第二十殺
橋本、唯一のチャンスを逃す

5月25日(火) ×ヤクルト−中日○


 ドミンゴの立ち上がりも悪かったが、それ以上に立ち上がりが悪かったのが Jスポーツ野球中継・橋本清の解説 だった。

 そもそも、ヤクルト−中日戦で、なんで元ヨミウリの橋本が解説をするのか。 そんな視聴者の心配をよそに、橋本の解説が衛星を通じて全国に発信される。

 
実況アナ  「ドミンゴを攻略するにはどうすればいいですかね?」
 
橋本  「ランナーを出すことです」
 
実況アナ  「なるほど、まずはランナーを出す。…それから?」
 
橋本  「ランナーが出れば、何とかなるでしょう」



  お前らのドミンゴについての知識はそれしかないのか >橋本ッ、達川ッ!


 ドミンゴの調子についてのコメントは全く無し、 そして前の試合でランナーを大量に出しながらも抑えきったデータは記憶からデリート。 というか、 「ランナーを出すのが得点への近道」というのは攻略法でも何でもなく、 小学生が読む『はじめての野球入門』に「得点の入れ方」として書いてあることだ。

 ナゴヤドームのお客さんが 「大丈夫だろうか、今日のドミンゴは」 と固唾を呑んで立ち上がりを見守る頃、テレビの前の視聴者は、 「大丈夫か、橋本の解説は…」 と、激しい不安を抱いたのである。


橋本清(はしもと・きよし)
1965年生まれ、大阪府。
1987年、PL学園の投手として全国甲子園春夏連覇達成し、 1988年読売ドラフト1位入団。
1993年、チーム最多の52試合に登板し、 長嶋監督から「勝利の方程式」と命名される。
1995年、右肘遊離軟骨除去手術、1998年、右肘側副靭帯腱移植手術を受ける。
2001年1月、福岡ダイエーホークスにテスト入団。12月に引退。

2002年、タレント事務所『浅井企画』に入社。
2004年1月、CD『GEKISHIN』発売。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 
実況アナ  「中日の猛攻が続いています!今日の中日打線はいいですねえ、橋本さん!」
 
橋本  「そうですね」
 
実況アナ  「今日のヤクルトはどうでしょう、橋本さん?」
 
橋本  「そうですね」



  誰だこんなヤツを解説に呼んだのは。


 読売OBで中日やヤクルトに詳しくないのは分かるが、 アナウンサーに振られても「そうですね」しか喋れない。 本気で2チームについて調べてないようだ。 どうしてこんな解説者を呼んだんだ、Jスポーツ。 どうしてこんな仕事を引き受けたんだ、浅井企画。

 「がんばれ、橋本! 何か喋れ!」

 と、自分の応援するチームそっちのけで視聴者の橋本への応援熱が高まる中、 アナウンサーがいい振りをした!!


実況アナ  「立浪選手といえば、橋本さんとは高校の同級生なんですよね?」


 キターーーーーーーーーーッ!!
 橋本の唯一得意の話題だ!! アナウンサー、グッジョブ!!

 橋本といえば立浪がいたころのPL四人衆、 立浪・片岡・野村弘・橋本と、四人がドラフト上位でプロ入りした黄金世代の一員である (片岡は社会人から)。
 そう、橋本にはこれがあったのだ!!
 思う存分、立浪との懐かしいエピソードを話すがいい、橋本ッ!!


橋本  「…幼稚園の頃からですよ」(ニヤリ)
 
実況アナ  「へえ、そうなんですかあ! それは長い付き合いですねえ!」
 
橋本  「はい!」
 
実況アナ  「……」
 
橋本  「……」
 
実況アナ  「……(何か言えよ!)」
 
橋本  「……」
 
実況アナ  「…えー、次のバッターは井上です…」



  橋本、チャンス見逃し。


 ああ、アナウンサーがせっかく得意の話題を振ってくれたのに。
 しかも、橋本と立浪が幼稚園の頃からの同級生なんて 実況アナなら知らないはずのない有名な話を、 さも知らなかったかのように「へえ〜」と驚いてみせる アナウンサーの心配り も全てデリート。千載一遇のチャンスをフイにしてしまった。



  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
名古屋 2 2 0 0 1 0 0 0 1 6
ヤクルト 3 0 0 0 0 0 0 0 0 3


 一体、何の間違いでこの試合の解説に呼ばれたのか、橋本。 読売戦の解説ならもう少し喋るんだろうか。
 この試合、両軍合わせて18個の三振があったが、 一番大きな三振は、 アナウンサーの投げた打ち頃の立浪ネタを、 橋本が見逃し三振した場面だった。




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