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D's Sep !

九月前半
_1_2_3_4_5 _6_7_8_910 1112131415
中日
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九月後半
1617181920 2122232425 2627282930
中日



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(○…勝利、●…敗北)

七十九勝五十一敗(一位)

九月一日(水) 福留、野口への気遣い

●読3−4中○(ナマ観戦)
野口→落合→サムソン→岩瀬→S宣)

 「野口さんが中三日で頑張ってるんだ。野口さんに恥をかかせてはいけない!」。 ルーキー福留のそんな心遣いがニクらしい。 五回、二死二塁の場面で打席に立った野口は、 レフト前ヒットに走塁ミスでチャンスを潰してしまう。 責任感の強すぎる野口は自分のミスに動揺、 その弱みに付け込んだ血も涙もない鬼・松井にツーランを打たれ逆転されてしまった。 落ち込むナイーブな野口。しかしそれを救ったのが、ルーキー福留である。 福留は読売三番手・ヘトヘト西山から同点タイムリーヒットを放ち、 その際に何と一塁走者の大西を追い越し、「追い越しアウト」という炎の珍プレーを敢行したのだ。 「何やってんだ福留!」「バカ!タコ!帰れ!」。罵声を浴びせる観客。 だがしかし、この福留のオッチョコチョイのおかげで、 先ほどの野口のエラーを覚えているものは既に誰もいなかった。 そう、福留は自分が悪者になる事によって、 先輩のミスをそれ以上のミスで帳消しにしたのだ。 そんな福留の男意気を感じとったのか、次打者・久慈はさらに福留のミスを帳消しにする逆転タイムリー、 最後は今一つ調子の悪い宣をライト・音が超美技のバックホーム返球で救い、 それぞれのミスをそれぞれが補い合う、何とも友情溢れる美しい「全員野球」で、 竜ナインの結束はまたひとつ強くなるのだった。
M23

九月四日(土) よみがえる宇野伝説

○広1x−0中●
山本昌→落合)

 「末恐ろしい男よ…。宇野が、長い間築き上げてモノにしたあのキャラクターを、 ほんの一年目のルーキーがその境地に達するとは」。 佐々岡・山本昌の投げ合いで九回まで〇対〇と緊迫した試合展開、 緊張の糸が張りつめる広島市民球場で、 ドッと客席を笑いの渦に叩き込んだ男がいた。ルーキー・福留だ。 九回裏二死一二塁、広島・西山のあげた平凡なレフトフライに、 この日レフトに入っていた福留は全盛時の宇野を思わせる炎のタイムリー落球、 体を張った超絶ジョークで珍サヨナラ劇の主役となってしまったのだ。 この間まで二位・読売との直接対決でやや疲れの見えていた竜ナインだったが、 この福留の「天然お笑いプレー」にすっかりリラックス。 「やれやれ、しょうがないなあ。孝介は」。 マジック減らしに気を張りつめ、 ガラにもなくコチコチになっていた竜戦士たちには、 いい息抜きとなったウィークエンドだった。
M21

九月五日(日) 山崎、スランプ脱出!

●広1−4中○
武田→岩瀬→落合→S宣)

 「ホームランしか狙ってなかった。ぼくに期待されてるのは大きいのだったしね」 と軽快なジョークが山崎から飛び出す。 この日勝ち越しとなる二十二号ソロを放ったヒーローは、 八月二十七日に生まれたばかりの長女・奈々ちゃんの名前を挙げて 「(予定日より八日早く生まれたのは)スランプ脱出のために早く生まれて来たのかな。 ラッキーガールだよ」「初めて見たときはサルみたいで噴き出しちゃったけど」 と、山崎らしいほのぼのジョークを連発。 「(自打球で)ヤクルト一本分の血を抜いたよ」 というギャグこそよく分からなかったものの、 これで大貴君も近所のスーパーで「お父さん、今何してるの?」 といったハートブレイク・クエスチョンを聞かれる事もなくなりそうで、 主砲・山崎に強力な味方(父親似)が出現した。
M19

九月七日(火) 矢野の欠場に思わず心配

○神4−2中●
川上)

