第六十四殺

『ちびくろサンボ』のおはなし

9月1日(水) ○中日−阪神●


中日スコアラー  元締め!
 最近の若い人たちは『ちびくろサンボ』を知らないようで…。
 
落合親分  何だと?
 すると前回の仕置きの「虎をバターにする」というテキストも、
 意味が分からなかった若い人もいるわけか…。
 
中日スコアラー  『ちびくろサンボ』が発禁になったのが1988年ですからね。
 今では『サンボ』を知らない世代が、主流になってるわけです。
 
落合親分  …そうか。悲しい話だな。
 ようし、じゃあ今日は『ちびくろサンボ』がどんなお話だったかを
 紹介しよう。


注:世界的名作童話『ちびくろサンボ』は、 1899年にイギリスで出版、 日本でも人気になり、私が子供の頃はどの子供本にも載ってましたが、 1988年、大阪の『黒人差別をなくす会』の抗議にあい、発禁になりました。 この問題は今でも「『ちびくろサンボ』は黒人差別を助長する作品ではない」 という声が多く、議論を呼んでいます。 →原作




世界名作劇場

『ちびくろサンボ』


 むかしむかしあるところに、ちびくろサンボという黒人の少年がいました。
 お母さんはマンボ、お父さんはジャンボという名前です。家族3人で、とても仲良く暮らしていました。

 ある日のこと、マンボママが、 ちびくろサンボに赤い上着と青いズボンを作ってくれました。 そして、ジャンボパパは、市場できれいな緑色のカサと紫色の靴を買ってきてくれました。 靴は底も内側も真っ赤です。ちびくろサンボには、とてもお似合いです。


サンボ一家

(※)… 『ちびくろサンボ』絶版を求める団体は、 「絵本の挿絵が、見ている人に「黒人はみんなこういう姿をしているんだ」という認識を与える。 だから差別だ」と主張してるそうです。 なので、本テキストでは挿絵の人物をを現代風に描き、 「黒人はみんなこういう姿をしているんだ」という認識を与え、 「黒人は白人より格好いいんだ」「黒人は白人より可愛らしいんだ」 という差別を助長させ、「この挿絵は差別だ!」という抗議を待とうと思います。
この現代の文明社会・情報社会で、「挿絵がこうだから、この人種はみんなこういう姿をしてるんだ」 と思うバカがどれだけいるのかは知りませんが。



 うれしくなったちびくろサンボは、ジャングルに散歩に出かけました。
 すると、一匹の虎が向こうからやってくるではありませんか。


人喰い虎  サンボォォォ!
 お前を喰ってやるゥゥゥゥウ!!
 
サンボ  喰うとは穏やかでないね。
 どうだい、虎君? このボクのイカす赤い上着をあげるから、
 今日のところはこれで満足してくれないか?
 
人喰い虎  …よぉし。
 今日のところはこれで勘弁したるわぁぁぁ!!


 サンボの機転で、サンボは危うく難を逃れました。
 これは、カネやモノにこだわり一番大事なものが何かを忘れている、 現代人への痛烈なサンボからのメッセージです。
 「墓場まで、カネやモノは持っていけないんだぜ」
 ときには大事なもののためにモノを捨てる覚悟が必要という事を、 小さな黒人サンボは知っていたのです。

 なおもサンボが道を進むと、今度は別の虎が襲って来ました。


人喰い虎  サンボォォォ!
 お前を喰ってやるゥゥゥゥウ!!
 
サンボ  虎君にはこの青いズボンをあげよう。
 どうだい、虎の中でズボンを持ってるやつなんて、そうはいないぜ?
 ボクのイカす青いズボンをあげるから、
 今日のところはこれで満足してくれないか?
 
人喰い虎  …よぉし。
 今日のところはこれで勘弁したるわぁぁぁ!!


 ズボンを差し出すことで、またもサンボは難を逃れました。
 「周りの連中が持ってないものをあげる」
 そんな誰もが持つ自己顕示欲を上手に刺激し、 サンボはまたも難を逃れたのです。
 なんて利口なサンボ、賢いサンボ、 マヌケな虎は喜んでズボンを持って去っていきました。

 さらにサンボは足を進めます。
 すると、また別の虎がやってきました。


人喰い虎  サンボォォォ!
 お前を喰ってやるゥゥゥゥウ!!
 
サンボ  虎君、このイカす紫の靴をあげるから、見逃してくれないか。
 君の足が4本で靴は2つしかないけれど、
 耳にかければオシャレだぜ。
 虎世界のオシャレ・パイオニアは、これからは君が背負って行くといい。
 
人喰い虎  …オシャレ…オシャレか。
 よし、今回だけは見逃してやらぁ!!


