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アイ・アム・レジェンド


ハリウッドでは大きな力の前にエンディングすら捻じ曲げなくちゃいけない!
たとえそれでテーマが台無しになっても!
カネのためなら信じる道を曲げて媚びへつらえ!
信念よりテーマより、カネなんだよカネ! スポンサー様のご意向には逆らえねえ!
そんな監督の投げやりなメッセージがつまった映画、それが『アイ・アム・レジェンド』です。

ま、そういう事ってありますよね。 自信を持って作ったものが物の分からない上司から壮絶なダメ出しを受けて、 「これじゃダメだよチミィ」とか言われたり。
そういえば今だとちょうど新社会人の季節ですね。 夢と希望をもって新しい職場に配属されてますか!フレッシュマンの皆さん! 皆さんが1年目に出す報告書なんて、片っ端から理由もなく上司にダメ出しされますからね! 覚悟しておいてください! “社会人の洗礼”なんて親切心じゃないです! あなたたちの若さに嫉妬したイヤガラセです! でも、 「えっ、課長の書き方の方がおかしいでしょ。俺の方が全然いいし!」 なんて思ってても言っちゃいけませんよ! (いや言ってもいいけど)(俺関係ないし) (そういう新入社員の方が出世できるって説もあります) (そうだそうだ!上司なんかファック野郎だ!言いたいこと言っちまえ!) (そして次の就職先探しもがんばれ!)

『アイ・アム・レジェンド』は公開1ヶ月前のスクリーンテストで、 「このエンディングではいかんで!作り直しや!」 とえらい人からダメ出しが入り、急遽ラストのエンディングを差替、大幅なストーリーの変更が行われました。 この部分を変更すると作品のテーマそのものが全く別のものになってしまい、 映画を作った意味がなくなってしまう! ってほどの大きな変更だったのですが、 なにせ制作費1億5千万ドルの超大作です。 スポンサー様が「ダメ」と言ったら従うしかありません。

長いものには巻かれろ! しょせん貧乏人は金持ちの前にはひざまずくしか無いのさ! 力のある者に媚びへつらえ! ポリシーも思想も犬に喰わせて、スポンサー様のためならパンツだって脱ぐさ! そうさ、あんたの言う通り、 前のエンディングじゃこの作品の崇高なテーマなんて頭の悪いアメリカ人には到底理解できないだろうよ! だからバカなアメリカ人にも分かりやすい、子供でも分かるやさしいエンディングに差し替えてやるよ! テーマも思想もなくても、 モンスターと暴力と爆破シーンがあればファッキン・アメリカ人は喜んで劇場に来るだろうさ! こんなゴミみたいな映画でもな!

…と、フランシス・ローレンス監督が思ったかどうかは知りませんが、 バカでも分かるエンディングに差し替えた結果、 この映画は興行収入6億ドルの大ヒット作品となりました。
バカな客に分かるようにバカなストーリーにしたら、 バカが客が6億ドルも払って喜んで観たというわけです。

興行でお客さんに来てもらうためには とにかく作品そのもの質の向上に力を入れるべきと思いがちですが、 「集客のためにあえて作品の質を下げる」というビジネス・モデルもあるのです。
バカにはバカに合わせた内容にしとけ! そうすればバカがカネを落としてくれるわ! 中身なんて関係ない、ファンサービスしとけばいいんだよ! それで喜ぶのはバカだけだけど、バカがターゲットなんだからそれでいいんだよ!

あ、ドラゴンズの話じゃなく、ハリウッド映画の話をしてますよ。
ジョイナス・ハリウッド!


(2012.4.6)

原題I Am Legend
邦題アイ・アム・レジェンド
公開/製作2007年/アメリカ
出演 ウィル・スミス(ネビル博士)、アリシー・ブラガ(アナ)
監督フランシス・ローレンス

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