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D's May !

五月前半
_1_2_3_4_5_6 _7_8_9101112 131415
中日





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五月後半
161718 192021222324 252627282930 31
中日
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(○…勝利、●…敗北)

二十七勝十八敗(一位)

五月一日(土) 井上、また満塁で決勝打!

○中6−4読●
(サムソン→落合→岩瀬→S落合)

 「落合・岩瀬が打たれてしまったが、きっとあの男がやってくれるはずや!」。 七回三安打と好投していたサムソンが空振りした勢いで肩を痛めるといったコリアン・ジョークで降板、 スクランブル登板した落合・岩瀬が打ち込まれ同点にされても、 中日ベンチは動じなかった。そう、「あの男」がいるからだ。 そして八回裏、一死一二塁の場面でついにその男は召還された。 「デセンス、デセンス」。 その瞬間、ナゴヤドームの一塁側観客にスタンディング・オベーションが巻き起こる。 「待っていたぞ!デセンス!」。 来日以来一度も継投が成功した事のないデセンスは今日も代わりばな山崎にいきなりのフォアボール、 満塁にしたところで次打者の井上に決勝二点タイムリーと、注文通りの怪投でシーソーゲームに決着をつけた。 試合後、センイチ君は「(岩瀬が打たれたのは)俺の継投ミスや」と素直に反省したが、 片やしげお君は、「柏田は延長に備え温存しておきたかった」 と、もし代えるにしても柏田しかいなかった事実を激白、 中日に取っては約束された勝利だった。

五月二日(日) 読売を二タテ!

○中3−2読●
野口→正津→S宣)

 「なにっ、片山右京がル・マン二十四時間予備予選でトップタイムだと!?」。 月曜の朝、東京中日スポーツの一面トップを見た全国一億二千万のトーチュウ読者は一同に目をまるくした。 だがしかし、しょうがない。 ナゴヤドームでの対読売二連戦、中日が読売を完膚なきまでに叩き潰し二タテを喰らわしたところで、 そんな事はもう「ピーターアーツ、佐竹を秒殺!」だとか「マングース、ヘビに快勝!」と同様、勝って当たり前、 至極当然の事としてニュースにもならないのだ。 さて、試合の方だが、読売はローテを崩しガルベスではなく桑田を持って来るなど 目の前の一勝を死にもの狂いで取りに来たが、 中日先発・野口が塁を埋めては抑える得意のマッチポンプ投球復活、 被安打十、被本塁打二と打ち込まれながらも失点わずか二、 ヘビの生殺しで読売打線を手玉に取り、最後は「三連投でも大丈夫」と物騒な事を言い出した宣が抑え快勝した。

五月三日(月) 休日に大魔人をどうぞ

○横3−1中●
山本昌→古池→前田)

 「ああ、まさか僕らのベイがこんな事になるなんて。でも四月にあせって前売り買っちゃったし、 ヒマだからハマスタにでも行くか」。 外野席への指定席設置・大魔人シーズン席など、 ファンサービスに名を借りた事実上の値上げ策を断行し大魔人への給料を捻出している横浜スタジアムが開幕から一ヶ月後のこの日、 今シーズン初めて満員の観客三万人を集めた。 情に厚い山本昌がこれを見て、 「このお客さんはササキ君を見に来たのだろう。チームは最下位、ササキ君の出番もなしじゃあまりにも可哀相だ」 と思ったのは無理もないこと。 遠い昔に首位争いをしていたかつてのライバルに、今日ばかりは花を持たせる心優しき竜戦士たちだった。

五月五日(水) こどもの日に宣銅烈をどうぞ

●横4−5中○
武田→正津→岩瀬→S宣)

