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レイチェルの結婚


「父親を憎んでいる娘」とか「母親を憎んでいる娘」 って多いか少ないかは知りませんけど、いるみたいですね!

ちょっとびっくりしたのは、 昼間のラジオ放送で楽しいバラエティ番組を聴いてるとき、 いつも穏やかな番組アシスタントの女性アナウンサーが、ぼそっと 「私、父親だけは許せないんですよ」 ってサラッと言ったんですよね。 男性パーソナリティが笑いながら 「まあまあ、何があったか知りませんが、いい大人なんだからもう許してやればどうですか」と向けると、真剣な声で「いいえ、絶対に許しません」って言ったんですね。 ひいいい! 怖い!

また別の番組で別の女性パーソナリティが、 「私は子供の頃から母親と仲がよくなくって…ま、今も悪いんですけどね」 ってサラッと言うんですよ! そして母親を「あの人」って呼んだりするんです!

「娘」に限定したのは、 公共の電波で「実は親を憎んでいる」と言ってる男の人を見たことがないからで (まあ憎んでても言わないだけかも知れませんが) (普通言いませんよね)(そんなこと言っても何の得にもならないもの) (でも女の人は口に出して言うんですよ!)(ひいい怖い) (女の人って「うまくいってない人間関係」をオープンにするのに躊躇ないですよね) (いやmixiの日記とかツイッターとかで、旦那の悪口とか、 旦那の実家とうまくいってない事とか普通に書くじゃないですか) (男って、嫁の悪口とか嫁の実家の悪口とか書く人ってあまりいないですよね) (だってそんなこと言っても何の得にもならないもの!) (でも女の人は口に出して言うんですよ)、 僕が知らないだけで、男でもいるのかも知れません。僕は知りませんが。

『レイチェルの結婚』には「娘を憎んでいる母親」が出てきます。 娘のキムは、自分は両親に愛されてる、と思っていたのですが、 あるとき突然、母親が娘に憎しみをぶちまけるのです。 愛されていると思っていた家族は、実は自分のことを憎んでいたのです。

ああ!かわいそうなキム!
世界中が敵に回っても、母親だけは味方だと思っていたのに!

ゾッとしますよね。 肉親だから愛されてると思ってた、 家族だから愛されてると思ってた。でも、そんなことはないわけです。
もしかしたら自分も、何かのきっかけで(自分には何の自覚もなくても) 親に憎まれているかも知れない。愛してる人に恨まれているかも知れない。 仲のよさそうな家族にみえて、心の中では怨念が蠢いてるかも知れない。 やがてそれは何かの拍子に爆発して、家族は崩壊する。

そう考えたら、ラジオ番組でサラッと「わたし父親キライ」「わたし母親キライ」 って言ってしまえる家族って、割と健全なのかも知れません。 少なくとも家族にウソはついていません。

あ、いま思い出したんですけどありました! 僕も母親を憎んでいたこと!
中学のとき、まあ誰でもそうだと思いますけど日記をつけていた時期があって、 それに「ぼくは母親を憎んでいる」 みたいなことを書いた記憶があります! で、大人になって、実家に帰ったときにそのことを思い出して、 「やべ、あの日記処分しなくちゃ。母親に見られたらまずい」 と思って探したんですけど、見つかりませんでした! で、なんで憎んでたかその理由は忘れました!

ああそうか、男ってバカだから、憎んでいたとしてもすぐ忘れてしまうんですね! だから言わないのか!

(2012.9.6)

原題Rachel Getting Married
邦題レイチェルの結婚
公開/製作2008年/アメリカ
出演 アン・ハサウェイ(キム)、ローズマリー・デウィット(レイチェル)
監督ジョナサン・デミ

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