第三十八殺
ドミンゴ、海を渡って鯉を斬る

6月29日(火) ○中日−広島×


 広島カープ選手別応援歌には 『ドミニカ選手専用テーマ』 という変わったコンセプトの応援歌がある。


♪海を渡ってやって来た
♪みんなの夢を
♪大きくつかもうぜ
♪はるかなる空に


 この曲は、ドミニカ出身の選手のみに使われる。
 しかし、他球団で「出身国別応援歌」など聞いたことがない。 これは、他の11球団の何処も為し得ていない、 カープとドミニカ共和国の、特殊な“友好関係”によるものである。


 カープは、外国人補強のための“素材市場”としてドミニカ共和国をいち早くチェック、 頻繁にドミニカを訪れ、政府・野球関係者と交流を持ち、プロ野球選手育成の目的で 1990年に『ドミニカ・カープアカデミー』を創設した。 (この開校式には ドミニカ大統領はじめ何人かの閣僚が出席するなど、 カープがいかに共和国と友好な関係を築いているかが伺える)

 “アカデミー”というのは日本にはない形態なので馴染みが薄いが、 つまりは野球専門学校で、ドミニカ国内ではMLBブルージェイズ、ドジャース、 そして広島カープの3チームが「素晴らしい施設をもったアカデミー」として有名である (このことは国際的に誇るべき事である。日本政府は王や衣笠なんぞに国民栄誉賞を贈るヒマがあったら、 カープの松田元オーナーに国民栄誉賞を贈るべきだ)。

 そして、彼らが育てた選手にMLB各球団からスカウトが集まり、 (古い資料で恐縮だが)1999年のデータでは1500名の選手をメジャーorマイナーに送り出している。 日本国内ではパッとしない広島カープだが、 “国際的な野球貢献”という意味では、MLBに大きな貢献をしているのだ。

 真の“野球交流”とはこういう事を言うのだろう。
 どこかの日本の真ん中の球団は、「韓国と友好関係を結んだ」「台湾と友好関係を…」 「中国と…」「キューバと…」と、そのときどきでは立派なことを言ってるが、 利害関係がなくなればすぐに打ち切り、 長続きしないのは“真の野球交流”をやっていないからであろう。

 その場だけの利益を求める「口だけ外交」のハイエナと、 将来にわたり友好関係を結んでくれる「同志」。 彼らは個人の利益よりも全体としての豊かさを優先する、共産主義国家なのだ。
 チュニチがキューバと“真の友好関係”を結びたいのであれば、 ノーリターンで見返りを期待しない 『ドラゴンズ・キューバアカデミー』を開校するべきだ。 「リナレスを使っていれば、そのうちキューバが若いスゴイ選手を贈ってくれるに違いない」 と思ってるとすれば、とんだタヌキの皮算用だよ。


☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



山本監督  …それはいいんじゃが、カープにはなかなかいい選手が来てくれんのう。
 
達川  いい選手はみんなMLBにスカウトされるけぇ。
 しょうがないですワ。
 
山本監督  しかし、これでは何のために松田さんが私財を投じて
 アカデミーを創立してくれたのか…
 申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。
 
達川  松田さんは立派な考えのお方じゃ。私利私欲で動くお人じゃない。
 カープだけじゃない、広島の、日本の、そして世界の野球のことまで考えとられる。
 我々カープが育てた選手が、MLBで活躍しとる、それでええじゃないですか。
 
山本監督  …そうだな。
 別に ドミニカ出身の選手がよその球団に入ってカープを苦しめてる
 訳じゃあるまいし、これでいいんだ。これでいいんだよ。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
広島 0 0 0 1 0 1 0 0 0 2
名古屋 4 1 2 1 0 2 0 0 x 10


ドミンゴ、鯉キラー


 
落合親分  それにしても、ドミンゴはいい拾い物をしたなぁ。
 まあ、ベイが解雇したのは監督の方針に合わなかったんだろう。
 それより、ドミニカ出身のこの使える選手に、
 他球団が何処も手を出さなかったってのが驚きだ。
 きっとドミニカにはこのクラスの選手がゴロゴロしてるんだろうな。




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