第二殺
野口、巣立ちのとき

4月3日(土) ○中日−広島×



 マウンドに向かう野口の心には、不安がよぎっていた。
 「今日からは、一人で生きて行くんだ…」


 2年前、突然の中村さん退団。 入れ替わりで新しく入ったキャッチャーの人とはどうも相性が合わず、 ろくな仕置きができないまま1年半が過ぎた。
 そしてその苦悩を救ってくれたのが、柳沢の存在だった。
 不調に悩むときは自らブルペンに入り、自分の球を受けてくれ、アドバイスをくれた。 試合で打たれたときは、「どうして打たれるんだ!」と責めるのではなく、 「どうしたら打たれないか、一緒に考えよう」と励ましてくれた。
 野口に必要だったのは、制球力でもスタミナでもない。親身になってくれるパートナーだったのだ。

 しかし、今年から落合親分が元締めに就任。 新しい元締めは、 「正捕手はシーズン途中に替えない」という方針のようだ。 野口だけに「専用キャッチャー」を当てるような、特別扱いはしないという。

 もう柳沢さんはいない。
 中村さんもいない。
 これからは、自分一人の力で生きていかなければならないのだ。
 「タニシゲさんのリードでも、勝ってみせる!!」


 マウンドに立った野口の心には、もはや不安ではなく、決意がみなぎっていた。
 「今日からは、一人でやって行くんだ!」



出陣する野口

「生まれ変わるんだ!!」


☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 そして、その陰に仲間たちの友情。


「みんな、知っての通り今日の先発は野口だ」
全員集合!


「だが捕手はタニシゲ。この意味が分かるか?」
全員集合!


5〜6失点は覚悟しとけ、ってことだ」
全員集合!


「そうなる前に、序盤で7〜8点取っとこう!」
全員集合!

「オーッ!!」


 ナインの心が団結する!!


☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
広島 0 0 0 1 0 1 2 0 0 4
名古屋 0 7 1 0 0 0 0 0 x 8


 そして、試合はなんと序盤から名古屋一家が大量8点をリード!

 徐々に息の合わなくっていった野口−谷繁のコンビは予想通り中盤につかまったが、 大量リードがものをいい、野口−谷繁のコンビでは実に久々の勝利を挙げたのだった!!

 「こ、こんなに打線の援護をもらったのは生まれて初めてだ…」


♪「やれば出来る」は魔法の合言葉〜
謎の歌


 やれば出来るじゃないか! 中日打線!!




 「野口、分かったか。野球は2人でやるもんでも、1人でやるもんでもない。 9人でやるんだよ。」

 「で、でも、今日はたまたま勝てましたが、負けたときは
打てないのも打たれたのも采配ミスも、 配球ミスもエラーも、全部僕のせい
になるんですよね? 僕はそういう立場なんですよね?(ビクビク…)」

 「…おまえ、苦労したんだなあ…」




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