 オシャレ。
 弱肉強食の世界では、およそ必要のないものです。
 しかしサンボは知っていました。野生動物に、「文明」を与えることで
 「生きていく上で必要最低限のもの、以外のものに対する欲求」を与え、
 彼らの価値観を180度転換させ、世の中には食欲以外にも多くの欲があるのだ、
 ということを人喰い虎に教えたのです。

 そして、人間が「文明」と「必要外の欲求」のためにダメになって行ったことを---


 さらに進むと、四匹目の虎が現れました。


人喰い虎  サンボォォォ!
 お前を喰ってやるゥゥゥゥウ!!
 
サンボ  虎君、このイカす緑のパラソルをあげるから、見逃してくれないか。
 もちろん、君らは四本の足で行動するから、傘はいらないかも知れない。
 でもね、その獣王の意気を示す格好いい尻尾に絡めると、
 まるで芸術作品が闊歩するようだよ。美しい。なんとたくましい姿だ!
 
人喰い虎  …そ、そうかな?


 虎は、尻尾に傘を巻きつけて、嬉しそうに去っていきました。



☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 サンボは、降りかかった4つの困難を、“人間の知恵”によって克服したのです。
 それは、過去に社会的に弱者であった黒人社会において、 欧米の白人が振りかざす「文明という名の虚構」がいかに本質を捉えていないか、 最後に自分を助けるものはカネでもモノでもなく、 “人間の知恵”であることを、数々の困難を超えて生き残ることによって、 証明したのです。

 彼ら、自分で自分を「優秀な民族」と言い放つ厚顔無恥な白人たちが、 もし人喰い虎から襲われたときに、サンボと同じように機転を働かせたでしょうか?

 否。

 文明社会に毒された欧米の白人は、 マヌケな人喰い虎と同じように「一番大事なものは何か」を理解できず、 自らの虚栄心のために本質を見落とし、 あがく事もせず、死んでいったに違いありません。

 生きるために必要なものは何か?
 虎のように強いものは、その力を振りかざします。 しかし、力のない人間が自然界を生き残るために必要なのは、 モノでも、カネでもない。「知恵」なのです。

 そのことを、サンボは、教えてくれています。



☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 サンボがさらに足を進めると、椰子の木の下で、さっきの虎が四匹、言い争っています。

 「赤いシャツのオレが一番だ!」
 「いや、青いズボンをはいた俺が一番なのだ!」
 「何を言ってる! 紫の靴をオシャレに耳にキメたオレが一番のオシャレリストよ!」
 「オレの傘が一番オシャレだ!!」


バターになった虎

バターになった虎


 四匹の虎はお互いに「オレが一番」を言い争い、椰子の木の下をぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐ回り続け、 やがて高熱で溶け、バターになってしまいました。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 仕事帰りのサンボの父親・ジャンボが偶然椰子の木の近くを通ると、 そこに良質なバターの山をみつけました。
 ジャンボは「これはいいバターを見つけたわい」 と思い、家に持ち帰りました。


 
ジャンボ  今日はいいものを持ってきたぞ。
 どうだ、美味しそうなバターだろう?
 
マンボ  まあ素敵!
 愛してるわ、あなた!
 これでたくさんのホットケーキを作って、サンボと一緒に食べましょう!


 お母さんのマンボは美味しいホットケーキを作り、 サンボの帰りを楽しみに待ってます。


(おしまい)




落合親分  …いつ聞いてもいい話だな。
 「弱肉強食」という大自然の掟に立ち向かう人間の知恵と、
 白人社会における「モノ」を重要視した世界への皮肉たっぷりのアンチテーゼ。
 子供たちには、こういう深みのある本を読んで育って欲しいよ。
 
中日スコアラー  そうですね。
 「人喰い虎」は、圧倒的な力により暴力的に支配しようとする
 読売・阪神に対する比喩。

 そして、その圧倒的な力に対し、「知恵」で対抗するのは…


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
阪神 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
名古屋 0 0 0 4 0 0 0 0 x 4


落合親分  …阪神はいつも同じ負け方だな。
 そうだ。今日の絵本を阪神ベンチに届けてやったらどうだ。
 岡田親分はあれで頭のキレる男。この本から、何かを学ぶだろう。
 
中日スコアラー  分かりました。届けておきます。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆



岡田監督  何やこの本は!
 トラはあれが欲しい、これが欲しいと補強ばっかりして、
 最後はトラ内部のお家騒動になるいつものパタンへの当てつけかい!?
 こんな本、大阪では発禁や!!



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