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猿の惑星


サルが幅を利かせた世界!
そこでは人間は、いや、元人間だった者たちは、自分で考えることを止め、 何の疑問も持たず、自分の意思を持たず、 ただサルの言うがままに奴隷として従っている!

一九九〇年代も終わりの頃ですかね。関東のある球場で、 名前は言いませんが中日のその頃とても調子の悪かった選手がバッターボックスに入ると、 応援団が「はったらっけ・はったらっけ・やっまさき!」 とコールをしたんですね。
味方をバッシングするコール。それを応援団がやっているのです。 そしてそれを受けて(情けないことに)関東の外野スタンドのお客さんは一斉に 「はったらっけ!はったらっけ!やまさき!」と大合唱するんですよ。 昔のことだし、本人の名誉のこともありますからその選手の名前は伏せますが!

するとスタンドにいたその選手の熱狂的ファンの女の子が (僕が「女の子」と言った場合だいたい三十六歳くらいまでを指しますが、 ここで出てくる「女の子」は二十歳そこそこのお嬢さんです!) (誰に配慮している!?>俺)、 応援団のところまで行って 「そういう応援はよくないと思います! ダメなときほど一所懸命応援しませんか?」 と言って泣いたんですよ!
応援団がファンの女の子を泣かしたのです! 選手の悪口を合唱するようファンを煽動した上に、女の子を泣かしたのです!

ファンの仕事は応援することです。そんな当たり前のことも忘れて、 ファンの女の子を泣かせて、何をやってるんでしょうか中日ファンは! そんな応援、やってて楽しいですか!?

それから一か月ほど経った頃には、「はたらけコール」は関東ではもう聞かれなくなりました。 応援団の知り合いの親戚の友達のまたいとこに聞いた話によると、 「ファンに不評だった」 「応援団は応援するのが仕事、選手を貶めるより、一所懸命応援しよう」 と幹部会議で決めたのだそうです。
「はたらけコール」って選手にもファンにも不愉快なもので、 自分の鬱憤晴らしになるかもは知れないけれど、それは「応援」ではないですからね。 (個人で野次るのは自由、でも応援団が扇動するものではないと思います)

あれから十年以上の月日が流れました。

球場で応援する人も移り変わりました。

いま、関東の球場に足を運ぶと、 「はったらっけ・はったらっけ・もりの!」「はったらっけ・はったらっけ・やっまさき!」 などのコールが普通にされています。
応援を仕切っているのは、 あの頃「選手を貶めるより、一所懸命応援しよう」と襟を正していた関東の応援団ではなく、 別の団体、 あるいは応援団以外のグループでした。

『猿の惑星』はそんな話です。

(2013.01.19)

原題Planet of the Apes
邦題猿の惑星
公開/製作1968年/アメリカ
出演 チャールトン・ヘストン(テイラー)、ロディ・マクドウォール(コーネリアス)、キム・ハンター(ジーラ)
監督フランクリン・J・シャフナー

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