『ヘディング男のハチャメチャ人生』(1)

1985.12.10刊/海越出版社/宇野勝著
ヘディング男のハチャメチャ人生
 ここまでずっと落合親分の書を読み、 すっかり“落合節”に目が馴染んでしまったせいか、 突然ガラリ変わった芸風に一瞬、とまどった。
 「こ、これが同じ野球人の書いたものか」と。

 この書が発刊されたのは85年のオフ。 このとき、まだ落合はロッテに在籍(二度目の三冠王を獲得)、 宇野は27歳でプロ入り9年目、ベストナインを二度、 前年には年間37本塁打でホームラン王のタイトルを獲得し、 この年もタイトルこそバースの三冠の前に譲ったものの、 本塁打41本を放ち、 名実ともに「名古屋一家の主砲」として定着した時期である。

 地味な名古屋一家の中で宇野が大胆にも書籍を発行したのは、 このとき、 既に宇野が「全国区の知名度」を誇っていたからに他ならない。 そう、1981年の『ヘディング事件』のおかげで。
 何せ、これまで8冊の落合親分の真面目な書、 1冊のタカマサ指南役の(内容は不真面目だが)文体は真面目な書に目が馴れてしまっている。

     宇野です。マサルです。いくら叫んだって新聞広告をのせたって、 きっとファンの皆さんには覚えて貰えまい。 それがあの一件で、世間さまから「ウノだ!」「ウノさんだ!」。 自分でも信じられないくらいのモテよう。
     その意味では、 センさん(星野仙一大先輩)には悪いことをしたけど、 あのヘディングはボクの産みの親 で、神様だ。 結果的には、 やれて本当に良かった と思っている。
 もう、1ページ目から脳みそがパンクしそうだ。

 産みの親?
 「やれて良かった」?
 何を言ってるんだろう、この人は…?


宇野の、日本語、ワカラナーイ。


 このsato23、ネット上で稚拙なテキストを提供し始め、今年で丸6年になるが、 それなりに自分のテキストには 「他の野球系ページには負けないゾ」と自負を持っていた。
 しかし、その自信も、うぬぼれも、宇野の前に粉微塵に打ち砕かれた感じである。

負けた!!


 今の私は、未開人が初めて飛行機を見た衝撃、 日本人が初めてビフテキを食べた衝撃、 名古屋以外の人が初めて小倉抹茶スパを知ったときと同じ衝撃を受けている。

 「こんなテキストが! こんな表現方法があるなんて!」

 sato23、あらためてテキスト道の奥の深さを味わった。
 この敗北感を胸に、いつか、宇野師匠を超えてみせる! 超えいでか! まってろよ宇野!!
 さて、そんな私の意識改革は置いといて、本書の内容に移ろう。

 「宇野です。マサルです!」って出だしも斬新だよなぁ…。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆

     読売の中畑清さんとか広島の衣笠祥雄先輩は、 ウチの山内監督にこう言っていると言う。 「ヤマさん。ウーやんは日ごろ何を考えてプレーしているのですか。 とんでもないチョンボをやったかと思えば、 考えられないようなホームラン。 あいつ、 悩むことなんて知らない のじゃない?」
 「あいつ、悩むことなんて知らないのじゃない?」って言葉を、 中畑に言われたってのは、 正直「すごい」と思う。>宇野

     悪いけど、冗談じゃない。しょせん人の子、宇野勝。 チョンボをやると夜も眠れない。 結局グッスリ眠ってしまうが、 それはボクの肉体が睡眠を欲しているがためで、もう一方、 精神の奥底にはいつだって、「いかんなあ」の思いが渦巻いている。 「何を考えているんだろ」というのなら、 ボクはその言葉をそのまま 藤王康晴 に手渡したい。
 …ダメだ。
 こうやって書から宇野の文章を起こすだけで、 ゲラゲラ笑ってしまい、仕事にならない。
 だって、夜も眠れないのに 眠っている し、 「宇野よりも、中畑よりも何を考えてるか分からない」 存在に、ここで 藤王 の名が出るのか、藤王の。よりによって。
 確かに何を考えてるか分からないよなあ、藤王。


コンビニで掃除する店員にキレる藤王


 ああっ、また野球と関係ない話で無駄に行数を費やしてしまった!!
 笑い過ぎだ、落ち着け>俺。
 ちょっと頭を冷やしたいので、 今回は前・後編に分けてお送りします。 後編ではちゃんと野球の話が出来ると思います。したいです。


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