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フランケンシュタインの花嫁


映画『フランケンシュタインの花嫁』で印象的なシーンがあります!

村人に追われ逃亡するモンちゃんが (あ、モンちゃんっていうのは『フランケンシュタイン』に出てくる人造人間の事です) (名前はついてないんですが、映画のクレジットでは「モンスター」って表記されてるので 「モンちゃん」と呼ぶ事にしました!)、 山の中の一軒家に迷い込みます。

そこには白髪のおじいさんが独りで住んでいて、 モンちゃんを見ると「おや、お客さんかい?」 とあたたかく家に迎え入れてくれるのです!
おそろしい風貌のモンちゃんを怖がりもせず、バイオリンを弾いて聴かせたり、 一緒に食事をしたり、 言葉を教えてくれるのです!

それまでモンちゃんが出会った人間は、モンちゃんを見ると「キャー!」と叫んで逃げるか、 「コロセ―!」と武器を持って襲ってくる人ばかりでした。
モンちゃんは生まれて初めて他人に優しくされて、 生まれて初めて「楽しい時間」を過ごせたのです! 生まれて初めて「安らぎ」をもらったのです!


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で、何故おじいさんがモンちゃんにそんなに優しかったかというと、 実はおじいさんは全盲だったんですね!

全盲だったからモンちゃんがおそろしい風貌をしてることを知らなかったのです! 山の中の独り暮らしで外部との交流を断ってるから、 モンちゃんが村人に追われてる指名手配犯だということを知らなかったのです!

人はなまじものが見えるから偏見が生まれる、知識があるから差別をするのだ、 という社会派なメッセージをこの映画は突きつけてくるわけですが!

でも、僕は思ったのです。

「おじいさんは、本当は見えていたのではないだろうか?」


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まずおじいさん、山小屋で一人暮らしみたいですが、 どうやって生活してたんでしょう? 山の中の一軒家で、家族や近所の人もいないんですよ! (町には人がいっぱいいるのに、 わざわざ人里離れて山の中に住むなんて不自然です!)

その上、焚き火をしたり、煙草をプカプカ吸ったり、 おいおい! 全盲なのに火の扱い大丈夫なのかよ! 火の始末とかどうやってするんだよ!

おじいさんはゼンゼンミエナイ・マンを装ってはいましたが、 本当はチョットミエテタ・マンだったんじゃないでしょうか! (待て!それは英語じゃない!)

おじいさんはモンちゃんを見たとき、 「げっ!怪物だ!」と一瞬思いましたが、 ここで驚いてしまっては「見えてる」ことがバレてしまう! そこで見えてない演技でその場をしのいだのです!

このおじいさん、普段から全盲のふりをして、 村役場から障害者手帳をもらって税金の優遇を受けたり、 「盲目のバイオリン弾き」 を売りに音楽会を開いたりして、それで生計を立ててたんじゃないでしょうか! だから山小屋にひとり暮らしなんじゃないでしょうか! (「本当は見えてる」ことがバレないように!)


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「このじじい、障害者のふりをするなんて最低だな!」

と僕も一瞬思ったんですが、よくよく考えてみると、 おじいさんの全盲演技は、結果としてモンちゃんの心を解かし、人間性に目覚めさせ、 楽しさと安らぎを教えたのです!
モンちゃんに生きる希望を与えたのです!

たとえそれが虚像だとしても、バレないウソはときに人を幸せにする、 そんなことを感じる先週の記者会見でした! (記者会見?) (バレなかったらみんな感動したままでいられた、 同じような障害の人に勇気を与え続けられたのにね) (真実が見えない方がいいことだってあるのです!)

(2014.03.10)


原題Bride of Frankenstein
邦題フランケンシュタインの花嫁
公開/製作1935年アメリカ
出演 ボリス・カーロフ(モンスター)、コリン・クライヴ(フランケンシュタイン博士)、エルザ・ランチェスター(花嫁)、 アーネスト・セジガー(プレトリアス博士)、O・P・ヘギー(老人)
監督ジェイムズ・ホエール

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