前へ 次へ 目次

D's Oct !
十月前半
_1_2_3_4_5 _6_7_8_910 1112131415
中日 .

.

. ..
. ... .
十月後半
1617181920 2122232425 2627282930 31
中日 .... ...

.


.
--

--
(○…勝利、●…敗北)

八十一勝五十四敗(一位)

十月二日(土) 川上、シリーズへ向け投げ込み!

○横14−5中●(ナマ観戦)
川上→正津)

 「そういえば野口さんはキャンプのときにもの凄い数の投げ込みをやっていたなあ。 それで今年はこの成績。ウッス!俺も見習わなくっちゃッス!」。 今シーズン春季キャンプで出遅れ、 調整不足がそのまま結果となり今季は不本意な成績を残した川上だったが、 対照的に十八勝をあげ今季絶好調の先輩・野口を見習い、 今さらながら「武田道場式投げ込み練習」を開始した。 もちろん目標は日本シリーズ、 投げも投げたりこの日はベイ打線相手に七イニング百四十三球、 セリーグ新記録となる十七被安打、タイ記録十四失点と怒濤の公開フリーバッティング、 気の済むまでバッターを立たせたピッチング練習に力を入れていた。

十月三日(日) 秘密兵器、続々登場!

●横0−11中○(ナマ観戦)
鶴田→中山→前田)

 「な、なにいッ!?先発鶴田ぁ?!しかも四番が河野だとぉ?!」。 横浜スタジアムへ詰めかけたダイエーのスコアラー・選手・バイト学生が一同に目をひんむいた。 「お、おのれ、たばかったな星野!ウチに見せたくなくて主力を隠すとは…」。 そうではない、そうではないのだ。 今年の中日ドラゴンズは正直言って、 二位チームが「ミラクル、ミラクル」と寝言を言っていたのが滑稽に見えるようなブッチ切りの独走首位、 「主力を隠した」のではなく、「主力を出さなくても勝てる」 という、中日の真の実力をダイエーの皆さんに見せてあげよう、 との実に気の利いた配慮なのである。 その証拠に四番・河野は試合を決めるスリーランホームラン、 先発・鶴田は七イニングを四安打無失点、最後は中山→前田で完封リレーと、 「ウチは先発ローテでなくても強いし、岩瀬・落合・サムソンを使わなくても勝てるんですよ」 とダイエースコアラー陣にイヤんなっちゃうくらい見せつけ、 (昨年の近鉄・ダイエーの三位決定戦同様) 日本シリーズなどやるまでもない事をあらためて思い知らせたのだった。

十月五日(火) 立浪逆転スリーラン!野口十九勝!

●神3−5中○
野口→サムソン→S宣)

 「クックック…、ちょっと野口をヒヤヒヤさせてみるか…」。 野口を苦しませて苦しませて苦しませてギリギリで十九勝目を取らせようというのは もちろん地獄の貴公子・立浪だ。 優勝のビールかけのときもしっかり岩瀬の目を狙っていた悪魔・立浪だけに、 地獄の脚本家としてこの手の演出はお手の物。 六回の無死一三塁で回った打席には「ここで打つと野口に楽をさせてしまう」と凡退したくせに、 野口の勝利が危うくなった八回に起死回生のスリーランホームランで阪神を逆転、 実に恩着せがましい十九勝目をプレゼントしたのは流石の一言。 試合後、野口は「(立浪のスリーランには)鳥肌が立ちました」と 地獄の貴公子の本性に心から震え上がっていた。

十月六日(水) 武田、百四十七球の投げ込み!

