ものがたり

第５７話

川上、グラブ投げる

「アジャストォーー！！

三振！

「ふぅ…いい風だフサ…」

中村 vs 落合
１回戦

1	８	村松
2	６	阿部真
3	７	谷
4	５	中村紀
5	３	北川
6	９	ガルシア
7	４	塩崎
8	２	日高
9	１	デイビー

	１	２	３	４	５	６	７	８	９	Ｒ
ケチックス	０	０	０	０	０	０	０	０		０
中日	１	０	１	０	０	０	０	０		２

1	６	井端
2	８	英智
3	９	福留
4	３	ウッズ
5	７	オチョア
6	５	立浪
7	２	谷繁
8	４	森岡
9	１	川上

　先発・川上は８回までゼロを重ね、完封ペース！！
　しかし、９回表、１死一塁の場面で事件は起こった！！

川上、渾身の１球！

「よし！ゲッツーだフサ！」

判定は一塁セーフ

ゲッツーならず！

川上、グラブを叩きつける

　グラブをマウンドに叩きつけて怒り狂う川上を見て、すかさず落合監督がマウンドへ！


	「……おい、ケンシン」

	「反省なんかしてないフサ。」

	「お前な、審判の判定にグラブ投げつけて、もし　『侮辱行為』と見られて退場　にでもなったら、どうするだ？」

	「…あ！　そこまで考えてなかったフサ…！　僕が退場になったら完封どころか、このゲームの勝敗に影響が…」

	「そんな事はどうでもいい。」

	「そ、そんな事？」

	「そんな事より、お前が“審判への侮辱行為”で退場になったら、オラが一塁ベース引っこ抜かなきゃいけなくなるだぞ。想像してみろ！」

	「………！」

	「翌日のスポーツ紙は『憲伸、侮辱行為で退場！監督はギックリ腰で退場』だ。一塁ベースなんて、オラ引っこ抜く自信ないだよ。あれって、簡単に抜けるんだべか？」

	「まっすぐ構えて、垂直に引き抜く感じじゃないですかね？」

	「コークスクリューのように、回転を加えて抜くとか…」

☆　　　☆　　　☆


	「落合監督、マウンドで長い時間、内野陣と話しています。何を話してるんでしょうね？」

	「川上の気を静めてるんでしょう。絶妙なタイミングですよ！」

「一塁ベースをスムーズに引き抜く方法」
について皆で議論中↓

「テコの原理を応用して…」
「先にあらかじめ抜いて、ゆるめに刺しておくとか」
「ブラウン監督みたいにＴシャツ作りましょうよ！」
「だったら営業のカズキさんにも相談しないと…」
「『落合デー』でファンに配りましょう」
「そんな恥ずかしいことイヤだ、オラ」

　そして、川上がもし暴言退場になった場合の一塁ベースの処置についての話し合いも終わり、ゲーム再開。川上は最後のバッターにファーストゴロを打たせようと右バッターの外角低めにうまく投げたが、あいにくの空振り三振（当初の予定では「一塁ゴロ」→「川上ファーストベースカバー」→「間一髪セーフ」→ 「川上、グラブ叩きつける」→「審判への侮辱行為退場」→「打ち合わせの手順」となる予定だった）で試合終了、Ｔシャツの製作も中止になった。

	１	２	３	４	５	６	７	８	９	Ｒ
ケチックス	０	０	０	０	０	０	０	０	０	０
中日	１	０	１	０	０	０	０	０	x	２

×ケ０－２中○