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ポセイドン・アドベンチャー


生きるか死ぬかの分岐点に立って、 2人の男が「こちらに行けば助かる」「ここで待っていれば助かる」と言ったとき、 どちらを信じますか!

『ポセイドン・アドベンチャー』 では片や左翼系ツッパリ牧師、 もう一方は船の乗組員の偉い人、この2人のどちらについていくかの選択を迫られます。 状況としては船がひっくり返っていつ沈没するか分からない、 客はホールに集まっていて、そこでじっと救助を待つか、 ここにいても死ぬのを待つだけだから出口を探しに行くか、 どっちのチョイスが正しいかは「終わってみなければ分からない」わけです!

まあ生き死にとなると大袈裟ですけど、 小さいレベルでのこういう選択は日常の中でちょくちょくありますね。 あの映画、町山さんは面白いと言ってたけど宇多丸師匠はダメだって言ってたけど、 映画館行くか行かないかとか、 SMAPはソフバン携帯がいいって言ってるけど嵐はau携帯を勧めてくる、 どっちを買おうかなとか。 そりゃ頭で考えるよりも実際に観てみれば、 使ってみれば自分で分かるんだけど、 それはハズレのリスクを伴うわけだし、 今の時点では他人の判断に頼りたいわけです。 どっちを信じればいいんだ!

映画の中では牧師さんは説得に応じない人に 「ここにいるのがいかに危険か」をみ大演説するわけですけど、 多くの人は耳を貸してくれません。 自分が正しいと思ってることを他の人に理解・納得してもらうのって難しいですよね。 中日ファンだと「高木采配否定派」と「高木采配擁護派」がいますけど、 そういう人たちが自分の考えがいかに正しいかを他人に説明するのに、 たくさんのロジックを積み重ねます。 いかに筋道が通ってるか、相手が間違ってるかを得々と語るわけですけど、 「その通りですね」って言う人もいれば 「何言ってるだファックファック」という人もいます。
演説者は思うでしょう。 なぜ自分はこんなに正しいことを言ってるのに、お前ら理解できないの? もしかして頭悪いの?

違いますよ!

あなたの言ってることで他人を納得させられないのは、 相手の頭が悪いんじゃなく、あなた自身に信用がないからです!
信用のない人がどれだけ正しい理屈をこねたって、普通は信じてくれませんよ! あなたに人徳がないのが悪いんです! 他人のせいじゃありません!

ネットでしか知らない他人の言葉なんていかに筋が通っていてもそう簡単に信用できるものじゃありません。 人を信用するというのはロジックを見るのではなく、 人を見るわけですから。
見も知らぬアカの他人が、これまで人間関係を築いてきていない人に向かって、 相手がどんな人か知りもしないのに、 「俺の言ってることはこんなに正しいのに、どうして理解できないんだ!」 って、どんだけ自分を徳の高いカリスマ教祖だと思ってんだよ!

沈み行くポセイドン号の中で人徳のない牧師にはわずかの人数しかついていかないわけですが、 生きるか死ぬかの分岐点に立って、 2人の男が「こちらに行けば助かる」「ここで待っていれば助かる」と言ったとき 僕なら何を判断基準にするかというと、 「どっちを信じてついていけば助かるか」ではなく、 「どっちを信じてついていけば、死んでも悔いはないか」 です!

その人を信じたのだから、それで死んだっていいじゃない。 その監督を信じたのだから、それで負けたっていいじゃない。 不幸とは、信じた人に裏切られることではなく、 信ずべき人がいない状態です。 (最後、中日ファンの愚痴みたいになっちゃったね!) (高木監督も信用を積み重ねれば信じてもらえるようになるよ!)

(2012.8.12)

原題The Poseidon Adventure
邦題ポセイドン・アドベンチャー
公開/製作1972年/アメリカ
出演 ジェームズ・カーン(フランク)、チューズディ・ウェルド(ジェシー)、ロバート・プロスキー(レオ)、ウィリー・ネルソン(オークラ)
監督ロナルド・ニーム

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