第7話

球界最速伝説・名古屋のロクロク


文太 日本最速の男は誰かって?
そりゃあもちろん俺…と言いたいところだが、 以前、すげぇヤツを見たことがある。
啓介 えっ…拓海君の師匠である文太さんの実力でも、かなわなかったんですか?
文太 まあな…今じゃすっかり伝説となってしまったが、 あいつの強さに魅せられてな。 実はオレのハチロクも、そいつにインスパイアされたものなのさ。
亮介 何だって!?
“秋名のハチロク”が誰かをパクったものだってのか!?
全国のチビッコもガッカリだぜ!!
文太 パクったんじゃねえ、インスパイアだ!
…たとえばホレ、うちのハチロクはサイドに店の名前書いてるだろ?
啓介 ええ。あの斬新なデザインは日本中の走り屋に衝撃を与えました。 ハチロクといえば藤原とうふ店、藤原とうふ店といえば関東最速!
あのロゴは、オレたち走り屋の憧れでもあります。


拓海
↑「あのロゴ」

文太 …あのロゴはな、オレを負かした唯一の走り屋、 そいつのマシンを模倣したものなのさ…。
啓介 何ですって!?
亮介 あのロゴが!?
文太 それほど、すげえヤツだったのさ、あいつは…。
あれはオレが、和歌山へ遠征に行ったときだった…!


名古屋のロクロク

ギャギャギャギャギャギャーン!

名古屋のロクロク

ズドォオオオオオオォォンンン!!!

名古屋のロクロク

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

名古屋のロクロク

グァラドラガキィイイイイイイン!!!

名古屋のロクロク



文太 …そりゃあものすげぇ走りだったぜ。 何処から来て、何処へ行くのかは分からねぇ。 地元の走り屋に聞いたら、あの車は “名古屋のロクロク” って呼ばれていて、 太地から那須勝浦までを約20分で走りきるそうだ。
啓介 太地から那須勝浦…!
亮介 聞いたこともねぇ地名だな…。
そのタイムが速いのか遅いのか、サッパリ見当もつかねぇ…!
文太 何でも、太地のどこかに伝説の記念館があって、 そこに来る大勢の客の送迎を毎日やってるんだそうだ。 そりゃテクも身に付くぜ…!
それを聞いて、オレは中学生の拓海に、 豆腐の配達を毎朝やらせることを思いついたのさ。
啓介 それで、ロクロクにならってハチロクを選んだんですね。
驚いたな。全国の走り屋の憧れ、『秋名のハチロク』のルーツが和歌山にあったとは…。

つづく

ぶっちぎ竜