 「いやあ、ようやく阪神も分かってくれたか。今日は大豊さんが四番スタメンだぞ。 すっかり元気そうで、心なしか髪の毛も増えたような?」 と、竜ナインの顔がほころんだのも束の間だった。 「おい、スタメンに矢野の名前がないぞ?」「な、何だって!?」。 この日の阪神のキャッチャーは北川。矢野は一体何処へ?! 旧友・矢野の姿が見えない事に竜ナインが動揺する。 「矢野、まさか優勝争いをしている俺達に気が引けているんじゃ…」 「俺達に合わす顔がない、なんて考えてるんじゃないだろうな?」 「野球のスタイルはかわっても、俺達の友情は変わらないのに。出てきてくれ!矢野!」。 矢野の中日時代の同僚、立浪・中村・音・ゴメスが次々に併殺の山を作る。 それもこれも、矢野に二年前の中日の姿を見せ、あの頃の友情を思い出してもらうためだ。 ランナーを出しては併殺、終盤に試合が決まってからの山崎の一発など、 竜ナインは一丸となって二年前のドラゴンズを再現。 そんな事をやってる間にいつのまにか試合は終わってしまったものの、 「これで、明日こそは矢野も出てきてくれるだろう」 と期待に胸ふくらませる友情厚い竜戦士達だった。
M19

九月八日(水) 野口、十六勝!

●神1−2中○
野口→落合→Sサムソン)

 「シーズンもいよいよ終盤。これからは先発投手の勝ち負けなど気にせんぞ。 野口の最多勝争い?関係ない、勝ち星がつかなくてもどんどん代えていくぞ!」。 とセンイチ君は言うのだが、 そんな事を言ってみたとて、野口に勝ち星がついてしまうのだから仕方がない。 何しろ阪神打線相手に八回までを四安打一失点と楽々ちんちんのナイス・ピッチング、 しかも唯一の失点も、野口にとっては 「一点あれば十分なのに、味方が二点も取ってしまったから」 とでも言わんばかりの利益還元のソロ一発だけ。 最後は「こ、このまま完投されてはワシの立場が」と思ったセンイチ君が、 落合→サムソンと無駄にリレーし試合を締め、 野口は読売・上原に一勝差とせまる十六勝目をあげた。 最多勝争いのライバル・上原はこの後十四日の中日戦に登板の予定なので、 これ以上白星が増えるとも思えず、 これでは野口に「最多勝を獲るな」というのも無理な相談か。
M18

九月九日(木) 大豊、竜ファンの思いを乗せて

○神5x−4中●
(山本昌→岩瀬→正津→前田→落合→サムソン)

 「♪つっよきィのォ〜、しょーおぶで〜、しょっおり〜をつっかめ〜、 ♪い〜いっきゅう〜、にゅうこ〜ん、そ〜れいっけ・サームーソン!」。 一球入魂。そう、ボールはただの無機質なゴムと皮の塊などでは決して無く、 選手の、ファンの、多くの人の魂が宿っているのだ。 延長十一回裏、サムソンが阪神・大豊へ投じた一球へ込められた「魂」には、 「大豊さん、五番に降格か…」「大豊さん、ノムさんと仲直りしたのかな…」 「昨日は大事な場面で三振しちゃったし…」 「来季の契約、大丈夫かな…」 といった竜ナイン、 そしてドラゴンズ・ファンの思いがこもっていた。 「大豊さん、打ってください!そして来年も現役を続けて下さい!」。 ボールの叫びに大豊のバットが応える。 魂のボールは今でも大豊を愛する中日ファンの思いを乗せて、 「来季残留決定弾」となってバックスクリーンへ飛び込んでいったのだった。 友のため、マジック減らしに一時目をつぶった竜戦士&竜ファンに、 甲子園の月が優しくほほえみかけていた。
M18

九月十一日(土) 武田、『四十年会』の友情

●中1−8ヤ○
武田→正津→門倉)

 「おいおい、何で古田がベンチにいるんだ? 確かあいつはオリンピック予選代表のはずだが…。 何処か体調でもおかしいのか…?」。 シドニー五輪予選でプロ側の派遣選手が次々に戦線を離れる中、 全日本の主軸であるはずの古田がベンチにいる。 同じ『四十年会』のメンバーであり、 古田とは親交ある先発・武田が心配する。 「古田よ、そんな事で日本代表をシドニーに連れて行けるのか! 俺がバッティングピッチャーをやってやるから、思う存分調整しろ!」。 身を犠牲にしてまでオリンピック日本代表のために一役買う決心をした武田は、 ヤクルト四番・ペタジーニに三打席連続四球を与え五番・古田にチャンスを回し、 三打席連続でヒットを打たせるなど大サービス。 「俺は日本シリーズで頑張るから、お前はオリンピックで頑張れ!」 という武田の熱いメッセージをしっかりと受け止めた古田だった。
M17

九月十二日(日) 秘密兵器・前田でヤクルト粉砕!

