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ムカデ人間



「人は一人じゃ生きていけないんだ!」

ってことを痛感させられる映画、それが『ムカデ人間』です!

まあ僕も若い頃は世の中ナメてて、 「一人で生きていくことが大人になるって事なんだ!」 「俺は一人でも生きていける!」 なんて生意気なこと思った時代もありましたよ。子供だったんですね。 でも、そんな僕も双葉保育園を卒業する頃にはちょっと考え方が違ってきて、 「人は一人では生きていけない。 たとえ生きていけるとしても、そうしてはいけないんだ!」 って思うようになりましたね!

だって一人で生きていたら、もし他の誰かが困って助けを求めていても その人に手を差し伸べることが出来ないじゃないですか! だから人は一人で生きてはいけないんです! 自分のためじゃなく、他の誰かのために! もしもあなたが「俺は一人でも生きていける」って強い人ならば、 その強い心で一人では生きていけない誰かの力になるんです! そのために僕らは生まれて来たんだ!

『ムカデ人間』ってのはあれですよ、人間が三人、つながってるんですよ。

え? 何を言ってるか分からない?
いやそのまんまですよ。人間が三人、つながってるんですよ。

前の人の肛門のまわりの皮膚を切り開いて、後ろの人の口を切り開いて、縫い付けるんです。 こうして人間と人間が肛門と口でジョイントして(ジョイント・アス!)(ジョイナス!)、 物理的に繋がるんですね。これが三人連結するんです。 で、膝の筋肉を手術で真っ直ぐ伸ばせないようにして、 四つんばいでムカデみたいに這い回るんですね。 (え?読んでて頭が痛くなってきた?) (大丈夫、書いてる方はもっと頭痛いですよ!)

三人は運命共同体。心を通わせ、協力しあわなければ前に進むことも出来ない。 「オイッチニ、オイッチニ」って声をそろえ、足並み揃え、 ひとつの目標に向かってみんなが心を合わせるんですよ! これが人間社会のあり方ってやつですよ!

小学校の運動会やドラゴンズの北谷キャンプにも「ムカデ競走」ってありますけど、 これで早く進むコツは、「チームの中に早い人がいる」とかじゃないんですよ。 ムカデ競走で早く進むコツは、「一番足の遅い人に合わせる」ことなんだそうです! 強い人に寄り添うのではなく、弱い人に合わせ共に歩む、 それで初めて人は前に進めるのです!

この生き馬の目を抜くような競争社会の中で、 冷たいコンクリート・ジャングルで心まで冷たくなってしまいがちな現代人たちに、 「僕たちが前に進むには、一番弱い人のことを思い、 そこを基準に協力しあわなければならないんだ」 ってことを教えてくれる!それがムカデ競走であり、ムカデ人間なんですよ!
そこには人種差別も男女差別も偏見も何もない、 『ムカデ人間』で繋がった三人は日本のヤクザとアメリカのAV女優二人です。 暴力団排除条例やアジア人差別、職業差別の対象になりそうな社会の底辺の人たちです。 周りに差別され見下され苦しんでる人たちが、 ムカデとなって心をひとつにするのです! ああ、人間バンザイ!
普段はムカデを虫ケラとバカにしている僕たち愚かな人間が、 ムカデになることによって人間のすばらしさを再確認するのです! これは一度人間を捨てムカデになることで人間とは何かを再確認する、 イニシエーション(通過儀礼)の物語です! 人間賛歌の物語です!

はい、今画面の向こうから「いやいやいやいやいやいやいやいや、 俺これ観たけど、絶対そんな映画じゃない、絶対絶対そんな映画じゃなかった」 って声が聞こえてきましたよ! 何言ってるんですか! そういう映画ですよ!

おしよせる感動! 笑いあり!涙ありの超感動巨編! なんでこの映画がヨーロッパで上映禁止になってるかサッパリ分かりません! (ちなみに「笑いあり」ってのはエンドロール終了後の「大切なお知らせ」 でゲラゲラ笑いました!)(まだ繋がるのかよ!)(ギネスに申請できるよ!)

この映画を観終わったあとは、誰かとこの映画の話をしたくてしょうがない衝動に駆られます。 だから皆さんも今すぐ! レンタルDVD屋に行って『ムカデ人間』を借りてみてください! そして語り合いましょう! 「こんなひどい映画は久々に観た」と!

(2012.11.8)

原題The Human Centipede
邦題ムカデ人間
公開/製作2010年/オランダ
出演 ディーター・ラーザー(ヨーゼフ・ハイター博士)、アシュリー・C・ウィリアムズ(リンジー)、アシュリン・イェニー(ジェニー)、北村昭博(カツロー)
監督トム・シックス

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