○神2x−1中●
武田)

 「川上は百四十三球の投げ込みか…、俺も若いヤツには負けてられないな」。 二日の川上の投げ込み練習を見て、元祖・投げ込み道場主宰の武田の男の炎が燃えないわけがない。 このところやや調子を落としていた事で、調整の意味も含めこの日は何と延長十一回まで力投、 打線もそんな武田の心意気を察してか、阪神投手陣から得点をわずか一点に抑え、 中途半端に試合を終わらせないよう全員で協力した。 そして延長十一回に入ったところで、 「さーて、川上が百四十三球なんだから、俺もこのへんで上がっとくか。 シリーズにはちょうどいい調整になったろう」 と武田は自ら幕を引く押し出しの四球で、百四十七球の投球練習を終えた。

十月十日(日) そして野口も

○ヤ1x−0中●(ナマ観戦)
野口)

 「ケンちゃんが百四十三球、タケさんが百四十七球か〜。 ケンちゃんとタケさんを足した勝ち数よりも多い十九勝投手のボクだけに、 ここは一丁、二百九十球くらい投げ込んでみるきー」 と、エース・野口の男の炎がメラメラと燃えさかる。 塁上にランナーをためないと寂しくて死んでしまう野口は、 いつものように「これでもか、これでもか」とランナーを出し、 それでも本塁は踏ませない怪投でヤクルト打線をプロ野球タイ記録の十八残塁と子供扱い。 打っては「野口に少しでも多くのボールを放ってもらい、万全の調整をしてもらおう」 という仲間達の熱い思いが痛いほど伝わってく超拙攻を見せつけ 野口の公開投げ込み練習を強力に援護した。 そして九回裏二死二三塁ヤクルトサヨナラの場面で、 サード福留が「野口さん、そろそろ上がってもいいんじゃないですか?」とでも言わんばかりのエラーで ヤクルトにサヨナラのホームを踏ませ野口の投げ込みを百五十二球でストップ、 ダイエースコアラーに「中日打線は大した事ないぞ」「福留の守備は大した事ないぞ」 と思わせる作戦も同時展開しつつ、投手陣は万全の調整を終えセリーグ全日程を有意義に終了、 完璧な仕上がりで日本シリーズへ向かう。

十月二十三日(土) 日本シリーズ・第一戦

○ダ3−0中●
ダ:工藤
中:野口→岩瀬→正津

 「日本シリーズ、四連勝してくれよ!四勝〇敗だよ、センちゃん!」 「いやあ、それはダイエーさんに悪いだろ。一つは負けとかないと」。 優勝決定後、テレビ番組のインタビューで何気なく言ったセンイチ君の一言に、 いつも真剣勝負で冗談の通じない竜ナインが動揺する。これが西城秀樹なら 「♪負けろっと言われってもォ〜!」 と歌いだすところだ。 何せこちらの先発投手陣は野口・山本昌・武田・川上、 向こうは工藤の一人ローテーション、 負けろと言われても工藤以外負けるところがないのだ。 「へたにバットを振ってヒットになってしまっては大変」 とばかりに日本シリーズ第一戦、 中日打線はダイエー・工藤相手にシリーズ最多となる十三の三振(九イニング)の山を築き、 このシリーズ四勝一敗をもくろむセンイチ君の期待に応えるのだった。

十月二十四日(日) 日本シリーズ・第二戦

●ダ2−8中○
ダ:若田部→佐久本→吉田→藤井→ヒデカズ→山田勉
中:川上→落合

 「普段通りにやっていればウチは勝てるんだ」 とシリーズ前は豪語していたダイエー・王監督だったが、 さすがに第二戦ともなると中日バッテリーもサインを変えるなどダイエーに「普段通りの野球」をさせずに、 試合は持ち前の足を活かした機動力野球で中日が二対八で完勝した。 試合後の勝利監督インタビューでセンイチ君がお立ち台に上がると、 興奮したダイエーファンがセンイチ君にメガホンを投げつける暴挙、 さらに川上のインタビューのときにはビールを投げつけるなど福岡ドームは無法地帯。 明日以降の試合がナゴヤに移る事など全くを考えてない純情博多っ子の熱狂振りをアピールしたが、 ダイエーファンの熱狂振りに負けてはならじと急遽ナゴヤドーム売店では四万五百個の生卵を緊急入荷、 三塁側ベンチの球場清掃員も倍増し準備万端で日本シリーズ・ナゴヤ決戦に備えるとか。

