沖縄オープン戦レポート

今中を探しに沖縄に行こう!(5)



(一) 北谷の夜

 「今中、いませんでしたね」
 誰もいない屋内練習場を眺めながら、我々はこの日も今中を見つけられなかった事に悲観していた。
 「オレ、なんかこのへん引っかかってんだよ」
 「何ですかBULLYさん?」
 「何処かで今中を見たような気がするんだ」
 「な、何ですって!?一体、何処で!?」
 「それがどうも思い出せないんだ。何処かで…」

 那覇で落ち合う約束をし森兄弟と別れ(これから森兄弟は今日の宿探しだ)、 我々は北谷名物・フリーマーケットに向かった。
 「もしや、今中が自分のグッズを売ってるかも」

北谷フリーマーケットで今中探し

北谷のフリーマーケットで今中を探す

 足を棒にして今中を探したが、今中の出店は発見出来なかった。
 「そうだ、もしかしたらあそこに行けば」
 「何処ですか?!」
 「羽賀研二の店です」

 今話題の羽賀研二の店は、北谷球場のすぐ近くにある。 このところ梅宮アンナとの破局問題がクローズアップされ、 北谷に来たからには一度は行ってみたいスポットだ。 今中も、これが 最後の沖縄 になるかも知れないし、 このキャンプ中に行ってみようと思うはずだ。
 「確かに、ハガケンジ…イマナカシンジ…似ている
 「行きましょう!」
 「羽賀研二の店へ!」



(二) 頑張れ、羽賀研二

 ガイドブックには「シティ感覚あふれる街」と凄い形容詞で紹介されてる北谷町の、 何もない空き地だらけの道をしばらく行ったところにポツンと羽賀研二の店はあった。 しかし、テナントビルの壁に店の看板が出てないので、 ちょっと通り過ぎただけの人には全く気付かれない。おかげで探すのに随分時間がかかった。
 「ダメだな、この店」
 「場所も悪いし、これじゃ客来ないよ」
 「こんな事だからアンナにフラれるんだよ」

 と極めて大きなお世話的な会話をしつつ、羽賀研二の店の前にたたずむ。
 手元の『マップル沖縄』によると、
  「オープンスタイルで海が眺められる最高のロケーション」
 と紹介されている。
 外からテラスの方を覗いて見ると、砂浜は工事中で、 大型のパワーショベルがデン、とたたずんでいた。

レストランから見える風景

海が眺められる最高のロケーション

 「……海、見えないですね」
 「パワーショベル…」
 「沖縄まで来て、レストランから見える風景がパワーショベル…」
 「…ダメだ」
 「こんな事だからアンナにフラれるんだよ」

 車に戻ろうとすると、不意に会長の携帯が鳴った。
 「しまった!森さんだ!」
 日はとっぷりと暮れ、4時間も前に「じゃ、那覇で落ち合いましょう」と約束し別れた我々が、 まさかまだ北谷にいるとは誰が想像しよう。
 あわてて那覇に車を飛ばした。



(三) さらば沖縄

 一夜明けて3日目、最終日。
 『マップル』の地図を丹念に調べ沖縄に恥ずかしい名前の湖がある事を知った我々は、 早速そのまぼろしの湖に行ってみる事にした。
 「この湖はその名前の恥ずかしさから、一般観光客にはいっさい知らされていない沖縄のシークレット・スポット。 もし今中が観光客の目を避けようと姿を隠しているなら、きっとこの湖にいるはずだ!」
 と推理、その放送禁止の湖に向かったが、湖の周りを(道に迷って)三周もしながらついに今中は発見出来なかった。

 「次は首里城へ行きましょう!」
 「応!」
 まるで沖縄観光をしているみたいだが、そうではない。 こうして遊んでるように見えながらも我々は今中を探しているのだ。
 「首里城はかつてこの地で繁栄をきわめていた琉球王の居城。 過去に栄華を極め、そして滅んだ首里城が、 いま鮮やかに復元され昔の姿を取り戻すさまを、 今中は今の自分に重ね合わせて見に来るかも知れない」
 という確固たる理由があってのものだ。

 しかし、首里城にも今中はいなかった。


 我々は肩を落とし、午後の飛行機で帰る事になった。
 「ところでBULLYさん、まだ思い出せませんか」
 「何が?」
 「あのとき言った、『何処かで今中に会ったような気がする』という記憶…」
 「うーん、ここまで出かかってるんですけど…」

 飛行機が離陸した。

さらば、沖縄

さらば、沖縄



(四) 氷解

 それから一週間が過ぎた。
 会社から帰ると、郵便受けに一通の封筒が入っていた。差し出し人はBULLYさんだ。
 「おや、何だろう?」

 家の中に入り、コーヒーを入れ、テーブルの上で封筒を開く。 中には写真が入っている。

 「ああっ、こ、これはッ!?」

 その瞬間、心の中のモヤが一斉に晴れた、ような気がした。
 BULLYさんの言っていた、「何処かで今中を見たような気がする」とは、 この事だったのだ!

首から上はデカイくせに、体は妙にスポーツマンくさい生き物

 目を閉じれば思い出す。あの沖縄の陽射し、歓声と打球音。
 そして、子供たちの前で元気にバック転をするドアラの姿。 思えば、主催試合がたった1試合しかない沖縄のオープン戦に、 わざわざドアラが名古屋から来ているその不自然さに、 試合中に気がつくべきだった。おそらく、その中身は…。

 いや、考えまい。考えない事にしよう。 不死鳥・今中の復活は、多くの中日ファンの願いだ。 ナゴヤドームで待ってるぞ、今中!



CAST

会長
BULLYさん
森ブラザー兄
森ヤングブラザー
sato23(文責)

SPECIAL THANKS

鈴木 "超速球" 孝政
山本 "アニキ" 昌広
ササキ "大魔人" 主浩
トム "ノモはオレの息子" ラソーダ
立浪 "夜の貴公子" 和義
今中 "不死鳥" 慎二

(敬称略)


終わり <<<