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マイレージ、マイライフ


オフに中日の戦力外選手を決める会議があって、 高木監督が報道陣に

「オレは何も言えんよ。ファームの選手をどうするか、という話。 ファームの選手は見とらんから。 井手担当と孝政(二軍監督)が話をしていたんだけど」

って言ったんですね。 これってどういう事ですか?
「誰をクビにするか、俺は知らん!」 ってことですよ!
誰をクビにするか監督は一切知らない、関与しなてない、 他人に任せてるってことですよ!
ええええええ? 高木監督ってボスですよ! ボス! ボスボォ〜ス! ボス!? それはないでしょ! ボス!(忌野清志郎の声真似で)

選手の生殺与奪(なまごろしよだつ)(ちがいます)は、一軍監督が握っています。 監督が一軍と二軍の入れ替えを決め、監督が試合でどう使うかを決める。 能力があっても監督が使わなければ選手は腐るし、 今ひとつの選手でも監督が辛抱して使うことでレギュラーに成長する選手もいます。 選手を生かすも殺すも監督次第、 監督は、支配下選手六十数名の命綱を握っているのです。
それが、「ファームの選手は見とらんから」!

ああ! あまりに冷たい! オホーツクの氷よりも! 液体窒素よりも! マイナス二百七十四度の高木監督の血液に電流を流せば 超電導で永久エネルギーが完成するでしょう! (ノーベル賞ものですよ!)(おめでとう!)
自分は知らない、関係ない。 誰かがクビになるらしいが、それは自分の知らないところで起きてること。 わたくしはまったく関与してません! ボス!あんたの下で!ボス!おいら働いてるんだぜ朝から晩まで! (ここも忌野清志郎の声真似でお願いします)

ま、でも監督の立場からすればその方が心は痛まないですからね。 しょうがないですよ。
なにせ他人の人生、その家族の運命まで揺るがす大きな決断です。 戦力外通告というのは、野球しか能のない人間を裸で世間に放り出すわけですから、 犯罪者になる人もいるかも知れないし、 世を儚み人生を強制終了する人だっているかもしれません。 そんなとき、監督が逆恨みで刺されたり、枕元に化けて出られても面倒ですからね。 他人の人生を左右する決断は自分ではやりたくない! イヤな仕事は他人にさせよう! さあ、これで今夜もグッスリ眠れるぞ!

『マイレージ・マイライフ』はそういった「ボスの代わりに解雇通告をする職業」の ジョージ・クルーニーが、あちこちの会社で従業員に解雇通告をする物語です。 (アメリカにはそういう職業があるんですね!)

不景気等で従業員をクビにするとき、知り合いだと泣かれたり暴れられたり面倒なので、 ボスは解雇する人と全く顔を合わせずに、 まったく関係ない第三者から解雇通告させるのです。

従業員はある日突然やって来た見知らぬジョージ・クルー二―に会議室に呼ばれ、 一枚の紙を渡されて、 「あなたは本日をもってこの会社を解雇されました。 希望すれば再就職の斡旋会社を紹介します。 詳細は追って弁護士から書類が送られるのでそれを読んでください。 それでは段ボールに私物を詰めて、 会社が貸与したものをすべて返却し、すぐに建物から出ていってください」 と告げられるのです。
OH!テリブル・アメリカ! 使っていたパソコンでこっそりダウンロードしたエロ画像を処分する間もなく退場ですよ! (そっちか!)(そっちです!)

ま、アメリカってのはそういう国なんですよ。 (エロ画像をおちおち保存も出来ない国、って意味じゃありませんよ) (いやそういう意味も少しあります) (待て、エロ画像の保存は日本の企業でもダメだと思うぞ)
アメリカの企業では契約上いつでも従業員を解雇できる。 そしてその解雇通告は会社から雇われた全く関係のない第三者によって行われるのです。 日本のプロ野球選手会はよく「メジャーでは当たり前」「メジャーではとっくにやってる」 とメジャーの悪いところばっかり真似しようとしますが、 アメリカの代理人制度はジョージ・クルーニーのような職業の人がいる国だから成立するんですよ! これは日本には無い文化です!

日本のセントラル・リーガーやパシフィック・リーガーは、 ちょっとお金を稼ぐようになるとすぐに代理人を雇って、 フロントとフェイス・トゥー・フェイスをせずに他人任せで契約更改をしたがります。 でも、直接顔も合わせないで「誠意」とか求める方がおかしいですよ。 代理人を使うのは「顔も見たくない」って態度のあらわれですからね。 そんな状況で球団と選手の間に信頼関係なんか生まれるわけがありません。 そしてそれを放棄してるのは、選手の側なんです。

契約更改交渉で代理人なんか使う選手には、 球団側も代理人を用意して代理人同士で交渉させればいいんですよ! メジャーでは当たり前」「メジャーではとっくにやってる」 って言って!
「年俸はこれだけ、絶対譲るな」 ってやれば選手側の代理人が幾ら駆け引きしても金額は上がりも下がりもしないから、 話し合うことなんて何もないから交渉なんて一分で終わりです。 NPBからスピードアップ貢献賞もらえますよ。 (スピードアップ賞といえば今年は西武の涌井選手に受賞してほしいですね!) (なんせ五分ですよ!五分!)

というわけで、日本はアメリカ人のドライなところばっか真似して、 代理人を使って顔も見ないで交渉してるくせに、 交渉がもつれると「誠意」とか言い出す都合のいい連中ばっかでふざけんな! って話でした!(本当かよ!)(思いつきで書いてるだろ!)(思いつきで書いてますよ!)

(2012.11.20)

原題Up in the Air
邦題マイレージ、マイライフ
公開/製作2009年/アメリカ
出演 ジョージ・クルーニー(ライアン)、ヴェラ・ファーミガ(アレックス)、ナタリー・キーナー(アナ)
監督ジェイソン・ライトマン

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