1999.12.15刊/ベースボールマガジン社/落合博満著 |
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元締めが現役生活の中で関わりあってきた、
プロ野球の世界の本当の“プロフェッショナル”を紹介する。
これまでも“偉い人伝説”のようなものは多く出ているが、
本書でスポットを当てているのは
トレーナー、打撃投手、コーチ、審判、スカウトと、
いわゆる“裏方さん”であり、
一般には知られることのない興味深い話が多い。
もっとも、最初の方こそ
「まさにこれこそプロフェッショナルである!」
といった感じ
なのだが、
途中からもうどんどんなし崩しになっていき、
中日の元球団代表の名をあげては
「あの年俸調停は実は出来レースだった」とか、
ロッテ時代の担当スカウトの名をあげては
「この人は自分への評価とかチームの話は何もしてくれず、
二人で野球の話ばかりしていた」などと、
最後の方はどう見てもプロフェッショナルとは言えない、
ただの暴露本になっており、
落合の得意分野とされう技術系・理論系以外に、
こうやってネタ系も書けるあたりはさすが
“(副業の)プロフェッショナル”と感じる一冊である。 | |||
昨今、プロ野球ではクセ盗みが騒がれている。
(騒いでいるのは谷繁だけだが) しかし、 「打たれてるのは、クセが盗まれてるからだ!」 ここまではいい。 だが、なんでその次に出て来る言葉が 「卑怯だぞ!堂々とやれ!! オラーーー!」 なのか、私にはよく分からない。 だって、投球時にクセが出るのは、相手のせいではなく、自分のせいじゃん。 「クセが盗まれている」ともし分かったら、 当然その次の発想は
「オラーーー!!」 なんて叫んでいても、ピッチャーのクセは直らないのだ。
逆にクセを直そうとして持ち味が消えたり、故障した例はいくらでもある、という考えだ。 (その例として、元締めは中日・上原晃の名前を挙げている。 アンチ星野の間では、上原の故障は「センイチのせいだ」 という事になっているので、 これも興味深い話だ)
ところで、元締めは「筋トレ否定論者」である。 理由はちゃんとあって、 「筋トレは一時的に筋肉をつけるものであり、 人間の肉体の自然な姿ではない。 なので、それを維持するためには、 毎日トレーニングをしなくていけない。 継続しないと筋肉はすぐ萎み、 一度萎んだ筋肉の回復には時間がかかる。 シーズン中もオフも関係なくジムに通うような根気強い選手には効果があるが、 『オフの間しかやらない』というのでは全く意味がない 。お前たち、シーズン中もオフも、 毎日筋トレできるのか?」 と言うものだ。 なるほど確かに、金本は 「筋トレがあるので優勝旅行は辞退したい」 と言ったくらいだし、 元ベイのローズは98年に甲子園で優勝を決めると、 徹夜の祝勝会のあと、 朝イチの新幹線で筋トレのため横浜に帰ったという。 名古屋一家にも「オフの間は筋トレで鍛え上げる!」 と言ってる選手が何人かいるようだが、 果たして彼らはシーズン中、オフシーズンと、 休み無く筋肉を維持し続けることが出来るのだろうか? 秋季キャンプをサボって三重でゴルフ なんかしてるようでは、甚だ疑問である。 そんな筋トレを含む、 最近流行りのいわゆる「科学的トレーニング」にも 落合親分は疑問を投げかけている。
ルイスやバレルは年齢や状態に合わせて別のプログラムをやっていたのに、 ルイスやバレルを手本にしようとしている人が、 若手もベテランも固定のメニューを押し付けるというのはおかしい、 という話である。 親分の言う事ももっともだが、私はそれ以前に、 「カール・ルイスやリロイ・バレルは野球選手じゃないじゃん」 という疑問の方が先だと思うのだが。(使う筋肉が違うだろう) いずれにしても、コンディショニング・コーチも選手同様、 理論ではなく結果 で判断されるべきなのは、当然である。 日本に初めて科学的トレーニングを持ち込んだあるコーチは、 科学的トレーニングのパイオニアとして神のように崇め奉られているが、 彼を崇拝し、彼の言うとおりの練習をして来たロッテ・黒木は、 いまだ故障から復活していない。
他人から指示されるクセ直し。他人から指示される「科学的トレーニング」。 ここで我々は、過去の書で元締めの言っていた言葉を思い出す。
プロ野球は、いい数字を残してはじめて自分の存在価値が生まれる商売。 それなら、人の流儀でやらされてダメになるより、自分流にやってダメになった方が納得がいく。 しかし、プロのコーチは「選手に結果を出させる」ことではなく、 「自分が結果を出す」ことに一所懸命だ。 だから、クセを矯正する。だから人とはちょっと違う「My理論」のトレーニングを強要する。 「オレの指導のおかげで、こいつは一人前になれた」 という実績が欲しいのだ。
「クセを盗まれるのは相手のせい」「科学的トレーニングはコーチの手柄」
では、何処にも自分がいないではないか。
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