第16話

ゲバ菌19号の恐怖 (3)



 このオフ、竜を大激震が襲った!!
 何とオフの契約更改で、主力5名、主力でない人2名、 合計7名の“大量保留者”があらわれたのである!!
 例年、保留しないと死んでしまう福留・井上 を除けば比較的保留者の少ない中日にしてみれば、 これは
 “平成の大保留”
 とでも言うべきショッキングな出来事だった。


保留戦士
柳沢
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“下がり幅が大きい。厳しいぜ”
“また嫁にヘナギって呼ばれっちまう”
柳沢裕一
井上
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“ってわけじゃないんだけども”
“保留すると写真入りで新聞に載るじゃん”
井上一樹
4000万→3000万を保留 6000万→7000万を保留
岡本
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“前半戦ハーラートップ”
“ボールは届かなくとも希望額には届け”
岡本真也
川上
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“辛く苦しいときでも我慢して投げた”
“屋内で帽子被りっ放しは辛いんだ”
川上憲伸
7000万→6500万を保留 2億3000万→2億1000万を保留
福留孝介
“こんな金額じゃ判は押せないゲバ”
“年俸査定も微調整ゲバ”
“これに関しては見逃しはしないゲバ”
“保留料くださいゲバ”
福留孝介
井端
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“港東ムース時代は沙知代のお気に入り
“落合竜ではノブタンのお気に入り”
“だから婚期が遅いのか!”
井端弘和
2億→2億5000万を保留 1億4000万→1億7500万を保留
岩瀬
“こんな金額じゃ判は押せねぇ”
“愛知リーグ通算安打歴代2位(1位は神野マネージャー)”
“いざとなったら先発転向、その次は打者転向で60歳現役を目指す”
“でも見た目で既に60歳”
“おじいちゃん昨日も投げたでしょっ”
岩瀬仁紀
2億3000万→3億を保留



シャオロン 「えー、実はですね。いま球界を 恐ろしい細菌 が出回ってるという情報があります。 先日、福留さんはWBC出場のため血液検査を行い、問題ない… というかその菌が原因ではない事が分かっていますが、 他の皆さんにも 血液検査 をお願いしたいと思いまして…」

川上 「断る!」

シャオロン 「え…あの、でも、これは病気が広がるのを防ぐための検査でして…」

川上 「いいですか、先日おこなれたスケルトンのワールドカップで、 アメリカのザック・ルンド選手が、 部分的成長促進剤を飲んだだけで、 ドーピングで失格になったんですよ!」

シャオロン 「えーと…これはドーピング検査ではなく…」

川上 「ザック選手はトリノも出場停止になったんです! 無実の人間を陥れる、そんな理不尽があっていいんですか!?」

シャオロン 「よ、よくないと思います…」

川上 「だしょ!?
だからボクはプロペシアの使用が認可されるまで、 いっさいの検査を拒否します! 国際大会にも出ません!メジャーとかも言いません!以上!」




検査、中止。





 エースが頑なに血液検査を拒否したため、ゲバ菌19号の調査は“調査打ち切り”を余儀なくされた。
 そして、契約更改は一番遅い選手で春季キャンプまで引きずり、 2月12日にようやく全員の契約が完了したのである。


7選手の最終的なゲバ・アップ

柳沢 +200万
井上 初回提示と変らず
岡本 +500万
川上 +3000万
福留 +500万
井端 +2500万
岩瀬 +500万


 ゲバ菌は、更改が終了すると次のオフまで潜伏期に入る。

 ゲバ菌感染者は果たして誰だったのか。
 それは、未だ謎に包まれたままだ。
 
そして、くすり屋に一人の男が。


つづく

ぶっちぎ竜