第七十二殺

甲子園の真ん中で5万3000人を黙らせる

9月14日(火) ●阪神−中日○


 世界で一番さわがしいのが大阪・兵庫近辺にすむ人間、 いわゆる“カンサイジン” (*1) と呼ばれる人種である。

    (*1)…以前は“オオサカジン”と呼ばれていたが、 “オオサカジン”と限定してしまうと兵庫・奈良・京都あたりが含まれなくなるため、 正確を期す意味で、 一説では京都出身の島田紳助が“カンサイジン”と言い換えたのが最初と言われてる。

 “カンサイジン”の騒がしさはこれまでも映画やドラマ、 漫画の世界でもよくパロディ化されているが、 その“カンサイジン”の中でもとりわけ騒がしいとされる種別が、 “ハンシンファン”である。


スコアラー  元締め。
 仕置き依頼の客人が来ています。
 
落合親分  通せ。
 
謎の依頼者  落合親分、実は…
 阪神ファンを、黙らして欲しいのでロッテ!
 
落合親分  阪神ファンを黙らす?
 あの世界一騒がしい阪神ファンを?
 無理。
 
謎の依頼者  お願いだロッテ!
 だってアイツラ、うるせぇんだもん。人のことを
 「デブ」とか「給料ドロボウ」とか「醜いヒキガエル」とか
 言いやがってロッテ…。
 本当はピッチングで黙らせるのがいいんだけど、俺、ちょっと
 もうあそこには行かないことが決まりそうだロッテ。
 
落合親分  全くもって阪神ファンの言うことが正しいと思うが、
 そうか、今季でいなくなるのか。思い残しがあるのは悔しいだろう。

 よし。それとは別に、“あの世界一騒がしい阪神ファンを黙らせる”
 というテーマには興味がある。
 やってみよう。
 
謎の依頼者  お願いしますロッテ!!



☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 この日も、甲子園球場は耳をつんざくばかりの騒がしさに包まれていた!


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
名古屋 0 0 0 0 0 0 0 0   0
阪神 0 1 1 0 1 0 0 0   3


 「オラ井川ー!しっかりやらんといてこますどー!」(←応援)
 「イガー!!完封せんと家に帰れる思うなよー!」(←応援)
 「打たれたら殺すど!!」(←応援)



 阪神先発・井川は完封ペース。竜打線をここまでゼロに抑え9回、 1アウトでランナー一二塁、 完封まであと2人 の局面を迎えた!
 得点は3−0、ホームランでも打たれない限り同点はない。
 バッターは“ミスター・フォアボール”こと魔眼・高橋光信。 エース・井川から見れば完全な格下の控えバッターだ。
 カウント2−2からの渾身の一球!!


光信vs井川


光信vs井川


光信vs井川


光信vs井川


「目標、完全に沈黙しました」



光信vs井川

「いや〜、今日の甲子園は静かだな〜」

「あ。」

光信vs井川

再び湧き上がる甲子園ライトスタンド

↑三塁側ベンチのわずかな物音も聞き逃さないライトスタンド


 試合はこのまま延長に突入、11回表、タニシゲのソロホームランで名古屋一家が勝ち越し、 見事な逆転勝利を収めた!!


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 R
名古屋 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 1 4
阪神 0 1 1 0 1 0 0 0 0 0 0 3


落合親分  いつも言うことは一緒。
 光信で「勝てる」と思ったから代打で出したんだ。
 井川から同点3ラン?
 そんな驚くことじゃないよ。
 
光信  親分、まさか本当にオレが打つとは思ってもいなかったしょ?
 ベンチでものすごいびっくりして、
 「うわっ、ラッキー!!」
 って顔してましたよ。


思わず吹き出す落合親分


落合親分  ……。


監督も沈黙。





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