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コンテイジョン


ネットでちょっと人気のある人が調子に乗ってホイホイ風評を広め、 「自分が他人に影響力を持ってる」ことに快感を覚え、 世間を混乱させて喜ぶネット番長がいる、 ってのは最近日本でも問題になってましたが!

映画『コンテイジョン』はそんなファッキン・ジャーナリストが垂れ流すデマの恐怖を描いた映画です。 公開時の宣伝コピーは“恐怖は、ウイルスより早く感染する”!

自分のブログのアクセス数が自慢のネット番長・タカシ=ウエスギ、 じゃなかった、ジュード=ロウ演じるファッキン・ジャーナリストのアランは (誰やタカシ=ウエスギって!)、 自分が手にいれた「これを知れば人々はパニックに陥るだろう」 というネタを、とにかく早いもの勝ちとばかりに考えなしにネットで世界中に垂れ流し、 裏取りもせずバンバン書きまくるんですね。 情報化社会はスピードが命! 他人より早く情報を流せ! それが本当かどうかなんて後から考えろ! ショッキングな情報を「俺が」発信して「俺が」世界に衝撃を与えるんだ!

でも、それは全く裏の取れてない、東スポの 「吸血鬼、日の出光線浴びて黒コゲ」並みのインチキ情報なのです (なんでや!吸血鬼いるかも知れないやないか!) (黒コゲなったの本当かも知れないやないか!)。

こういう事ってタカシ=ウエスギに限らずありますね(だからタカシ=ウエスギって誰や!) (そんな男の話はしてません)。

僕だってありますよ(いかんやん)。

「モリミチ、ニ〇一四年以降も続投決定!」とかいうニュースが入ったら、 「なんだってー!モリミチが来季以降も続投だとー!?」 「ふざけんなコラ!」 とソースを確認する前にツイッターに速報し、 周りの人が「何だってー!」「何だってー!」と反応をするのを見て、 「あれ? 俺、ちょっといち早く情報を提供しちまった? 俺のツイートに皆が反応してるぜ…」 なんてちょっとした快感に酔いしれるのです。

何でしょうね、この「俺のツイートが世界を動かした!」みたいな快感。 羊飼いのペーターが最初に「狼が来たぞ!」と言ったとき、 村人が逃げ惑う姿に快感を覚えたのと似ています。 ペーターはその後、 狼が来てなくても「狼が来たぞ!」と言う癖がついてしまいます。 刺激的な話題なら本当だろうがウソだろうが関係なく流布してしまう、 「村人が俺の一言に反応してる!」 そんなことに快感を覚え、 もうそれが事実であるか関係なくウソをばら撒く、 「速報ジャンキー」はそんな危険性をはらんでいます。 (ツイッターのRT機能はそんなファッキン野郎に 「いっぱいRTされた俺はすごいぜ!」的な誤解を与え、 それがデマの流布に繋がります)

で、僕の場合なんですけど、 「モリミチ続投」の速報で皆がさんざん盛り上がったあとに念のため裏を取ってみると、 元ネタが東スポだったり中スポだったりいわゆる「信頼できないソース」で、 「あれ、これ『成績によっては続投もあり得ることを示唆した』ってだけで、 別に続投決定してないじゃん!」と気付くわけですよ。 あわてて「えっと、モリミチ続投決定してませんでした!メンゴメンゴ」 とつぶやいたところで時すでに遅し。 この訂正ツイートは拡散されません。

多くの人が求めているのはショッキングな情報、刺激的な情報であり、 ネガティブな情報はアッという間に拡散されますが、 その後に訂正された情報は同じようには拡散しないのです (「文責」ってのは引用だろうが公式RTだろうが「流した人」に責任があるのに!) (ツイッターはデマを流しても「悪いのは発信元だから俺は関係ない」って思ってる人が多くないですか?) (文章の責任は流した人にあります!RTすればRT元ではなく、RTした人に責任があります!)。
悪い情報は拡散!安心情報は無視!それがネットの世界です!

ま、ワイドショーもそうですよね。 芸能人の離婚ネタは何十分もコーナー組んで何日も引っ張るのに、 結婚会見は五秒でおしまい。人は幸福より不幸を見たいのです!欲してるのです!

だから人は「日本は安全です!東北の農作物は食べられます!」というニュースより、 「もう日本は壊滅的ダメージを受けた!東北の農作物は危険がいっぱいだ!」 というニュースを好み、信じ、拡散し、恐怖を広めます。 そこには「危険と言いふらして後で間違いだったと分かっても被害はないが、 安全と言いふらして後で間違いだと分かったら大変なことになる」 という免罪符があります。 (この免罪符があるからファッキン・ジャーナリストはネガティブな情報ばかり垂れ流すのです) (たとえ根拠がなくても!)

ペーターと狼だってそうですよね。 狼が来たかどうかは事実でなくても、噂レベルでも、デッチ上げでも、 「もし来たら」、来なかったときより大変なことになる。 来ない心構えより来たときの心構えをしていた方がいい。 ペーターはそれを免罪符にして「狼が来たぞ!」と叫び続けるのです。 免罪符があるから叫び続けられるのです。

しかしその動機は、「人々がより安心できる生活を送れますように」ということではなく、 「人々が危険にあわてふためく間抜けなさまを眺めたい」 「俺の発言が他人に対し影響力があることを確認し、 自分がいかに偉大な存在であるかを鼓舞したい」 という厭らしい野次馬根性と、チンケな自己顕示欲が根底にあるのです。

野次馬根性とチンケな自己顕示欲で風評被害に遭う人はたまりませんね! ごめんねモリミチ! (いやタカシ=ウエスギがそうであるとは言ってませんよ) (だからタカシ=ウエスギって誰や!)

(2013.02.28)


原題Contagion
邦題コンテイジョン
公開/製作2011年/アメリカ
出演 マリオン・コティヤール(オランテス医師)、マット・デイモン(エンホフ)、ローレンス・フィッシュバーン(チーバー)、ジュード・ロウ(アラン)、 ケイト・ウィンスレット(ミアーズ医師)、グウィネス・パルトロー(べス)
監督スティーブン・ソダーバーグ

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