仕置騒動記
近鉄屋騒動

〜 (3) サイン会対決 〜



 9月18日、ついに「労働組合・仕置会」は仕置きストライキに突入した!!


最終兵器投下!



 言うまでもなく、爆弾の投下に正義などあり得ない。
 たとえ如何なる理由があろうとも、 一般市民への爆撃は絶対に正義たりえないことは、 いちいち理屈を並べるまでもなく歴史が証明している。

 そして迎えた「仕置きのない週末」。
 手持ちぶさたの各一家の仕置人たちは、
 「あー、どうしよう、爆弾投下しちゃったけど、このままじゃ気まずいなー」
 と、自分の心の後ろめたさを隠すため、そして選手が見捨てたプロ野球を、せめてファンには見捨てさせないため、 おためごかしの

 「一家対抗サイン会対決」

 を各地で実施したのである。


横浜−広島 横浜公園 9/18(土),19(日) 15:00〜 サイン会
ヤクルト−阪神 神宮外苑 9/19(日) 16:00 サイン会
銀座ヤマハホール 9/19(日) 15:00〜 集会
名古屋−読売 ナゴヤドーム 9/19(日) 15:00〜 お子様と交流会




第1戦 横浜vs広島


 横浜vs広島はセで唯一、2日間に渡りサイン会が実施された。
 しかし、18日のサイン会は突然の事で、 「ハマスタでこんな対決がありますよ」 という情報が流れるのが遅かっため、 客足がパッとせずドロー。勝負は19日の日曜の対決に持ち込まれた。

 先制したのは広島!

 まず、 こんなときでも足腰を鍛えることを忘れない広島の選手 は、宿舎から公園まで 歩いて移動。 道中、ファンからの声援に笑顔で手を振り、 “ファンとのふれあいコミュニケーション”で先取点をあげた!!

 かたや横浜選手は、めいめいベンツやらBMWやら、 電車で来場する一般庶民を尻目に、自慢の高級外車で横浜公園に集合する!!


客が電車で来てるのに、ベンツで来てファンサービス


 カープスの選手が徒歩で球場まで歩き、道行くファンと“ふれ合う”中、 一方の横浜選手、そもそもが球団の経営難から端を発したストライキ中に、 普段の試合と同じようにベンツで乗り入れ、カネモチ気分丸出し!!
 ファンは(試合もないのに)電車で来ているというのに!!!


好感度
広島 +1 徒歩で集合。
横浜 −5 自慢の外車で横付け。


 しかし、横浜はここで“数での反撃”に出る!
 なんと、横浜は選手会に所属してない外国人選手を除き、1軍・2軍の
 ササキを除く全60選手
 が横浜公園に集合。 文字通り、「選手全員によるファンサービス」を始めたのである!!

 ササキを除く全選手が!ファンのために!!


 対して広島は、あの前田がサイン会に参加するなど頑張ったが、 横浜のササキを除く全選手集合の、“数の力”には及ばなかった。


誠意とやる気
広島 +1 あの前田がサイン会に!
横浜 +3 ササキを除く1・2軍60人が全員集結。


 さらに横浜は、用意した色紙200枚を消化すると、サインをもらえなかったチビッコのために握手会に変更、 選手の手が疲れると、今度はハイタッチ大会に切り替え、 臨機応変な対応で、列に並んだチビッコを一人も“弾く”事なく 全員とコミュニケーションを行ったのだった。



ファンサービス
広島 +1 予定の30分で終了。
横浜 +5 列に並んだ全員を消化するまで延長。


△横浜3−3広島△


【総評】横浜はホーム一家らしくササキを除く全員がサイン会に集合、行列に並んだチビッコに対し、 途中で打ち切る事なく最後の一人までサービスを全うした、という点で評価できるが、いかんせん、 一番の人気者であるはずのササキのサボりは、まさに「ストライキとは、出れるはずなのに自分の感情のみでバックれ、 子供の夢を壊すこと」という事をチビッコに印象付けるには十分で、引き分け止まりに終わった。


 なお、土曜日に「現在リハビリ中のため」サイン会に唯一訪れなかったササキは、 日曜もハマスタを訪れることはなく、同じ時間、 銀座で行われた選手会主催の「古田祭り」に参加していた。




第2戦 名古屋vs読売


 ナゴヤドームでは、名古屋一家の出資元である『やっとかめ新聞』の方針で、 ストライキ中ながら仕置き場の使用が許可されていた。 ロックアウトとか言い出し一家の全ての所有物の使用を禁じられた読売・堀内一家だったが、 名古屋一家の幅広いお情けのおかげで、ナゴヤドームで一緒に練習をさせてもらえることに。


出資元の度量
名古屋 +5 一家の所有物・施設の全てを使用許可。ロックアウトされた読売選手に球場の使用を許可。
読売 −5 ロックアウト。


 そしてスト初日、名古屋一家の練習時間が終わりそうな頃、ウルフ高橋が名古屋ベンチを訪れた。


ウルフ  イバちゃん、ちょっと話があるんだけど…。
井端  ん? 何か用か、ヨシノブ。
 ケンシンならもう帰ったぞ。
 イチャイチャするなら球場の外でやれ。
 
ウルフ  いや、ケンシンはいいんだけど…(あとでゆっくりイチャイチャするから)
 今日は球場貸してくれてありがとう。
 で、明日のことなんだけど。
 名古屋一家さんは、何かファンへのイベント企画してるのかなあ、と思って。
 もし何かやるんだったら、うちらにも手伝わして欲しいんだけど…。
 
井端  ファンへのイベント?
 でも、今からじゃ時間が…
 
立浪  もちろん!!
 考えとるに決まっとるやないか!
 そうか、君らも協力してくれるか!
 じゃあ、明日はチビッコ集めてなんか企画しよや!