 「ああ、先発が四本もホームランを打たれるなんて!もう負けだ負けだ!ドラゴンズの負けだ!」 などと思うドラゴンズファンなど一人だっていやしない。 先発・武田は横浜打線に計四本のホームランをプレゼントしながらいずれもソロの四失点。 対して中日はランナーを置いてのエンドランが面白いように決まり、 ホームラン無しで横浜から五点を奪い逆転した。 武田の四失点はいわば、 「一試合目はササキ君を出したから、今日は宣さんを出さないといけないな」 といったゴールデンウィークならではの心ニクい演出、 何しろ中日は一試合平均得点が五・一九もあるのだから、 相手にも四点くらい取らせてあげないと宣の出番がなくなってしまうのだ。 中日の試合は韓国でも放映されている事もあり、 わざわざ宣の投げる舞台を用意、日韓友好に一役買うイキなはからいの竜戦士だ。

五月七日(金) 宇部におよぐや鯉のぼり

○広3−1中●
川上→門倉)

 「ああ、この町にまだこどもの日は来ていないのか」。 今日の試合は山口県宇部市。一路宇部入りした中日ナインに、驚愕の光景が広がった。 町を見渡せば家々に、高々と鯉のぼりが飾られているのだ。 こどもの日は五月五日。一般に 「三月三日を過ぎても雛壇を出しっぱなしにしていると、その家の娘は行き遅れる」 と言うが、五月五日を過ぎても鯉のぼりを下げないような家の男の子もまた、 お先真っ暗な将来が待っていることだろう。 だがしかし、それでも宇部市民は最下位カープを元気付けるため、 鯉のぼりを上げてカープナインを待っていたのだ。 「カープのためなら、子供の将来まで犠牲にしてもかまわない!」 といった宇部市民の心意気に、何も感じない竜戦士たちではない。 先発・川上が宇部のチビッコに届けとばかりに広島に三点をプレゼント、 打線も、鯉のぼりの意味がよく分からない李が間違ってホームランを打ってしまっただけの一得点で広島の勝利に全面協力、 宇部の町に一日遅れの「こどもの日」を持たらした。

五月八日(土) 佐々岡、ノーヒットノーラン!

○広3−0中●
サムソン)

 「ここで久慈を出せばノーヒットは阻止してくれるやろ。 でもですね、一つ一つの試合には目的というものがあるのですよ。 今日の試合の目的は『佐々岡のノーヒットノーランを阻止する事』じゃない。 記録なんて些細な事や。ここでノーヒットを阻止する事が果たしてチームのためになるかと言ったら、ならん。 渡辺・神野の控え組がこういう場面でどんなバッティングをするか、 そして結果がダメでも、赤っ恥かいて悔しくて眠れなくて、そうやって選手は成長して行くんや」 とのセンイチの親心がニクらしい。 中日打線は広島・佐々岡に「明日につながる屈辱のノーヒットノーラン」を甘んじて受けた。

五月九日(日) 山崎三連発!強竜復活の十四得点!

●広1−14中○
野口→正津→前田→中山)

 「サイヤ人は生命にかかわるほどの危機を一度乗り越えると、数倍のパワーに変身・成長するという」。 そんな何処かの国の伝説がまざまざと脳裏をよぎる。 前日の広島戦で佐々岡にノーヒットノーランを食らい瀕死の重傷を負った竜打線が、 まさに死地を乗り越えたサイヤ人のごとく、数段のパワーアップをして復活したのだ。 ガキーン!グワラガキーン!グァラガキャドゴーン!! 山崎の三打席連続ホームランが市民球場の外野スタンドに突き刺さる。 カキーン!クカカキーンン!! 若竜・渡辺も二安打と、昨日の試合で試練の代打で凡退した事による成長のあとがくっきり。 生まれ変わった「スーパー・新・強竜打線」は十五安打十四得点の猛攻で、 勢いのつきかけた広島をケチョンケチョンにのしてしまった。

五月十一日(火) 浜松ブルース

●中3−7横○
山本昌→門倉→古池)