○中3−2ヤ●
前田→落合→岩瀬→S宣)

 「どりゃあっ!百五十キロのストレートォ!」 「知るかぁっ!ガキーン!!」。 高木→五十嵐亮太→石井一久と、 後に行くほどキロ刻みでストレートが速くなっていくヤクルトの驚愕リレーだが、 球の速い遅いなど(いろんな意味で)意に介さないドラゴンズ打線の前には無意味。 本拠地に戻り久々に金津園でリフレッシュの貴公子・立浪が先制のタイムリーを放てば、 ゴメスも中押しの二点タイムリー。 投げては古池と違い元先発ローテーションの意地はあまりない今季初先発・前田幸長が、 得意の魔球「見逃せばボールになるナックル」をことごとく空振りさせる快投を見せ、 七回を一失点に抑えヤクルトを粉砕、マジックを“十六”に減らした。 中日恒例の「後半の秘密兵器」が実は前田だっという意外中の意外は、 このところ不調の先発投手陣にも「前田さんで勝てるんだから、俺も大丈夫!」 と自信を持たせる大きな起爆剤となり、 前田自身四年振りの「バレンタインの最多チョコ獲得」のビッグタイトルに向け、 個人タイトル争いも一層ヒート・アップだ。
M16

九月十四日(火) 上原にプロ初完封をプレゼント

●中0−5読○
川上→岸川→正津)

 「去年、うちは今後のチーム作りを考え敢えて優勝を横浜に譲ったわけだが、 その中で川上はよく頑張って新人王を取った。そのときの事を考えると、 どうもここで上原を打ってしまったら、悪いような気がするんだよなぁ〜」。 上原は読売の最後の「希望の星」だ。 夢も未来もないスッカラカンの世捨て人(=読売)の中で、 ただ一つ上原だけがパンドラの箱にたった一つ残された最後の希望なのだ。 それをいとも簡単に打ち砕いてしまうのは、死人を踏みつける人非人の仕事。 聞けばエセ雑草・上原はまだ完封すらしてないという。 「うちの川上が新人王を獲ったときは当然完封試合もあったものだが…。 いくら格下とはいえ、新人王を取ろうという人間が完封ゼロでは情けない。ヘッポコもいいとこだ!」 とつい情にほだされてしまった心優しい竜打線は怒濤の三安打、 「武士の情け」で上原に憧れのプロ入り初完封をプレゼントする気の良さを見せた。
M16

九月十五日(水) ウルフ高橋へお見舞い試合

●中3−10読○
野口→落合→岩瀬→鶴田→正津)

 「ウルフ高橋はどうしたんだ?何、昨日の試合で骨折だと? …フライ一個取るために残り試合を捨てたか。思えば、不憫な子よ」。 昨日の試合で読売三点リードの場面の八回裏、 音の放った空気を切り裂く電光石火の弾丸ライナーを、 ライト高橋がたった一つのアウトを取るために無駄なジャンピング激突キャッチを見せ、 鎖骨骨折で全治一ヶ月という(自業自得の)アクシデント。 そしてこの日の「センター清水・レフト川相」 というあんまりな読売先発オーダーを見たとき、竜ベンチもスタンドも涙が止まらなかった。 「高橋…いつからそういう芸風に…」。 今季絶望となったウルフ高橋が、次に出てくるときは間違いなく(吉村同様)ただのデブになっている事は 容易に予測出来るだけに、 今日の試合は事実上選手生命を絶たれた高橋への「お見舞い試合」として、 勝ちを譲ってあげた何とも心の広い竜戦士達だった。
M16

九月十六日(木) やっぱり山本昌がやる!