 ストの期間中のファンサービスなど
 何も考えてなかった名古屋一家選手会
 だったが、この日の練習終了後、ヨシノブ・井端・立浪で話し合い、急遽 「チビッコ感謝デー」を開くことが決定した!


ファンサービスへの意欲
名古屋 −1 ヨシノブから提案があるまでヤル気なし(ホームなのに)。
読売 +2 ファンサービスを自ら提案。(※)

(※)各紙報道により食い違いあり。「井端と高橋がスト決定の直後に二人で話し合って決めた」という説と、 「土曜の名古屋一家練習時間終了後、高橋が井端に提案し、立浪を交え3人で決定した」という説。 本テキストでは、スト決定時点で井端と高橋が話し合うというのは信憑性が薄いのと、 ナゴヤドームでのファンサービス実施の告知が土曜夕方だったという背景から、 後者の報道を前提にしています。


 そして翌日、ナゴヤドームは「18.19日のチケットを持ってる人の中で、チビッコ+保護者1名限定で、 チビッコをグラウンド内に入れてのサイン会を行うことに。


チビッコ限定サイン会


 しかし、異変が起きたのは開場から1時間20分後。
 井端仕置き会長のアナウンスが球場に響いたときだった。

 「ケガ人が出ましたので、これでサイン会を打ち切らせてもらいます」

 列に長時間並んだのにサインがもらえなかったチビッコの親からは、

 「なにがファンサービスじゃ!」
 「なにがふれあいじゃ!」
 「こんなことになるなら、最初からやるんじゃねえよ!」

 と、いちいちごもっともな罵詈雑言の数々。

 しかし、こいつら本当に保護者なのか。子供の前で。


 そして、サイン会は「中止」になった。


進行の手際
名古屋 −3 こうなる事が分かっていたから、当初はイベント企画しなかったんだろうか。
読売 読売側は大きなトラブル無し。


 挙句に、名古屋一家はこの“不手際”を、よりによって工藤に助けてもらう事になる。
 「バッシングされたとき、どうすれば一度失った信用を取り戻し、 ファンを味方に引き入れられるかについては百戦練磨のベテラン・工藤」 が、この不手際をフォロー。自分の登板がストで流れた事もあり、 サイン会終了後の両球団の練習中・練習後も一人黙々と“ひとりサイン会”を敢行、 読売の練習終了後も「俺はタクシーで帰るから」と、 他の選手が帰ったあとも一人居残りしてサイン会を続行、 名古屋のファンに「ベテランならではのファン抱き込み術」を披露したのだった。



ファンサービス
名古屋 登板予定のない選手&予備軍の選手で何か出来なかったのか。
読売 +5 こういうときの工藤はさすがベテラン。


●名古屋1−2読売○


【総評】子供を泣かして何が「ファンサービス」か。




第3戦 ヤクルトvs阪神


 神宮でのヤクルト−阪神がストにより中止になり、神宮外苑では今岡選手会長、赤星副会長、矢野、金本、片岡、 桧山ら主力選手に加え、選手会に所属しないウィリアムス、アリアスも加わった19選手が午後4時から練習前の約30分間、 集まった約400人にサイン会を実施した。

 事前に告知は無かったが、それでも「球場に行こう」と集まったファンが400人。 そしてイベントとして企画して無かったにも関わらず、サイン会の時間をもうけた阪神選手たち。 サインをもらったファン達には、「試合がないのは知ってたけど、来た甲斐があった」と思ったことだろう。

 その頃、ヤクルト選手は、無駄になったチケットを握り締めて神宮にやって来たファンなどほっぽいて、 かといって機構側との正常化の話し合いをするわけでもない、
 銀座でのん気に“古田祭り”を開催
 していたのであった!


古田祭り


 「古田は正しい!」
 「古田バンザイ!!」
 「スト大賛成ーー!!!」

 彼らのホームであるはずの神宮球場で、「せっかく球場に来たのに、試合やってないよ〜」と落ち込んでたチビッコに、 阪神選手が即席サイン会をやっていた、同じ時刻に、である。


ファンサービス
ヤクルト そんな時間があったら、機構側と話し合いしようよ。「時間」ないんだからさ。
阪神 +10 下手すると6カードのうち「唯一イベントが無かった」神宮だったのに、やって来たファンに無駄足を踏ませる事がなかった。


●ヤクルト0−10阪神○


【総評】 ただ騒ぎたくて、ネットの告知でやってくる大人より、 チケット握り締めて球場に来てくれたチビッコを大事にしよう。


→ つづく。



- 新・必殺それペナ稼業! -