくらい悪い日があったからって、いい日のことを忘れたらアカン」

川上 「フサ……」

井上選手会長 「世の中には…いいシーズンも悪いシーズンも… 共に過ごした リストバンド を、付けたくても付けられないヤツもおるんや…」

川上 「フ、フサ?」

井上選手会長 「インタビューで『一のことをピンって言うでしょ。一樹と書いてピンキーなんですよ』 っていう
オレの持ちネタ
も使えなくなったんや!どどどどうしてくれるんや、ケンシン!?」

川上 「そ、そんなことを僕に言われても…」

川上 「でも、カズキさんの言いたいことは分かったフサ!
僕は今まで、グローブを地面に叩きつけたり、グローブで汗をふいたりしてきたフサ。 でもモノを粗末にしちゃいけないんだフサ!」

井上選手会長 「グローブで汗ふいてるんか、ケンシン?
グローブには油が塗ってあるから、そんなんで汗ぬぐうと
頭皮によくない
で」

川上 「フサ!?」



阪神 vs 中日

16回戦

1赤星
2関本
3シーツ
4金本
5浜中
6鳥谷
7矢野
8藤本
9福原
落合vs岡田
1荒木
2井端
3福留
4ウッズ
5森野
6オチョ
7井上
8谷繁
9川上



川上 「今日もメッタ打ちだフサー!!」

川上 「…しかし、今のボクは昨日までのボクとは違うフサ! たとえ打たれても…」



手で汗をぬぐう川上

「汗をぬぐうのは、グローブじゃなく袖で!!」



井上選手会長 「ケンシンのやつ…。負け試合の中にも必ず収穫をつかんでるな…。 ああいうのは日頃のケアが大事やからな。 これならまだまだ 数年は大丈夫やで」

川上 「こういう地道な努力は必ず報われるフサ!」

監督も言ってたフサ。

落合親分 「あの…それ、野球の話?」



 
中日
阪神 x


試合には敗れたが、ケンシンの目は希望に輝いていた。



ぶっちぎ竜