○中6−2読●
山本昌→落合→岩瀬→サムソン)

 「ああ、中日に逆らうだなんて天に向かってツバを吐くようなもの! ミラクルだとか叶わぬ夢を見ていた俺達はとんだ道化師だったあ!」 と、読売ファンが目の前の現実に打ちのめされる結果となった、 そんな読売サイドに取ってのみの「自称・天王山」第三戦。 読売先発・ガルベスは二回に四連打を浴びわずか一回三分の一、三十九球で降板、 しげお君はここからベンチにいる投手を数だけつぎ込む物量作戦、得意の「ブリッジ(=橋?)」に出たが、 三番手で出た「さすがにこの齢で連投は辛い」と試合後うち明けたご老体・斎藤雅がゴメスに被弾など二失点、 四番手の毎日投げてる岡島も二失点とブリッジはガラガラと音を立てて崩壊した。
    ♪ Giants bridge is falling down
    ♪ Falling down, falling down,
    ♪ Giants bridge is falling down,
    ♪ My fair Lady.
    (※)
 「どりゃああっ!山崎なんかに頼ってられるかあ!」などと言いはしないが 心の中できっと思っている中日先発・山本昌は、 二回に無死一二塁のピンチで後続を三者連続三振に斬って取ると、 その直後には自ら二点タイムリーを放ち投打に大活躍。 「しゃあああっ!福留なんかに期待出来るかあッ!」とはとても言えないまでも、 頭の隅には必ずあるはずの中継ぎ・岩瀬もタイムリーを放つなど投手陣が大暴れ。 斎藤雅まで出しておきながら失敗した読売は 「に、二勝一敗でよし。よ、よ、予定通りだよ」とふるえる声で虚勢を張るのが精一杯だった。 中日は対読売戦の全日程を終了。

(※マザーグース『ロンドン橋落ちた』より)
M14

九月十七日(金) ゴンちゃんからのお中元

●横6−9中○(ナマ観戦)
(武田→岩瀬→宣→サムソン)

 「ああ、首位をひた走る中日に果たして僕(=川村)ごときのピッチングが通用するのだろうか。 今までは向こうが手を抜いてくれたので何とかなってたけど、 今の中日は本気と書いてリアル。マジとは読ませないぞ。誰が。俺が。 ああ、どうしよう、どうしよう」 とビビる横浜・川村が神経性の下痢で登板回避、 ベイは急遽先発に阿波野をもってくるというメジャーリーグ・ジョークを展開。 この中日元OB・権藤さんの心あたたまる「お中元」に久々に奮起した竜打線は、 「据え膳食わぬは男の恥!」「権藤さんの気持ちを無駄にするな!」 とばかりに阿波野→戸叶→小檜山→渡辺と続く豪華お中元リレーを粉砕、 大量十得点と礼を尽くし、優勝マジックを“十三”で再点灯させた。 昨年のこの時期はイヤんなっちゃうくらいやっつけられた権藤さんのここにきての突然の贈り物に、 一部ファンの間では「中元返しは牛島か」との噂がまことしやかに囁かれている。
M13

九月十八日(土) 駒田の送りバントにゴンちゃん激怒!

●横7−8中○(ナマ観戦)
(前田→鶴田→落合→岩瀬→宣→サムソン→中山)

 「駒田!よけいな事はするな!思い切って振っていけ!」。 中日一点リードで迎えた九回裏横浜の攻撃、 無死一二塁からバッター駒田が「自分で判断した」という送りバントを敢行しようとすると、 横浜ベンチから権藤さんが脱兎の如く飛び出してきて 「バントなんかするな!思い切って振って行け!」と命令したのだ。 そして権藤さんの言葉通りに思い切って振っていった駒田は、 横浜スタジアム三万人の観衆全員の予想通りにファーストゴロゲッツー。 「…ゴ、ゴンちゃん、それはちょっと、あからさま過ぎませんか…?」 「あ、あんたバッティングは選手の自主性に任せるいうてたのに、 それはアカンやろ…」。 今後のベイチーム内での権藤さんの立場を心配した竜ナインはついつい中根にタイムリーを献上、 延長戦に突入してしまう。 「このままではベイナイン及びベイファンが、 権藤さんに不信感をもってしまう! あの権藤さんの九回の怪行動を忘れさせなければ!」。 優勝争いのさなかでもついつい権藤さんの立場を心配してしまう心優しい竜ナインは、 死にかけのベイにトドメを刺さず、延々と試合を引っ張り続ける。 そしてもうみんな疲れ切って駒田の送りバントの事なんかすっかり忘れてしまった十二回、 久慈が「…そろそろいいかな。テヘ☆」とばかりに決勝タイムリーを放ち、 五時間二十六分に及ぶ試合を締めくくったのだった。
M11