十月二十六日(火) 日本シリーズ・第三戦

●中0−5ダ○
中:山本昌→正津→落合→岩瀬→鶴田→前田→中山
ダ:永井→篠原→ペドラザ


 「普段着野球でこの一年間の成果をナゴヤの客さんに見せよう!」。 意気揚々とナゴヤドームに帰ったきた竜戦士達の胸に、 この一年の思いが去来する。
    一、一つでも先の塁を狙う機動力野球
    二、投手陣を引っ張るエース・野口の大活躍
    三、ここぞというときに頼りになる山本昌
    四、関川、気迫のヘッドスライディング
    五、ゴメスの豪快ホームラン
    六、満塁男の井上一樹
    七、ルーキー福留、大事なところで凡エラー

 今年一年の総決算として挑んだダイエーとの日本シリーズ、 この第三戦では取りあえず(七)を敢行し「普段着」を地元ファンにお披露目、 (二)と(三)と(四)と(五)と(六)は本当に大事な試合のためにとっておく 余裕綽々のドラゴンズナインだった。 なお、当初の予定の四勝一敗は、 ナゴヤ地区の経済効果(四勝三敗なら百二十億円)を考え上方修正した模様。

十月二十七日(水) 日本シリーズ・第四戦

●中0−3ダ○
中:武田→正津→岩瀬→宣
ダ:星野→篠原→Sペドラザ

 「もう福岡には行きたくないな」。 第二戦を終えてナゴヤに戻って来たときにセンイチ君が呟いた。 ダイエーファンのマナーの悪さ、 勝ったチームには拍手ではなくビールを。 福岡で優勝を決めようものなら、 次は明太子・とんこつラーメン・博多どんたくなどが飛んで来てもおかしくない。 「福岡行きたくないなー」 「福岡行きたくないなー」 「福岡行きたくないなー」。 思った事がそのままバットに出てしまう嘘のつけない竜ナインは、 その正直さゆえに星野→篠原→ペドラザの前に完全沈黙。 三塁側のダイエーファンから何が投げられるかと思うと、 身の危険を感じ三塁ベースにすら行かない徹底振りだった。

十月二十八日(木) 日本シリーズ・第五戦

●中3−6ダ○
中:野口→正津→岩瀬→落合→川上
ダ:佐久本→藤井→吉田修→篠原→Sペドラザ

 「ま、まさか監督は日本一になったら、勇退を考えているのでは?!」。 ここで日本一になってしまう訳にはいかなかった。 本気でやれば中日の四勝〇敗は確実だったが、本気でやる訳にはいかなかった。 それもこれも、十月十一日夕方頃に一瞬だけ公開された「幻の星野特急」 の記事が原因だ。 この日付のテキストは直後に内容差し替えとなったためバックナンバーにも保存されていないが、 その内容は星野特急の閉鎖についてであり、 閉鎖に関してセンイチ君は 「優勝してやめる、これ以上格好いい終わりかたはないでしょう」 と言っていたのだ。 こんなセリフを聞いてしまっては、 センイチ君を恩人と敬う関川、センイチ君をオヤジと呼び慕う井上に 普段通りのバッティングなど出来るわけがない。 何せ、日本一になったら監督が辞めてしまうかも知れないのだ。 涙でボールの見えない監督思いの竜ナインの凡打・エラーが次々に重なる。 取りあえずここで格下のダイエーに負けておけば、負けず嫌いのセンイチ君だけに 「まだまだウチのチームには課題が山と残ってるわい。 キャンプでこってり絞って、来年また出直しや!」 と思い、残留してくれるのは間違いない。 「監督、来年もお願いします!」。 涙をこらえ、体を張ってセンイチ君残留をアピールする竜ナインの姿に、 ナゴヤドームを埋め尽くした五万五百人(マイナスさくらダイエーファン数十人)も 惜しみない拍手を送っていた。

一勝四敗(日本シリーズ)

Dragons at Oct.1999


前へ 次へ 目次