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ローズマリーの赤ちゃん


遠い昔、平松伸二の『ブラック・エンジェルズ』って漫画があって、 妊婦さんが病院で赤ん坊を出産するんですが、 オギャーオギャーと聞こえたかと思うと母親が病院の窓からダイブ!

窓から下を覗くと、ダンプにひかれたカエルの物真似をしているお母さんの姿があって、 そのペシャンコに潰れた体の下から赤ん坊の黒い手がはみ出してる、 っていうもの凄いギャグがあったんですが(それはギャグじゃない!)(きっとギャグじゃない!)、 それを読んだとき僕はまだ二歳か三歳で、 ものすごく強烈なトラウマになったんですね。

「果たして自分が黒い赤ん坊として生まれたら、両親は僕を愛してくれるだろうか?」

「無償の愛とは、母が子に与える愛、それのみである」と言ったのは誰か忘れましたが、 親子の絆は肌の色でどうにかなってしまうものなのでしょうか?
自分がもし黒い赤ん坊だったら、とも思うし、 自分が母親だったら、あるいはマヌケな寝取られ男の父親だったら、 同じような立場になったときどうするだろう? 生まれてきた赤ん坊が高円寺の駅の高架下にある洋食屋の名前みたいな子供だったら! (クロンボとか言うと人権団体に怒られるので、ちょっと遠回しな言い方をしました) (セーフ!)

生まれて来る子に罪はありませんが、 『ブラック・エンジェルズ』では母親は飛び降りたのです。

父親に顏向けが出来ないから、世間様に顏向けが出来ないから、 恥ずかしいからという理由かどうかは作品では明確にされてませんが、 とにかく母親は子供を巻き添えにして病院の窓から飛び降りたのです!

普通、マンガやドラマってクソみたいな綺麗事で出来てるから、

    ママ 「それでも私はこの子を愛するわ!」
    パパ 「僕もだよ!二人で一緒に育てよう!」

ってなるじゃないですか。
んで子供が大きくなってから肌の色が違うって理由でクラスの同級生にイジメられたりして、 反抗期に親と衝突したりしながら、それでも逆境を乗り越えて成長して行くじゃないですか。 もしマンガやドラマだったら。

でもさすがド外道・ド鬼畜の平松伸二先生! 飛び降りさせましたね!
だってこれ『少年ジャンプ』ですよ!? 小学生とか子供が読む漫画雑誌ですよ! (稀に精神年齢が小学生の大人でも読んでる人はいますが!)
「赤ちゃんは木の股から生まれる」って信じてる年頃のチビッコが読む雑誌です! (本当は赤ちゃんはコウノトリが運んで来る、って真実を知ったのは僕は中学一年のときでした)

映画 『ローズマリーの赤ちゃん』 は、「母親の無償の愛は存在するか?」 と観客に問いかけて来ます。 生まれてくる子供がどんな形でも、親は子を愛せるでしょうか? 見た目が違っても、皮膚の色が違っても、遺伝子が違っても、 パパとママの子供でなくても、生きていてもこれから先いいことなさそうな子供でも、 皆に祝福されて生まれた子供でなくても、 親は子供を愛せるでしょうか?


『宮本から君へ』で宮本の奥さんは嫌いな男にレイプされたときの子供を産みました。

『プロ(ネタバレのため略)ウス』では生まれた子供が醜いエイリアンでした。

『バットマン・リターンズ』では普通の人間の夫婦の間にペンギンの化け物が生まれて来ます。


『プロ(ネタバレのため略)ウス』では母親は生まれてきた子供を殺そうとし、 『バットマン・リターンズ』では両親は子供を川に流して捨てました。 そこには「母親の子供に対する無償の愛」は存在せず、 子供が異形の子というだけで殺そうとするのです! 親のエゴと世間体のために! (『宮本から君へ』は違いますが)


☆   ☆   ☆   ☆


自分だったらどうするか。
生まれてくる前は親は子供に 「どんなに可愛い子供が生まれてくるんだろう」 「どんなことがあっても自分がこの子を守らなきゃ」と期待をパンパンに膨らませますが、 生まれて来た子供がペンギンだったらどうしますか?
生きていてもこの子に将来の幸せはない、そう分かっていて、それでも愛せますか?

僕はもちろん愛します!
生まれた子供がペンギンなら、僕もペンギンになるための改造手術をして、 親子で南極に行ってリアル「けっきょく南極大冒険」をしたいですね! ヒャッハー!

(2013.08.02)


原題Rosemary's Baby
邦題ローズマリーの赤ちゃん
公開/製作1968年/アメリカ
出演 ミア・ファロー(ローズマリー)、ジョン・カサヴェテス(ガイ)、ルース・ゴードン(カスタベット)
監督ロマン・ポランスキー

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