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未来を写した子供たち


皆さん、将来の夢は何ですか!(僕は少女漫画家になろうと思ってます!)

子供の頃は何者でもなく、将来何になろうか、 何にでもなれると思っているものです。 プロ野球選手、サッカー選手、パイロット、ロック・ミュージシャン、アイドル歌手、 ネカチモ、世界の支配者、ドアラ。

大人になるとある程度の制限は出来ますが (たとえば二十歳過ぎたらもう「人気子役」にはなれません!)、 それでも熱い情熱があれば新しい夢を追いかけることは出来ます!
自分に何が出来るか、何になるのか、 ワクワクしながら時は進んで行くのです!

で、そういうのが全くないのが 『未来を写した子供たち』 なわけですが! (ええっ、そんな前向きなタイトルなのに!?)


☆   ☆   ☆   ☆


これはドキュメンタリー映画で、現実の世界、現在進行形の実話で、 イギリス人監督が撮影したインドの貧民街の売春窟に育つ子供たちのルポルタージュなんですね (原題は『BORN INTO BROTHELS: CALCUTTA'S RED LIGHT KIDS』=「売春窟に生まれて」です)。

子供たちはみな十歳前後なんですが(まあ二十過ぎたら「子供たち」とは言いませんけれども!)、 母親はスプリング・セールス・レディで(だから英語にすればいいってもんじゃない!)、 父親はいないか、いてもラリ中かアル中で廃人同様です。

女の子たちは母親を買いに来る客に 「お前はいつから客を取るんだ?」と聞かれ、 「そのうちね」と笑顔で答えます。 かぐや姫のお迎えが来たら母親と同じ商売をすることが決まっているのです。

男の子たちはリクエストがあれば客の相手をします。 そういう環境で育ち、そう生きるしかないのです。

子供から大人への成長期というワクワクする時間の流れは、 彼女たちにとっては 「レッド・ライスが食卓に出たらスプリング・セールス・レディとして就職」 というカウントダウンであり、 大人になってからは、 「年齢を重ねるにつれセールスの売り上げが減り、自分の娘にセールスを始めさせる」 というカウントダウンに変わるのです。

将来、何になるかは生まれたときから決まっていて、 いつか出来る子供の未来も既に決まっているのです。 (インドはカースト制度の国なので、 下層階級の家に生まれたら「一発当てる」ことも出来ません) (生まれたときスプリング・セールス・レディの家の子なら、 死ぬまでスプリング・セールス・レディなのです!)

カメラを向けられた子供たちはみな笑顔で、明るくて、楽しそうです。 彼らは自分が不幸だとは思ってないのかも知れません。 幸福か不幸かというのは相対的なものだから。


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「東京を世界一の都市に!」がスローガンの街に住む僕たちは、 「最低だ!」「最悪だ!」「明日が見えない」 なんて言葉を簡単に口にします。

「ドラゴンズが負けた!最悪だ!」
「ドラゴンズの監督が高木守道になった!最悪だ!」
「ソフバンがFAで中田賢一を引き抜いた!最悪だ!」
「今日の小牧のオープン戦は雨で中止か!最悪だ!」

ええと、何だかレベルの低い例を出してしまいましたが! (自分にとって「最悪な状況」を考えたらこんなのしか思い浮かびませんでした!)

しかし、どれだけ最悪な状況になっても、 学費未納で大学を除籍になっても、 家賃滞納でアパートを追い出されても、 父親がフィリピン女に入れ込んで借金作って失踪しても、 ネットカフェ暮らしになっても、 可愛いチャンネーに逆ナンされてついていったらホストクラブで二十万請求されても、 ヤクザに追われて地方に逃げて日雇い住み込みの現場労働者になっても、 一文無しになってホームレスになって多摩川べりで暮らすことになっても、 インドのこの子たちに比べれば、まだマシだと思えるのです。

やること為すことすべて上手くいかないとしても、 何もかも失ったとしても、 どんな状況になっても、夢を見ることは出来るのだから。何にでもなれる未来があるのだから。

(2014.03.05)


原題BORN INTO BROTHELS: CALCUTTA'S RED LIGHT KIDS
邦題未来を写した子供たち
公開/製作2004年イギリス
出演 ザナ・ブリスキ、ロス・カウフマン、インドの子供たち(ドキュメンタリー)
監督ザナ・ブリスキ
ロス・カウフマン

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