九月十九日(日) 日本シリーズへ向け川上順調

○横1−0中●(ナマ観戦)
川上)

 「ウッス!大丈夫ッス!今日は俺一人で投げさしてもらうッス!」。 昨日はからずも「ブリッジ」(翌日の試合の事も考えず思いついた順番で投手を継投する事) を敢行してしまい中継ぎが小笠原しか残っていない中日は、川上に「完投指令」。 無論、男・川上がこの首脳陣の期待に応えない訳がない。 「どりゃあああっ!!」「ぐわわわわわっ!」「ぶりゃりょるられろッ!」 とばかりにベイ打線を相手に五安打一失点と完投、 中継ぎ陣に休息を与えると共に、自身も日本シリーズへ向けて万全の調整を見せつけた。 なお、この日竜打線が横浜・三浦の前に二安打無得点とふるわなかったのは、 来るべき日本シリーズのため、 早く自宅に帰って『知ってるつもり・江夏の二十一球物語』を見たかったからだ。
M11

九月二十一日(火) 野口、完封で十七勝目!

○中8−0広●
野口)

 「せりゃあああああーっ!上腕二頭筋ひねりィーッ!!」。 この試合の見せ場は何と言っても五回裏の無死満塁、 ゴメスのピッチャーゴロを一・二・三のホームゲッツーに取られた直後、 広島一塁手・新井のアウトカウントを間違えて渡したトスを、 電光石火の体の回転で交わした仁村薫ベースコーチの反射神経だった。 薫コーチの稲妻のような「ひねり」に、行き場を失ったボールはファウルグラウンドを転々、 その間に二塁走者・神野が生還し、試合の流れを決めるトドメの三点目を入れた。 薫コーチがよけなくてもルール上はボールデッド+テイクワンベースだったというツッコミはともかくとして、 ホームゲッツーを決められた瞬間にコーチャーズボックスから薫コーチが新井に向かい一体「何を」囁いたのか、 見えないファインプレーがキラリと光った試合だった。
M10

九月二十二日(水) 第三エンジン、点火!

○中12−1広●
山本昌→小笠原)

 「なぁー大野ォー。ワシら何か悪い事でもしたかのぉー。 なんでこげに中日さんからイジメられんとイカンのじゃー?」 「…悪いこと、いっぱいしよったが。忘れちゃったんかい、ミツオ…」。 セリーグで唯一負け越しの決まっている対広島戦に、中日の 「借金取り立て打線」が今日も大爆発だ。 まずは手始めに広島先発・ミンチーを解雇通告が出るほどのメッタ打ちで一回三分の一でKOすると、 五回には抑えのエース・澤崎を引きずり出し一イニング六得点で引導を渡し、 昨年から貸しっぱなしの借金を二十安打十二得点で一括取り立て。 最後には「もう勘弁して下さい〜」と広島は昔のエース・山内を敗戦処理で投入、 中日もこれに応え、「じゃ、今日はこれくらいで勘弁したるかい」と、 九回にはルーキー小笠原を出し礼に応えた。 ここ六試合(実質五試合)で三十八得点、 開幕十一連勝→七月の六連勝に続き、 遂に「第三エンジン」に火が入った中日だが、 今日もナゴヤドームには福岡ダイエーのスコアラーが潜入、 「なるほど、中日は打撃のチームなんだ」と思い込ませる事にもすっかり成功だ。
M9

九月二十三日(木) カズキ、炎のバント失敗!