 「浜松市民球場は何かとファンの乱入の多い球場。 あまりトラブルが多いようだと今後の浜松での試合を考えなくてはいけないし、 多くのお客さんに迷惑がかかる。ファンの乱入を阻止するためにはどうしたものか」 と、考えに考えた結論がこれだ。 山本昌→門倉と続くリレーは二人で計十六安打のメッタ打ち、 守ってはゴメス・福留はもちろん関川・井上までがポロポロとお寒いエラーを連発、 強竜打線もすっかり息をひそめ凡打・凡打・併殺打。 開始時一万五千人いたお客さんは乱入する気も起きずゾロゾロと席を立ち、 試合終了時には犬とカラスしかいなくなっていた。

五月十二日(水) 日本一への試練

●中2−3横○
武田→落合)

 「昨年に比べ、選手は肉体的にも精神的にも強くなった。 だが、ファンの皆さんはどうだろう?」。 九回に井上がササキから三塁打を打ちながら神野のスクイズ失敗、 これは昨年のペナントレース終盤、「横浜を追いつめながら最後に七連敗し終了」の比喩である。 ここで「よくあそこまで追いつめた!この次は頑張れ!」と明日の勝利を信じて声援をおくるか、 「ああ、何やってるんだ!ダメだダメだ!」と負け犬がキャンキャン吠えるように監督・選手を罵倒するか。 中日が日本一になる九月までに、 ファンも日本一であるべく、 敢えて試練を与える対横浜二連敗だった。

五月十三日(木) そして再び目覚める強竜

○中11−2横●
川上→正津→前田)

 「夢を夢で終わらせて申し訳ありませんでした!」、 そんな懐かしい言葉が不意に脳裏をよぎる。 ここ二戦、竜ナインが「ファンに釘を刺す」意味で 試練の二連敗を見せた事で、 何を誤解してしまったのか横浜・権藤監督が 「ここまで来たら三つ獲りたい」などと壮大な夢をブチ上げたのだ。 そんな事を言われてしまって引き下がる竜ナインではない。 「誤解は解いておく必要がある、権藤さんのためにも」。 再び目覚めた「スーパー・新・強竜打線」は三浦・横山・河原・西と出てくるピッチャー出てくるピッチャーを 全てバキベキバコスコのケッチョンケッチョンに打ちのめし、先発全員安打の十五安打十一得点で圧勝、 権藤監督の夢を夢で終わらせた。

五月十四日(金) ノムさんへの友情、大豊への友情

○神5x−4中●
(サムソン→古池→落合)

 「ほほう、ようやくノムさんも分かってくれたようやな」。 前回の三連戦前は「中日包囲網や!三タテするで!」と暴言を放ちセンイチ君にシメられた野村阪神だが、今回は 「うちが勝ち越せばセリーグはダンゴになって面白いやろ。せめて二勝一敗したいな」 と、ノムさんにしては珍しい極めて謙虚な低姿勢。 「そこまで下手に出られては本気を出すのも可哀相」 とばかりに今日は阪神先発・吉田豊彦の前に凡打の山をプレゼントした竜打線だったが、 「むむっ、でもどうしてノムさんは大豊さんを出さないんだ?」 と皆が気付いたのは九回ツーアウトになってから。 「ようし、四点差だが、大豊さんを出す展開にするか」 と、友情に厚い竜ナインが軽く奮起をしたところ、 完封目前の吉田豊彦・抑えの切り札リベラ共にたちまちの内にメッタ打ち、 四点差をあっという間に追いついて、阪神に九回裏を準備立てた。 そして九回裏はお約束の「大豊サヨナラ弾プレゼント」、 阪神ではなかなかチャンスをもらえない大豊へ、落合の今季二度目の涙の棒球だった。

五月十五日(土) ヒートアップ!首位攻防戦!

●神6−9中○
野口→正津→岩瀬→S宣)

 「やや、思わず川尻を二回KOしてしまった。これではせっかくの週末、 甲子園まで足を運んでくれた五万三千人のお客さんに申し訳ないな」 と思うのは心優しい竜ナインなら当然の事。 五回表終了時で六点もリードしてしまっては 「中日は首位攻防戦に水を差す気か!」と阪神ファンに怒られてしまう。 「何としても首位攻防戦を盛り上げなければ!」 と考えるのも無理はない心配性の李・ゴメス・山崎が一方的な試合を接戦にもちこむ巧みなエラーで一時は一点差に。 球場のボルテージが最高潮に達したところで、 「さ、もういいでしょう」と水戸黄門が印籠を出すように九回、 新・代打の切り札渡辺が二点タイムリーを放ち、虎の息の根を止めた。

五月十六日(日) サムライ・光山がトレードに!

