第八殺
初完封はラジコンおじさん

4月21日(水) ○中日−阪神×



 右のエース・川上!
 左のエース・野口!
 投げるスピード違反・ドミンゴ!
 カムバック・平井!

 錚々たる“セ界一の投手王国”にふさわしい豪華仕置人が並ぶ中、 名古屋一家の完封一番乗りは、 なんと38歳、ラジコンおじさんだった!!


ラジコン・エース

「左のエースは渡しても、ラジコンのエースは渡さないぞ!」


 ユニフォームに着替えたラジコンおじさんは、 颯爽とマウンドに立つと、ラジコンで鍛えたコントロール、耐久レースで育んだ集中力で、 試合前半をパーフェクト・ピッチング。 快調に先頭から11人を斬って取り、迎えた12人目の打者・キンケードのとき、 ファンタジー が起きた!!


(クリックでフラッシュ再生)

ファンタジスタ!

虎のファンタジスタ・キンケード


あり得ない場所からの右ひざ!


 今までの野球の常識、普通のバッティング理論では考えられないファンタジー!!(♪そうさ夢だ〜けは〜)
 何しろ、スイング動作中に
 軸足が真横に飛び出して来た
 のだ!! (試合後の岡田監督の 「打ちに行ったら当然、足は動くよ。 誰が当たりに行くか!」というコメントも奮っていた。 間違いなく「当たりに行った」ことは、既に試合のVTRを確認した記者の全員が知っていたのに!!)


あり得ない場所からの右ひざ!

バット、微動だにせず。


山本昌  「そ、そんな!?  ラジコンで言えば、 抜けると思ってインをついたら、 相手の車のタイヤの横から、突然ドリルが出た来たような気分だッ!!」
 
落合  「…マサ、お前のたとえは 30年くらい前のレーサー漫画レベル だな…
 『タイヤからドリル』って…


 ところが、キンケードが一塁で歩き出したときだった。

  「ボール!」

 この日の球審・渡真利はコース通り“ボール”をジャッジ。 抗議する阪神ベンチを尻目に、渡真利マイクを手にし、

  「キンケード選手が“わざと”当たったと判断しボールとします!」

 とアナウンスしたのである!
 一旦は抗議の矛先を治めたキンケードだったが、この「わざと」発言に再ヒート。 早口で英語だったので何を言ってるのか分からなかったが、 本紙専属読唇術専門家によると、下記のようなことを言ったのではないか、と推測される。



キンケード  「キヨハラはワザトデモOKナノニ、ドウシテ俺ハ駄目ナンダ!!」



 もっともだ。  キンケードの怒る気持ちは、よく判る。


 しかし、よほど勉強熱心なのだろう、キンケード。
 彼はおそらく、日米の野球のルールの違いを学習しようと、 開幕前に過去のゲームのVTRを阪神スタッフに頼んだに違いない。 そして阪神スタッフは、 ついうっかり読売戦のVTRを渡してしまった のではなかろうか。
 かつてボブ・ホーナーは「地球の裏側にもう一つのベースボールがある」 とうそぶいたものだが、その日本にも
 2種類の野球が存在
 し、それぞれ、「公認野球規則」と「公認野球規則G」、 異なるルールで試合が行われていることを、キンケードは知らなかったのだ!!


    【公認野球規則G】

    1.ジャッジの最終決定を下すのは審判、またはG監督である
    2.G戦において、相手側からジャッジ抗議があった際、球場内でVTRを流してはいけない。
    3.文書による正式な抗議は、渡辺オーナーがその是非を審査する。
    4.G攻撃時の特別ルール(免責事項)
    (4-1).デッドボールはよけなくてもテイク1ベース
    (4-2).走塁時、微妙なタイミングなら野手のタッチに関わらずセーフ
    (4-3).ハーフスイングは基本的に取らない
    (4-4).天井付近に打球が上がった場合、係員はすみやかにスイッチをオンにし、風速を最大にする。
    (以下略)


 「読売戦では、ジャッジの判断基準が両軍で異なる」。
 日本球界では“常識”とされてることだが、キンケードは誤解してしまったのだ。


イヤッホウ!ジャンパイア!!

よける気の全くないキヨハラ
(公認野球規則G(4-1)より、これはデッドボール)


キンケード  「イヤッホウォォオオウ!
 ジャパンではあれはデッドボールなのか!!」


×…ジャパンでは
○…読売では


☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 さて、そんなこんなでキンケードが一人でヒートアップしてる中、 ラジコンおじさんはスイスイと、結局パーフェクトこそ逃したものの、 9イニングを被安打4、失点ゼロの完璧な内容で、完封勝利を挙げたのだった。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
阪神 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
名古屋 0 1 0 0 3 0 0 0 x 4





山本昌  「ラジコンでいえば ポールポジションから1回も抜かれることなく完走、 最後レコードを意識して四球を出しちゃったけど、よしとしないとね。 今日はエンジンの調子が今イチでしたが、 コーナリングに気をつけました。電波の通りも良かったです」
 
落合  「…やれやれ、マサ、お前ほど趣味と仕事がごっちゃになってるやつもいないなあ。
 趣味も結構だが、本来の目的
 を忘れちゃいかんぞ」
 
山本昌  「ハハハ、大丈夫ですよ監督!
 こうやって9回を投げ切ることで体力をつけ、集中力を高め、 最終的な目標は、もちろん
 山山杯の優勝です!!
 もちろん、趣味の野球もガンバリますヨ!
 
落合  「…山山杯って、何?」




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