○中3−1広●
(前田→岩瀬→落合→サムソン→S宣)

 「…カズキ、送りバントなのか?」 「…おい、次は中村だよな…?」 「…失敗して、強打に変更してくんないかな…」 などと失礼な事を考える観客はドーム内に三万九千五百人はいたはずだ (残りの千人は広島ファン)。 無死一二塁でバッターは井上。ベンチのサインは送りバント。 球場全体に「失敗してくれないかな…」というムードが立ちこめる。 そしてその中で、ひと際高い「念」を発信していたのがネクストバッターズサークルの中村だ。 「俺に回すな!」。 中村の気迫は井上のバットに乗り移り、 二球連続のバント失敗を呼び起こす。 中村の気持ちが、そして中日ファンの思いが注入された井上のバットは黒田の四球目を真芯で捉え、 逆転アーチとなってライトスタンドへ飛び込んでいった。 「カズキ!ナイスバント失敗!」。 ダイヤモンドを一周して帰って来た井上を迎えた中村の喜びと安堵の表情が全てを物語る、 選手・ファン皆の気持ちが生んだ奇跡のバント失敗ホームランだった。
M8

九月二十五日(土) カズキ、二試合連続決勝アーチ!

○中3−0神●
川上→岩瀬→落合→サムソン→S宣)

 「おいおい、いくらベンチに戻ってから監督に殴られるおそれがあったからといっても、 あのガッツポーズは地味過ぎだろう」 と、二十三日の逆転スリーランの際のカモメポーズが話題になっていた井上だが、 この試合も決勝となるツーランを放ち、 前回失敗したガッツポーズをやり直しサンドラ用の話題を作れば、 このところ妙に不審な行動の目立つ普段温厚という事になっている山崎が藪のビーンボールに激高、 キャッチャー北川のマスクを弾き飛ばしあわやの乱闘シーンを演じたり、 四番手のサムソンがナゴヤ名物「金のシャチホコ」をイメージさせる鮮やかな金髪で登場するなど各選手 年末の「珍プレー好プレー」のネタ作りにも余念がなく、 優勝決定に向け余裕いっぱいでマジックを“六”とした。


カモメポーズで喜びを表す井上

カモメポーズで喜びを表す井上(二十三日)
いつもより高く上げて喜びを表す井上

いつもより高く上げて喜びを表す井上(二十五日)
M6

九月二十六日(日) 山崎、九回逆転サヨナラ弾!

○中5x−4神●
(武田→サムソン→落合→岩瀬→)

 「ふあ〜あ、俺に任せりゃこんなもんだゼ。 さ、さっさとダイヤモンド一周して家帰ってクソして寝るか!」。 殊勲のサヨナラ弾を打った山崎だが、打った直後にホームベース上で大あくび。 いやいや、無理もない、無理もない。 これから日本一になろうというチームの主砲、 即ち「日本の主砲」たる山崎にとってはこんな九回裏の劇的逆転サヨナラスリーランなど、 「お茶の子サイサイ」「屁のカッパ」「あたりきしゃりきのコンコンチキ」 とでも言ったところ、大騒ぎするほどの事でもないのである。 ここまで「眠り過ぎの主砲」「山崎ダメ弾」「来季の台湾ホームラン王」 と言いたい奴には言わせてきた山崎が前半戦眠っていたのはあくまで日本シリーズを見据えていたから。 その日本シリーズも二十五日に相手はダイエーと決まり、いよいよエンジンのかかった山崎、 まずはネット裏のダイエースコアラーに 「俺は小久保とは違うぜ!」 と挨拶代わりのサヨナラ弾だった。

サヨナラ弾のあとに余裕の大あくびの山崎
サヨナラ弾のあとに余裕の大あくびの山崎

M5

九月二十八日(火) 野口完封!竜六連勝でM3!

●ヤ0−2中○(ナマ観戦)
野口)

 「ポン!」「ポポン!」「ポンポポン!ポン!」。 中日優勝のカウントダウンが始まり盛り上がるナゴヤ上空の花火の音ではない。 先日、九九年ドラゴンズ・クラウン賞の「優秀選手賞」を受賞した 僕らのエース・野口茂樹が(いつもなら夜遊びに消えてしまう)その賞金を「ポン!」と 台湾中部大地震の募金として全額寄付したのだ。 「おお、さすがは野口!腹が出てるのは食い過ぎじゃなく、太っ腹という事か!」 と誰もが感心しきり。 義を重んじ情に厚い心やさしい竜選手、そしてそんな竜選手を応援する 男気では負けていない竜ファンから集まった援助金は この二日間で六百四十万六千四百十三円を数え、 盟友・郭源治を通じ中日新聞社会事業団に渡された。 「源治さん、頑張って下さい!僕たちも頑張ります!」 と気合いの入った野口は、台湾の野球ファンに届けとばかりに気迫のこもったピッチング、 二試合連続完封の十八勝目をあげ、台湾に帰国する郭源治にエールを送ったのだった。
M3

九月二十九日(水) 竜、七連勝で優勝に王手!