○神7−5中●
(山本昌→中山→岩瀬→落合→前田)

 「ええ!光山さんがトレードに!?」「何ですって!光山さんがトレードに!?」 「そんな馬鹿な!光山さんがトレードに!?」。 サムライ・光山の読売への驚愕トレードを試合前に聞かされた竜ナインが衝撃を受ける。 ショックを受けた山本昌は五回を四失点と乱調、 井上・山崎のバットはことごとく空を切り、ゴメスはエラーし、落合は打たれる。 攻守ともに集中力を欠いた竜軍は序盤の四点リードを守れず、阪神に手痛い逆転負けを喫してしまった。 チームメートのトレードなどでプレーに集中力を欠くとはプロとして全く失格だが、 心優しく友情に厚い竜ナインらしい、人間味あふれる敗戦だった。 アディオス、サムライ。

五月十八日(火) 虎猛追!一・五差!

○横3−2中●
門倉→正津→前田→中山)

 「五月に好調のチームは夏に失速する」 という例年広島カープにイヤというほど見せつけられたジンクス対策とはいえ、 負け続けるのもつらい事だ。だが、この作戦のための四月貯金だったのだから全ては計算尽く。 中日は序盤に山崎・福留の連係ミスから二点を失い、 それを敢えて逆転せず負け試合にしたのは、このところ不調の両選手にハッパをかけようという親心。 「ああ、ボクのせいで負けてしまった!もっともっと守備練習しなければ!」 「あのプレーはまずかったな。俺はそれをバットで取り戻さなければいけない!ようし、帰って素振り一万回だ!」 と福留・山崎のハートに火がつけられる。 こうして竜軍が選手を育てながら巧みに負け試合を演出している中、阪神は今日も広島をくだしついにゲーム差を一・五に猛追してきた。 「五月に好調のチームは夏に失速する」。 虎は走らせるだけ走らせておいて、やがてバターになるという算段だ。

五月二十日(木) リニューアル古池、二年振り勝利投手!

●横3−7中○
(川上→古池→前田→正津→岩瀬→落合)

 「ややや?阪神が二十一日にも首位に並ぶだと?おいおい新聞、計算間違ってるんじゃないか?」 と、二十日付けのスポーツ新聞朝刊を読んだ全国一億二千万のドラゴンズファンが目を丸くした。 そりゃそうだ。十九日終了時点で首位中日と二位阪神のゲーム差は一・〇。 という事は、二十日は阪神は試合がない訳だから、二十一日朝には一・五差になってるはずで 「二十一日にも首位に並ぶ」わけがないからだ。 さて、試合の方は開始早々、一回三分の〇で先発・川上が佐伯に殺人ライナーを食らって早々と降板したものの、 その後を継いだ生まれ変わったリニューアル古池が素晴らしいピッチングを披露、 スクランブル登板にも関わらず四イニングを一安打に押さえる快投を見せた。 竜打線もこれに応え古池を援護、実に二年振りの勝利をモノにした古池は、 ヒーローインタビューで「僕にも元ローテの意地がありますから」と、 中日ファンの誰もが忘れようとしていたあの二年前の悪夢を思い起こされるシベリアン・ジョークを炸裂、 三番手で投げて一死も取れず降板した同じく元ローテの前田に挑戦状を叩きつけていた。

五月二十一日(金) 首位決戦を見据え、余裕の敗戦

●中1−3ヤ○
サムソン)

