第四十六殺
赤い人の仕置依頼

7月24日(土) ○中日−広島×


 元締めが道を歩いていると、道端に一人の男が倒れていた。

 男は全身に赤い衣をまとい、既に虫の息だった。


落合親分  どうした。大丈夫か、赤い人。
 
赤い人  …大丈夫じゃない。
 ウチはもうダメじゃ…。
 首位に9ゲームも離されてしまっては…
 今年はもうダメじゃ…!
 
落合親分  あきらめるな、赤い人。
 あきらめたら終わりだよ。まだまだチャンスはあるよ。
 ハッスル・ハッスル!
 レッドでハッスル!
 
赤い人  …それは違うチームのテーマじゃ…。
 気休めはやめてくれ…。
 チームは弱いし、客は入らない…。
 一体、どうしてこんなことになってしまったんだ…
 一体、何処からおかしくなってしまったんだ…



 そこへ、通りすがりの自称評論家がやって来た。

 評論家は言った。



評論家  それはねー、野球界にはスターがいないからなんですよ!
 スターがいないから盛り上がらないんですよ!
 
赤い人  …ウチには前田智徳っちゅう、十年に一度の天才がおる…。
 あれが「スターではない」と言うなら、この世に「スター」などおらん…。



 自称評論家は「ちょっと選挙の準備があるので…」と言って去っていった。

 そして次に、通りすがりの豪農がやって来た。

 豪農は言った。



豪農  話は聞きました。そういう事なら、我々も痛みを負う覚悟です!
 1億両以上給金をもらってる農民が、もし全く働かずに
 サボって米を作らなかった場合、現行のダウン幅30%を緩和しましょう!
 これで経営は楽になります!
 
赤い人  …そんなことは、とうの昔にやっておる…。
 給金制度には
 「ただし、球団と選手の合意があれば、ダウン幅に制限はもうけない」
 と、現行ルールでも明確に書いとるじゃないか…。

 うちの野村謙二郎、ツバメ一家のところの伊藤智仁、
 本当に貧乏な一家は、そんな事はもうとうにやっとる…。
 何を今さら…知らないはずはないのに…
 
豪農  もちろんそれだけではありません。
 FAの移籍金をゼロにして、移籍の活性化を促しましょう!
 移籍金がゼロになれば、お金のないチームでも補強しやすくなります!
 
赤い人  お前らは現実にダウン提示すると…FA宣言するじゃないか…。
 そして読売や阪神のような…
 ウチよりも強くてお金のあるチームに移籍してしまう…。

 江藤も金本も…ダウン提示をしたら出て行きよった…
 何が「ダウン制限の緩和」じゃ…。
 ダウンって言ったらサインしないくせに、何が「緩和」じゃ…!

 金持ちはますます強くなり、貧乏はますます弱くなるばかり…。
 この上、貧乏球団に入るはずの移籍金まで…
 取り上げようというのか…ゴフッ!



 豪農は、「ちょっと弁護士の意見を聞かないと…」と言って、去っていった。



落合親分  大丈夫か、赤い人。
 
赤い人  金持ち球団と駆け引き上手の選手だけが得をするシステム…。
 どうして…どうしてこんな世の中になってしまったんだ…?

 頼みがある、旅の人…
 世の中には…晴らせぬ恨みを晴らしてくれる、
 仕置人なる闇の職業があるという…。
 旅の人…
 あんた、その仕置人なる人を探し出して…
 江藤を盗んでいった読売…、金本をたぶらかした阪神に…
 うらみを…!!
 
落合親分  生憎だが赤い人よ。
 仕置人を雇うには、高額の仕置料が必要と聞く。
 あなたにそれが払えるのか?
 
赤い人  金はない…
 金はないが… 星ならある…!
 これで…!
 
落合親分  …分かった。
 読売と阪神の仕置き、確かに引き受けた。
 
赤い人  ありがとう、旅の人…。
 ついでと言っちゃあ何だが、俺はもうダメだ…。
 トドメを…あんたの手でトドメを刺してくれ…。
 俺を楽にしてくれ…
 
落合親分  …オチョワ!!



「オッケー、ボス!」

カープにとどめを刺すオチョワ

ガラガラガコーーン!!


赤い人  フガアッ!! (…バタッ)


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
広島 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
名古屋 0 0 0 2 0 0 0 0 x 2


 この日、広島の借金は今季最多の「7」に。
 名古屋とのゲーム差は10に開き、事実上、終戦を迎えた。


落合親分  …成仏。


名古屋一家・対戦相手別勝敗表
(2004/7/24時点)


対戦相手 勝利 敗戦 貯金
読売 8 8 0
阪神 9 7 + 2
広島 12 5 + 7
ヤクルト 7 7 0
横浜 10 6 + 4





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