●ヤ2−8中○(ナマ観戦)
前田→岩瀬→中山→正津)

 「チョキン、チョキン、チョキン、チョキン」。 竜軍が破竹の七連勝でチョキン(貯金)を“二十八”とした、という喜びの擬音化ではない。 実は本紙「それペナ」取材班はこの日も含め神宮三連戦をナマ観戦したわけだが、 この日、即ち二十九日の試合結果詳細が掲載されている三十日付けスポーツ紙朝刊は、 浮かれ上がってページ更新の事などまるで考えてなかった本紙記者の手により チョキンチョキンと紙吹雪の具となり、 三十日の神宮の空に舞い飛んでしまったのである。 よってこの日の試合結果詳細はなし、 神宮の空に聞いて下さい。
M1

九月三十日(金) すべてはこの日のために

●ヤ4−5中○(ナマ観戦)
(山本昌→岩瀬→落合→サムソン→S宣)

 二年目のジンクスと戦いながら、不調の中も一年間投げぬいた川上。
 投手王国・中日の主軸として今日まで十八勝を挙げたエース・野口。
 ベテランとして若手にプロ意識を叩き込んだ武田。
 ここぞというとき頼りになった投手陣のリーダー・山本昌。
 先発・中継ぎとフル回転、一番苦しい夏場を乗り切った原動力、サムソン。
 五年振りの勝利、涙の復活劇で投手陣に勇気をくれた鶴田。
 気が付けば毎日投げてた岩瀬。
 神通力でチームの勝利に念を送った落合。
 先発の足りないときに貴重な一勝をもたらした前田。
 試合を壊さないよう、(結果はともかく)一生懸命に投げた正津・門倉・中山・古池・島崎・山田洋・ 小山・東瀬・小笠原・大塔・岸川・遠藤。
 一時は引退を決意しながら、一念発起で抑えのエースとして活躍した宣。
 復活に賭け、ダメでもダメでもそれでも這い上がろうと懸命な今中。

 今年も十二球団一の投手陣を引っ張った中村。
 いつの間にかいなくなっていたサムライ・光山。
 出番はなくともベンチから共に声を張り上げ共に戦った鈴木。
 後半は第三の捕手として陰から支えた(んじゃないかな、多分)吉原。

 最後の最後に男を見せた山崎。
 ダメでもダメでも使い続けた監督の我慢と期待に見事応えた福留。
 前半は守備で、後半は打撃でも大活躍した久慈。
 どでかいホームランでファンを魅了したゴメス。
 美味しいとこ取りのスーパーサブ・渡辺。
 若手にパチンコの勝ち方=勝負強さを指導した愛甲。
 早打ちはいけませんよと体を張って教えた種田。
 意外性のあるバッティングでスタンドを沸かせた神野。
 フレッシュオールスター出場、来年に期待を持たせる荒木。
 李・ゴメスに刺激を与える役目をしたリリアーノ。
 えーと、えーと、南渕。

 ハゲが出来ても増殖しても、頑張り続けたJ.LEE。
 ベテランらしいしぶといバッティングの音重鎮。
 四月頃、チョロっと見たような気がする山口。
 五月頃、チョロっと見たような気がする益田。
 いつ上がっていつ落ちたのかよく覚えていない筒井。
 チャンスでの勝負弱さを返上、大事な場面でよく打った井上。
 チームに気迫と勝負根性を叩き込んだ関川。
 いつも元気なムードメーカー・大西。

 そしてすっかり忘れていて後から追加修正された立浪選手会長も。(*1)

みんなの力でつかんだ優勝だ!

優勝おめでとう!

祝・優勝 

(*1)…十月二十日追加。

Dragons at Sep.1999


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