 「久しぶりに甲子園が盛り上がってるし、中日としては久慈・関川をだまし取った恩義もある。 もう少し阪神ファンにはいい思いをさせてあげたい」。 そんなドラナインの優しい思いがバットを湿らせる。 「うちがヤクルトに勝ってしまえば阪神との差は二・五に広がる。 それどころか、うちが三連勝して阪神が読売に三連敗でもしようものならゲーム差は四・五だ。 これでは来週アタマから始まる中日−阪神の首位決戦も、さぞや興ざめしてしまう事だろう」。 北陸シリーズを楽しみにしているお客さんのためにもこれ以上阪神とのゲーム差を拡げないよう、 甲子園の阪神−読売戦を気にしながら八回まで一対一の同点で様子見、 阪神敗色濃厚という途中経過を確認したところで、 「ようし、つき合ってやるか」とばかりの男気あふれる失投で、 敗戦投手の役を買って出たサムソンだった。

五月二十二日(土) ゴメス、サヨナラ弾!

○中3x−2ヤ●
(武田→岩瀬)

 「このカードのテーマは、阪神との差を無理に拡げようとせず、翌週の天王山対決を盛り上げることだ」。 中日ナインもそのファンも、「自分さえよければそれでいいんだ、俺が俺が俺が〜」などといった身勝手な人間ではない。 あくまでセ・リーグを盛り上げようとする竜戦士は、 甲子園の途中経過を気にしながら今日も八回まで二対二の同点で我慢に我慢。 そして九回裏、二死までいったところで、 ナゴヤドームの大型モニタが「阪神一点勝ち越し!」のニュースを伝えた。 「さ、もういいでしょう」。 今夜の水戸黄門の印籠はゴメス。 ヤクルト川崎の投げたスライダーを「もう遠慮はナッシング!」とばかりにグアラガキゴキドッカーン! とレフトスタンドに叩き込み、劇的なサヨナラ勝ちを演出した。

五月二十三日(日) 北陸決戦へ向け、準備万端

●中2−3ヤ○
野口→正津→中山)

 「やはり天王山というからには一・五差じゃダメだ。 〇・五差の方が『勝ち越した方がトップ』となり、さぞや盛り上がろうというもの」 と、あくまで竜ナインの目は来週の北陸シリーズを見据えている。 思えば四月は中日が九連勝しても十連勝しても十一連勝しても、決してスポーツニュースのトップになる事はなかった。 中日ファン以外は全く盛り上がってないセリーグを見て、日本プロ野球界の明日を思う竜ナインが 「このまま独走してしまっては、他球団ファンに申し訳ない。 興行的にも赤字で、球団経営のおぼつかないチームが出るかも知れない」 と心配した結果が五月の成績となっているわけだが、 ようやく虎が上がってきてくれた。 「一強五弱」から「二強四弱」へのシナリオ。 待っていた甲斐があったというものだ。 竜虎頂上対決をヒートアップさせるための過剰なまでの演出でヤクルト戦を負け越し、 これで北陸シリーズは平日にも関わらず三日連続超満員、 月曜日には各マスコミ・テレビ局の取材殺到という青写真を描いたドラゴンズだった。

五月二十五日(火) 首位攻防・北陸編その一

○中2x−1神●
(山本昌→正津→岩瀬)

 「阪神ファンをやっててよかった…。生きてるうちに首位攻防戦をナマで見られるなんて…うう(感涙)」 と、福井の阪神ファンも大満足だ。中日のホームゲームではあるものの、実はこの地・福井は阪神ファンが多い。 これだけ喜んでもらえれば、 わざわざ〇・五ゲーム差に詰め寄らせた甲斐があったというものだ。 藪vs山本昌の息詰まる投手戦で始まり、新庄のファインプレー&タイムリーも飛び出し地元ファンは大喜び。 試合はいつものように一対一の同点のまま九回裏へ進んだ。 そして一死満塁でバッター中村タケシの場面、センイチ君は中村にそっと耳打ちした。 「さ、もういいでしょう」。 エンディングを知らせる水戸黄門の印籠・中村タケシのバットが火を吹く。 六年振りの首位という大きな夢をもってやってきた好調・阪神だったが、 人生楽ありゃ苦もあるさ、と優しく教えるレフト前サヨナラヒットだった。

五月二十六日(水) 首位攻防・北陸編その二

●中1−5神○
川上→門倉→前田)

 「よく見とけ!地方に来たからって遊んでばかりいると、翌日の試合はキツいんだぞ!」 との立浪選手会長の叫びが聞こえて来そうだ。 将来の幹部候補生として若手選手の教育も怠らない立浪は、 「名手」の意味を思わず辞書で引いてしまいそうな信じられないエラーを連発。 「遊んでばかりいると、俺のような名手でもこういうミスをする」 という事を、体を張って若い連中に見せつけた。 自らヨゴレ役を買って出た立浪の姿勢を意気に感じたか、 他のヴェテラン選手陣も「いいか、エラーの出た試合は負けるんだぞ」 と言わんばかりの凡打の山。「地方遠征でハメを外してはいけませんよ」 という心構えを、一試合捨ててまで遊び盛りの若手に教えこんだ北陸シリーズ・第二戦だった。

五月二十七日(木) 首位攻防・北陸編その三

○中7−6神●
サムソン→落合→岩瀬→正津→前田→S宣)

 「どうだ!試合前日の夜遊びは厳禁だという意味がこれで分かっただろう!」 と立浪選手会長の心の叫びが今夜も北陸の夜空にこだまする。 前日の試合では体を張って 「地方遠征でハメを外してはいけませんよ」 という事を若手に教え込んだ立浪は、 三回一死満塁の場面で炎の三点タイムリーを放ち、 昨夜遊びに行くのを我慢したその効果をバットで見せつけた。 本来なら地元の音・正津らに北陸のネオンなど案内して欲しかった竜戦士も昨夜は自粛、 睡眠たっぷりでリフレッシュし、山崎ツーラン、関川タイムリーと強竜打線大爆発で大量七点を奪い、 終盤は一点差に詰め寄られる余裕など見せながら首位攻防三連戦を二勝一敗と予定通り勝ち越し。 無論明日は移動日という事で、 上機嫌で(立浪に率いられ)富山のネオンへと消えていった。

五月二十九日(土) 北陸疲れでひと休み

○ヤ1−0中●
武田→落合))

 「皆さん、北陸の(夜の)疲れが出たんでしょう」 とセンイチ君が言うように、 北陸シリ−ズを勝ち越し富山のネオンに消えた選手たちが腰の引けたバッティングで凡打の山を築き、 気がつけば川崎なんぞに完封されている痛いゲーム内容であったが、なあに、心配は無用だ。 立浪もただ遊んでいたわけではない。 同じ日、阪神の坪井・今岡がまるで 悪い先輩に地方遠征で夜遊びに引っ張り回されでもしたかのような腰に疲れの見えるバッティングで 凡退を繰り返しているところを見れば、 立浪の「悪魔の牙」は虎の中枢にガッチリと食い込んでおり、 「虎は死して皮を残し、PLの先輩は地方で後輩に疲れを残す」のシナリオは全て計算尽く、 二位とのゲーム差はそのままで、ちょっとしたひと休みといったところだ。

五月三十日(日) 野口、完投で五勝目!

●ヤ1−6中○
野口)

 「あんまり独走してしまっては他の五球団のファンに申し訳ない、 五月はトントンでいいだろう」 といった当初の計算通り、五月は十一勝十二敗と上手に負け越し、 セの阪神フィーバーを演出したドラゴンズの六月攻勢がいよいよ始まる。 計二十二泊に及んだロード最終日は、投げては野口が一失点完投、 打っては山崎がツーランホームランなど三打点の活躍で予定通りの勝利を収めた。 お立ち台では山崎から、「オレが打たなきゃ、負けるんだから」 と、陽気なジョークが飛び出すほどで、 この日三打数三安打の固め打ちで打率も一気に打撃三十傑の二十七位に浮上し、 「六月はオレの月だ」といった面白い冗談で周囲を笑わせるほどチーム状態は上々、 六月ぶっちぎりに向け、臨戦態勢が出来上がった。

Dragons at May.1999


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